笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

小説家デビューして日本へ一時帰国した野沢直子

9月になって最初のTOKYO FM「よんぱち 48hours」のゲストは野沢直子さんでした。

毎年恒例の日本への一時帰国ですし、ウンナンとダウンタウンとやっていた伝説のコント番組「夢で逢えたら」の話はもう期待できないだろうと思いつつ聞きました。野沢さんは自身初の書き下ろし小説「アップリケ」を出版したばかりということで、やっぱりそれに関する話が中心でしたね。

アップリケ ( ヨシモトブックス )

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それでも「人の縁って不思議だね」と思うような話もあってとても楽しめました。今回はこの部分を紹介させて下さい。

全てを捨ててニューヨークへ

2010年9月3日放送のTOKYO FM「よんぱち 48hours」

ゲストに野沢直子。パーソナリティは鈴木おさむ、柴田幸子。

鈴木「野沢さんって、僕が19か20歳ぐらいのときに、いきなりテレビの世界から消えてしまったじゃないですか」
野沢「そうですね」
鈴木「で、アメリカ行ってね、チンパンジーの」
野沢「あっはっはっはっ!」
鈴木「正直ね、あのままテレビに出続けれてばいいのになって、みんなが思ったと思うんだけど」
野沢「ありがとうございます」
鈴木「それで、アメリカ行っちゃって、ふっ、ボブと・・・」
野沢「くふっ、結婚しちゃった、あっはっはっはっ」
柴田「そうですね〜」
鈴木「ね〜、要は向こうで生活して」
柴田「はい」
鈴木「こっちで生活してればよ、テレビのギャラだけでやっていけるのに」
柴田「うん」
鈴木「極貧生活をしたり」
野沢「そうですよ〜、もう〜、低収入者保険ですよ、アメリカではもう」
柴田「へえ〜」

「夢で逢えたら」に出演して、お笑い芸人として順風満帆の時期に突然のニューヨーク行き宣言。
当時、私はあまりの唐突さに驚いたし、「本当に良いの?もったいない・・・」と疑問を抱いたものでした。夢逢え最後の出演での彼女の涙は、今でも深く記憶に刻まれています。

冠番組を持つことがゴールじゃない

鈴木「なんか、なんつうの、例えばなんか、この世界で働いている人も毎日仕事しながら『行きたくねえ』とか言ってるじゃないですか」
野沢「そうですね〜」
鈴木「って言う人もいるけど、本当に行かなくなっちゃったのが野沢さんで〜」
柴田「はあ〜」
鈴木「辞めちゃったりしたのが」
柴田「しかも20代の頃ですよね」
鈴木「そうですよ、周りで結構止めた人いたでしょ?だってあの頃」
野沢「そうですね、もうあの時レギュラー5本か6本持ってたんで、それであの〜、まあ、今からするとバカみたいんなんですけど」
鈴木「うん」
野沢「まあ、冠番組を持つのが自分のゴールじゃない、とかって熱いこと思っちゃって、それで世界目指すとかって言ったんですけど、冠番組の話イッコも来てなかったんですよ」
(スタジオ笑)
野沢「そこが、まあ超マヌケなんですけど、でもまあ、あの〜、そうですね、そんな感じで行っちゃったんですけどね」

ウンナンが「誰かがやらねば」を始めることになったとき、野沢直子は「本当にそれでいいの?それぞれが冠番組を持つための今なの?」的なことを言っていたそうです。私の記憶が確かならば。意外に熱い部分を持っている野沢直子。

野沢直子だから見えるモノ

鈴木「いやだから、自分の中で抑えてる自分とか、例えばですけど、僕なんかも今この仕事全部辞めて、どっか別の仕事したいとかって、みんなちょっと思うところあるじゃないですか」
柴田「はい!」
野沢「あんなに儲けてるくせに?」
鈴木「そうなんですよ」
柴田「ふっふっふっふっ」
野沢「お酢のコマーシャル、やってんじゃん」
鈴木「(苦笑しながら)いいじゃないですか、でもそう言いながら、もう一方の自分とかがあって、でもそうなれないじゃないですか、みんな」
野沢「うん」
鈴木「そうなれなかったりとか」
柴田「やっぱ現実は違いますからね」
鈴木「そう、でも野沢さんが行動したからこそ、見えることがすっごいあるんだろうなと思って」
野沢「あ〜、ありがとうございます」

