笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

東京03のコントを作る上でのこだわりを見抜いていた男

最近、私が「東京03」にハマりつつあることに気付きました。

説明の必要はないと思いますが、東京03は、豊本明長(とよもとあきなが)、飯塚悟志(いいづかさとし)、角田晃広(かくたあきひろ)の3人で結成されたお笑いトリオ。「キングオブコント2009」で優勝し、単独ライブも定期的に行っています。コントに関しては超実力派です。

東京03がネタを作る上でのこだわりとは?

2011年6月11日放送「竹中直人の大人の笑い」(BS日テレ)

司会は竹中直人。
ゲストは東京03。

「竹中直人の大人の笑い」は、1組のお笑い芸人に絞って、放送時間の60分をまるまる与えてやりたいことを表現してもらう、BS日テレの番組です。

東京03の回では、ゼロの状態からコントを作り、舞台で発表するまでの過程を完全密着。番組スタッフから場所と人物設定を挙げてもらい、即興コントをいくつかやってみる東京03。その即興コントの中から選んで、ネタの台本を作る段階になったとき、飯塚さんと角田さんが喫茶店で向かい合っています。

即興コントの映像を真剣に見返す2人に、スタッフがネタ作りのこだわりを聞きます。

飯塚「あの~、その人が、ネタの中にいるキャラクターの人が言わなそうなことは言わないというか、そっから外れたことを台本に書きたくないですよね」
スタッフ「それはリアルか、リアルじゃないかってことですか?」
飯塚「うん、そうですね~、多分これを言ったらきっとお客さんは笑うだろうけど……っていう、そこはあんまり入れたくないんですよね~」
スタッフ「入れたくないんですか?」
飯塚「なんかね~、ふふっ」

角田さんのこだわりは何でしょうか。

角田「え~、あんまり長くなんないようにってことですかね、ふふっ、自分のパートをしつこくならないように……やりたいんですけどね~、やっぱりあの~(聞き取れず)っちゃうってことで、切ります」
飯塚「だってもう、なんでしょう?乗ってるっていうよりも、調子乗ってる感じだもん」
角田「はははっ、調子乗っちゃうんですよね、また~」
スタッフ「お客さんはそこも楽しみでは?」
飯塚「まあね~、まあまあ……お客さんはね~」

登場人物のリアルな言葉と全体のバランスを考えて、ネタを作る東京03。

東京03のメンバーについて各々が分析

飯塚さんから見た角田さんについて聞くスタッフ。

スタッフ「角田さんってどういう人ですか?」
飯塚「いや、もう天才コメディアンですよ
角田「んふふふっ」
飯塚「と思いますけどね、本当に、この形を……東京03のこのコントの形が出来るのって、角ちゃんの演技力がないと無理だと思いますね」
角田「(照れながら)またっ……どうした?落ち着けって、で?で?」
飯塚「くふふっ、どっちだ?これ以上ねえし」
角田「ああ、ないのね」

逆に、角田さんから見た飯塚さん。

角田「そうですね、飯塚さんはあの~、本当にお笑いマニアなんですよ、ものすごく、もうお笑いしかない人なんで~、だってほか趣味ないんですから」
飯塚「ふふふっ、あんまり格好よくないですけども、あの~、そうですね」
角田「ただのマニアです、マニア」

一方、豊本さんは雨が降る神社にいました。そうです、東京03のネタ作りに、豊本さんはノータッチ。神社をお参りして、傘を差しながらプロレスについて熱く語る豊本さん。その光景が、喫茶店でネタをコツコツ作る2人の合間にいちいち差し込まれます。^^;

この場にいない豊本さんについても聞きます。

スタッフ「豊本さんって方は?」
角田「雰囲気がずるいんですよね、なんか……なんかあの~、ものすごく不思議な感じとか、何考えてるのか分からないような雰囲気があったりして」
飯塚「うん」
角田「あの~、それは全く僕とは真逆な感じなので、ふふっ」
(無言でうなずく飯塚)
角田「ネタも一番作ってそうな雰囲気ありますしね」
飯塚「ははははっ」
角田「どっちかつったら、はははっ」
飯塚「雰囲気的にはね」

この後すぐ雨の神社の映像に切り替わります。プロレスについて語り尽くした豊本さんに、「ネタをよろしくお願いします」とスタッフが言うと、豊本さんは笑顔で「2人に言っておきます」と答えて、遠くに行ってしまいました。

この「竹中直人の大人の笑い」が放送されてから数ヵ月が経過。私は、東京03が語っていたコントのこだわりを見抜いていた男と遭遇しました。その男とは、劇団ひとりです。遭遇した場所は「ウレロ☆未確認少女」のニコ生実況放送。

「ウレロ☆未確認少女」を見ながら東京03飯塚を絶賛する劇団ひとり

2012年2月29日発売『ウレロ☆未確認少女 DVD-BOX』(テレビ東京)

場面はディスク4の特典映像「劇団ひとり、バカリズム、東京03、佐久間Pによるニコ生実況放送」。

ウレロのテレビ放送の時間に出演者が集まって、それを見ながら実況したニコニコ生放送が、特典映像としてDVD-BOXに収録されているんですが、再生時間25分あたりです。テレビ放送の中でツッコんだ東京03飯塚さんを見て、ほろ酔いの劇団ひとりさんがしみじみ言います。

劇団ひとり「ツッコミうめえ~な~」
(メンバー笑)
劇団ひとり「自然なんだよね」
飯塚「すげ~褒めてくれる」
劇団ひとり「自然なんだよ、本当に飯塚さんって、なんかね、ツッコミって枠に入ってない感じが好きなの
飯塚「ああ~」
劇団ひとり「本当に感情的に怒ってんじゃないかな?っていう感じが、飯塚さん」
角田「あ~」
劇団ひとり「やっぱ、それはやっぱコント職人だからだろ~な~」
飯塚「あはっ、ありがとうございます、気分いいな~!」
角田「飲みなよ、飲みなよ」

角田さんに促されて、コップに入ったビールを口にする飯塚さん。なんとも言えない表情を浮かべていましたね。

劇団ひとりさんの「自然なんだよね」という言葉は、飯塚さんのこだわり「ネタの中にいるキャラクターの人が言わなそうなことは言わない」が、ちゃんと届いている証拠ではないでしょうか。

余談ですが、このウレロのニコ生実況放送の最後に、飯塚さんに強烈なオチが襲い掛かります。これは是非買って、確認して頂きたいです。