笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

「笑う犬の冒険」新レギュラーにビビる大木を指名した内村光良

こないだ「ロンドンハーツ」を見て、「売れる芸人と売れない芸人の違いはナンだ!?」と、あれこれ考え込んでしまいました。

フルーツポンチ村上の野心

2011年7月12日放送「ロンドンハーツ」(テレビ朝日)

司会はロンドンブーツ1号2号(田村淳・田村亮)。
ドッキリ役はフルーツポンチ村上。
仕掛け人役はジャングルポケット太田、ジューシーズ松橋。

企画は「勝手にノミネート!マジメ芸人GP」。芸人のプライベート姿を隠し撮りし、普段はどれだけマジメなのかを赤裸々に暴く、というロンハーらしいドッキリ企画。

なかでも飲みの席でマジメに野心を語るフルーツポンチ村上の姿が、特に印象に残りました。

松橋「村健のさ、ビジョンってあるの?」
村上「元々はありましたよ」
松橋「最終的にはでもさあ、フルポンで冠(番組)持ちたいとか思う?」
村上「そりゃ持ちたいでしょ、それの野心なくしたらさあ、そこ目指してないヤツが、他の所で頑張れる?って思っちゃう

スタジオでこの映像を見ていたアンタッチャブル山崎は、「あら、ちょっと……」と意外な一面を見たような反応をし、ロンブー淳は「へぇ~」と関心。スザンヌは素直に「格好いい」とコメントしていました。その傍らで、酔って熱く語る己の姿に苦笑いするしかない村上。

テレビで活躍し続けるためには、この熱い気持ちが必要不可欠なのかもしれません。

村上さんの野心に触れて、「売れる芸人は常に向上心を持っている」と吉田正樹さんが話していたラジオを思い出しました。ちなみに、吉田さんは「夢で逢えたら」「殿様のフェロモン」「笑う犬」など数々のヒット番組を生み出してきた元フジテレビプロデューサー。ウッチャンナンチャンとの縁も深いテレビマンです。

吉田正樹「売れる芸人は常に向上心を持っている」

2010年8月6日放送「よんぱち 48hours」(TOKYO FM)

パーソナリティは鈴木おさむ。
アシスタントは柴田幸子。
ゲストは吉田正樹。

売れる芸人と売れない芸人の違いについて尋ねる鈴木おさむさん。

鈴木「売れる芸人と、売れない芸人というか、なんて言うのかな?吉田さんって今まで、いろんな芸人さんをピックアップしてきてるわけじゃないですか」
吉田「え~と、鈴木おさむさんに構成を頼む芸人は売れます」
鈴木「ははははっ、よく言いますよ」
柴田「ふふふっ」
吉田「それはね、やっぱ自分が向上したいと思ってる芸人さんね」
鈴木「へぇ~」
吉田「『僕はこれでいいんだ』って、自分を今の段階で肯定している人はそれ以上売れないです
鈴木「うん」

まさにフルーツポンチ村上さんが熱く語っていたことと、ぴったり一致します。

そしてさらに売れる芸人の条件が続きます。

努力したからって売れるわけではない

吉田「あとはやっぱ、これはもうかわいそうだけど、オーラとか、持って生まれた輝き
鈴木「う~ん」
吉田「あの~、やっぱり、努力をしてというモノでもないんですよ、売れる売れないはね」
鈴木「うん」
吉田「上手いって人と売れてる人って違うじゃない?なんかその、そういう魅力的なものを感じる……だから売れる人はなんらかの方法で、例えばこういう鈴木おさむさんみたいなヒットメーカーに出会うわけ、それも運だと思うんですね、だから運を大事にしたほうがいいよ」
鈴木「そうですね」

