「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポン」から受け取ったメッセージ
2012年5月21日、昼休み。
息抜きしようとツイッターを覗いたら、いつも以上に「笑っていいとも」の感想で埋め尽くされています。タイムラインを追うと、どうやら漫画家の久保ミツロウさんが鮮烈ないいともデビューを飾ったのが原因のようです。
帰宅後、録画を見ました。「笑っていいとも」のワンコーナーにゲスト出演した久保さんは、巧みな話術で持論を展開。その切れ味の鋭さで、アルタの観客を大いに沸かせていました。このとき私の頭にふと浮かんだのが、「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポンZERO」でした。「もしかしたらこのときの裏話をラジオでしてくれるかもしれない」と。
時速150キロで動くタモリが止まって見えた久保ミツロウ
2012年5月22日放送「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポンZERO」(ニッポン放送)
パーソナリティは久保ミツロウ、能町みね子。
オープニングで早速「笑っていいとも」の話題が。
能町「久保さん、あの~、まず今週の大事件がね、あるじゃないですか、1個」
久保「あの~……タモさん、抱いてきたわ」
(スタジオ笑)
久保「タモリ、抱いてきたわ~!」
能町「タモリ抱いたわ~」
久保「タモリ抱いたわ、いや~」
能町「マジで、BIG3のひとり抱いたわ」
久保「あとふたりか」
(作家笑)
能町さんはテレビの前で拍手を送っていたと言います。
能町「本当、久保さんの思った通り行ってるって思って、そんなテレビが思い通り行くと思わないから」
久保「なんだろね」
能町「ビックリした」
久保「なんであそこまでできたのか私もよく分かんないんだけど、ただ、すごい、ゾーンに入ってたね、アレはきっと、イチローが言うところのゾーン」
(作家笑)
能町「ゾーンにね、入ってた入ってた、確かに」
久保「あのアスリート特有の」
自分のコーナーが終わり、あとはエンディングで告知するだけなので端っこにいたら、
久保「その~、他のADさんが『いや、タモさんの横に』って」
能町「おおっ」
久保「えっ、でも本当にタモさんの横に行っていいの?って」
能町「うん、思う思う」
久保「『どうぞどうぞ、CM中に』って、で、押されてタモさんの横に行ったら、目の前に、あのタモリ、タモさんが目の前にいるわけよ」
能町「ゆっくりした動きで見えたわけね」
(スタジオ笑)
久保「そう、ゾーン入ってるからね、多分、時速150キロでタモさん動いてたんだけど、私、止まって見えたから」
(スタジオ笑)
周りの後押しがあったからタモリさんに抱きつくことができた、と語る久保さん。
久保「で、(番組)終わったあとに、CM終わって、『もうすみません、ここでハジけちゃって、もう来ませんから!』って私言っちゃったら、すると、タモさんが『また来てくれるかな?』って言ってくれて、もちろん私、『いいとも~!』つって」
(作家笑)
能町「えっ!それマジの話?」
久保「うん、本当に」
能町「うわ~、すごいすごい!へぇ~」
久保「で、そのあと誰とも写真も撮らずに、そっこう帰った」
能町「撤収ですね」
久保「撤収ですよ、やっぱそこはね、ちょっと……」
能町「お高くとまっておかないとね」
久保「でもすみません、私、スギちゃんにだけ『ファンです』って言って握手してもらった」
(スタジオ笑)
オープニングの段階で、私は久保さんのトークにすっかり魅了されてしまいました。
そして、放送を最後まで聞いて分かったのは、能町さんもトークが上手くて面白い。加えてハガキ職人のレベルも高い。なにより久保さんと能町さんのコンビネーションが抜群だということ。気が付いたらこのラジオのファンになっていて、以降、毎週欠かさず聞くようになりました。
「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポン」にハマった2年間
2012年4月に始まった「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポンZERO」。
2013年になっても勢いが止まりません。元旦には4時間特番を担当しました。「真夜中の漫画家テレフォンショッキング(Togetterまとめ)」という伝説の企画を経て、春に1部昇格を果たしました。夏にはドトールコーヒーとのコラボも実現しました。私は、間違いなくこれからのニッポン放送を引っ張っていく存在になると思っていました。
ところがです。「今年の3月をもって番組が終了する」と発表されたのです。
あまりにも急で信じがたい発表だったので、心の整理がつかないまま最終回を迎えた感じでした。最後の放送の中で、個人的にとても印象に残った場面がありますので、それをちょっと紹介させて下さい。
2014年3月25日放送「久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポン」最終回(ニッポン放送)
番組終了間近にリスナーから届いたメール。そこには、「2人のトークは面白いだけでなく、生きる意味を考えさせてくれるものでした」という熱いメッセージが。
能町「まさか『生きることとは何なのか?』まで考えてくれる人がいるとは思いませんでした」
久保「まあ、生き様を伝えてたのかもしれませんけど」
能町「そうね~」
久保「あまり私たちみたいなタイプの人の生態が、こんなオールナイトニッポンの時間帯でベラベラ、『つらい、つらい』言ってるのって」
能町「『つらい、つらい』言ってるヤツいないからね、普通ね」
久保「いないからね」
このメールに対して、能町さんは次のように答えます。
能町「そうね、『生きることとは何なのか?』まで考えてたつもりはないけど、こういうこと言うつもりはないのに勝手に伝わってるのが一番いいんだよね、多分ね」
久保「あ~!思う」
能町「まさにタモさんとかそうじゃん、私らが勝手にさ、タモさんを神格化してさ、超すごい人みたいに言ってるけど、多分、本人全然そういう自覚ないでしょ」
久保「メッセージ性はみんなが、受け取ってる人ひとりひとりが決めるモノで、私たちはこういう風に言うしかなかったっていうのをね」
能町「そうですね、なんてことない話から勝手に読み取ってもらうのが一番いいですよ」
久保「うん」
そして、このラジオに出会うきっかけを与えてくれた「笑っていいとも」。同じく、今年の3月に最終回を迎えました。
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たくさんの価値を付けてくれたことに感謝するタモリ
2014年3月31日放送「笑っていいとも!グランドフィナーレ 感謝の超特大号」(フジテレビ)
司会はタモリ。
番組終了まで残り6分。左手に付けた腕時計で時間を確認し、センターマイクの前で立ち止まり、最後の挨拶をするタモリさん。その後半部分です。
まあ~、生意気なことでやってたんですけども、その長い間に、視聴者の皆様方がいろんなシチュエーション、いろんな状況、いろんな思いでず~っと見てきていただいたのが、こっちに伝わりまして、私も変わりまして、なんとなくタレントとして形を成した、ということなんです。
で、皆様方、視聴者の皆様方から、私にたくさんの価値を付けていただき、またこのみすぼらしい身に、たくさんの綺麗な衣装を着せていただきました。
そして今日ここで、皆様方に直接、お礼を言う機会がありましたことを、感謝したいと思います。32年間本当にありがとうございました。お世話になりました。
能町さんが言うように、タモリさんは自分がすごい人間だという自覚がないので、「価値を見つけてくれた」ではなく、「価値を付けてくれた」と表現したのではないでしょうか。私はタモリさんの言葉からそのように受け取ったのでした。
匠はダンディでした!
— 松岡敦司 (@MatsuokaAtsushi) 2013年7月23日
あんな大人になりたいものです!
8月6日発売ですよ〜チーフ松岡
#knann pic.twitter.com/HS0TIrXqKP