野沢直子が歩んできた人生が小説にも反映されていると語る鈴木おさむ。そして、柴田幸子に女性として感想を聞きます。

柴田幸子が野沢直子の小説について大いに語る

鈴木「どうですか?柴田さん、女性の目から見て」
柴田「いや〜、やっぱりだから、今お話にあったように、なんだかんだいって生き辛さとか、自分の中にあるマイノリティーって部分を、特に私なんて社員なんで、社員だからこうしろとか、結構やっぱり会社の枠にはまってる」
鈴木「言われているしね、毎日」
柴田「そうなんですよ、そういうところの葛藤ってのがすごいあった中で、この本を読んで、あっ、なんかもうちょっと自分らしくやってもいいのかな〜って、すごく思いました」
野沢「(あまりの熱さに戸惑いながら)思いました?」
柴田「思いました、思いました」
野沢「ホントに?」
柴田「ホントですよ」
野沢「へ〜、感動〜」
鈴木「野沢さん、狙い目はそこですよ、悩んでる大人なんていっぱいいますから」
柴田「そうなんですよ」
鈴木「この本を読んで自分を探そうってのが、この本を売るキャッチだと」
野沢「はっ!これはちょっと覚えておいて!この先の告知で使わなくっちゃ!」
(スタジオ笑)

柴田幸子のあまりの熱弁ぶりに、野沢直子圧倒されながらも感動。そしてこの後、野沢直子を取り巻く人たちに不思議な縁があると、鈴木おさむの何気ない一言から広がっていきます。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

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桜庭一樹に通ずるものがある

鈴木「日本だと今、桜庭一樹さんとか、本谷有希子さんとか」
野沢「はいはいはい」
鈴木「小説家とか、劇作家の人がいるんですけど」
野沢「ええ」
鈴木「なんかそれに通じますね」
野沢「あっ、本谷有希子さんに帯を書いていただいて」
鈴木「へ〜」
柴田「そうなんですか」
野沢「なんかあの〜、私あの、えっと、『腑抜けども』とか読んだんですよ、それですっごい面白いなと思ってて、で、ダメもとでちょっとお願いしたら、『読ませてください』っていうことで」
鈴木「おお」
野沢「読んでいただいて、それでなんか気に入っていただけたようで、帯を書いてくださって」

さらにある芸人が、野沢直子と桜庭一樹どちらにも深い縁があるという話へ。

桜庭一樹と結婚した相手、友野英俊

鈴木「ねえ、なんか俺共通感じるんだけど、桜庭一樹さんって、結婚した相手知ってますよね?」
野沢「友野(友野英俊)くんなんですよ〜」
鈴木「そう!」
野沢「そして、友野くんが本くれて〜」
鈴木「友野さんっつうのは、野沢さんの、あれ映画出てたの友野さんですよね?」
野沢「そうです」
鈴木「野沢さんの記念すべき第1作の・・・」
柴田「あっ」
鈴木「とんでもない作品があるんですけど」
(野沢爆笑)
柴田「話題の、はい、アレですね」
野沢「1ミリも中身言えない」
鈴木「はい、1ミリも中身言えない、1ミリもラジオでも音声すら聞かせられない、俺はその映画大好きなんだけど」
柴田「ええ」
野沢「(恐縮しながら)ありがとうございます」
鈴木「それが友野くんっていう、芸人さんなんですね」
柴田「あ、そうなんですか?」
野沢「そうなんです〜」
鈴木「その友野くんっていうのが、なぜか、桜庭一樹さんとその人が結婚したんです」
柴田「へえ〜!」
野沢「結婚したんですよね〜」

小説の作風だけでなく友野英俊という芸人が、野沢直子と桜庭一樹どちらにも深く関係していたんですね。

鈴木「で、吉本で結婚式やったんだよね」
野沢「そうです、吉本のなんか図工室で、会社の図工室で結婚パーティーを」
柴田「また、すごいですね」
鈴木「東野圭吾さんだなんだって、そうそうたる小説家がそこに現れて」
柴田「ええ〜!」
野沢「一応ですね、調査してもらったんですけど、まあアメリカに居たんで行けなかったんですけど、そんな豪華メンバーが」
鈴木「そうですよ、司会誰か知ってます?」
野沢「え、誰だったんですか?」
鈴木「森三中」
(スタジオ笑)

一体どんな結婚パーティーだったのでしょうか。^^;
今回のラジオを聞いてて、野沢直子さんはニューヨークへ飛び立つと決断したあの頃から全く変わってないなと。意識的に変えてないのか、良い意味での軽薄さが年齢を重ねてもそぎ落とされること無く今そこに居る、って感じでしたね。そんな彼女が今の芸能界やお笑い芸人と交わることで、より鮮明に浮かび上がらせるのかもしれません。そう考えると、野沢直子さんの存在価値が薄まるのはまだまだ先のような気がします。

私の男 (文春文庫)

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