芸人さんが苦悩するのはここではないでしょうか。いくら努力をしても手に入れられないモノがある。努力の量に比例して売れていくわけではない。言ってしまえば、運だと。

しかし、売れる芸人はその運を引き寄せることが出来る。そう吉田さんは言うのです。

チャンスは準備が出来ている人のところにやってくる

吉田「だから僕、よく聞かれるのね、パスツールだったかな?チャンスはね、準備がちゃんと出来ている人のところにやってくる
(唸る鈴木)
吉田「みんなチャンスがあるんだよね」
柴田「ええ」
吉田「同じものを見てても、これが良い出会いだってことをみんな見過ごすんです」
鈴木「うん」
吉田「だけど準備が出来てて、『ああ、アレが欲しいな』と思っている人は『あっ、来た!』、今日鈴木おさむさんと会った、『ごめん、ちょっとなんかコレやりましょうよ』って、新しい仕事に繋がるわけ」
(感心する柴田)
吉田「会ってても、『ちわっす!』って去っていく芸人さんいっぱいいるでしょ?」
鈴木「いっぱいいますね」
柴田「見過ごさないだけのちゃんと準備が……」
吉田「それはちゃんと準備してないと分からない、『あっ、俺にとってのチャンスだな』って」

ここでちょっと脱線。有吉弘行さんが「アメトーーク」の活躍で2度目のブレイク直後、「内村さまぁ~ず」に出たときの話を。

内村光良「1つ1つの仕事を大切にする」

2008年7月15日配信「内村さまぁ~ず」(第42回)

レギュラーは内村光良、さまぁ~ず(大竹一樹・三村マサカズ)。
ゲストMCは有吉弘行。

有吉さんが「僕が今やるべき事は?」という質問をぶつけたときに、ウッチャンはこうアドバイスしました。

内村「あの、有吉さんは今、キテると思いますから、1個1個大事にしていくんです、仕留めていきましょう」
有吉「1個1個」
内村「1個1個の仕事を仕留めていく」
有吉「(これまでの自分のMCっぷりを振り返り)今日のようなことがないように」
(内村笑)
内村「仕留めていくことです、確実に」
有吉「(真剣な顔で)分かりました……」

ちゃんと準備をして、確実に目の前の仕事を仕留めていく。それを積み重ねていくことで、出川哲朗の座右の銘「人は一生懸命頑張ってれば、必ず誰かが見ててくれる」のように、大きなチャンスが訪れるし、それを見逃すことも無い。お笑い道にショートカット無し。

話を「よんぱち」に戻します。

吉田正樹「ビビる大木は売れない頃からオーラがあった」

2010年8月6日放送「よんぱち 48hours」(TOKYO FM)

パーソナリティは鈴木おさむ。
アシスタントは柴田幸子。
ゲストは吉田正樹。

数多くのお笑い芸人を見てきた吉田正樹さんに、売れてない頃からオーラがあったのは誰かを尋ねる鈴木おさむさん。

鈴木「吉田さんって、ずっと若手時代からいろんな芸人さんを見てるじゃないですか、もちろん売れない頃からも」
吉田「うん」
鈴木「でも、売れない頃から見てきた芸人さんで、さっきオーラって言いましたけど、確かにオーラある人って昔からあったりするじゃないですか」
吉田「うん」
鈴木「雰囲気」
吉田「可愛さね」
鈴木「可愛さ、それって誰ですか?売れない頃からコイツ、オーラあったなっていう」
吉田「だからね、このあと来るけど(ビビる)大木くんって、なんか知らないけど、全然テレビ出てないよ」
鈴木「はい」
吉田「ウチに飯食いに来て、『こんばんみ!』とか言ってるわけ、『あざ~っす!』っていうのもアイツが本当に」
鈴木「ああ、一番最初にね」
吉田「本当はね、のちに別の人で有名になっちゃったけど、ふふっ」
鈴木「ふふっ、はい」
吉田「ただ、あのグループの中で『あざ~っす!』ってアイツが最初に言った、で、それはね、芸人という存在が好きで好きでたまらない」
鈴木「うん」
吉田「ウッチャンもそのことが好きで、あの~、ちょっと本(『人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ』)にも書きましたけど」
鈴木「ええ」
吉田「『笑う犬の冒険』になったときに、ナンチャンと誰入れるか?ってなったときに、(ウッチャン)『大木を入れてあげたい』と
鈴木「うん」
吉田「なぜかと言うと、芸人っていう風になりたかった、売れたいんじゃないんです、芸人が好きなんですね、そういう可愛らしさがありましたね」

ビビる大木さんの話を聞いて思いました。あとひとつ、売れるために絶対に必要な条件とは、「お笑いが好きだ!」という気持ちなのだと。