笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

内村光良に最大級の褒め言葉を送るさまぁ~ず

売れるよりも、売れ続けることのほうが難しい。

その難しさについては、それこそお笑いを好きになった瞬間から認識しているつもりなんですが、同じ世界で生きるお笑い芸人がこのテーマについて語り出すと、その言葉は重く、経験に裏打ちされた深いものに聞こえてきます。

こんなことを改めて考えるようになったのは、オードリーの若林がゲストで出たラジオでした。

人を笑わすということの本質を捉えてたら運もついてくる

2011年6月17日放送「よんぱち 48hours」(TOKYO FM)

パーソナリティは鈴木おさむ。
アシスタントは柴田幸子。
ゲストはオードリー若林正恭。

若林さんへの最後の質問で、ど真ん中なことを尋ねる鈴木おさむさん。

鈴木「夢が叶うか、叶わないかって、何が違うと思います?」
若林「叶うか、叶わないか……」
鈴木「上手くいくかどうかって、運って」
若林「はい」
鈴木「運ってどっちだと思います?その、運って、実力で手に入るもんですかね」
若林「運は……うわ~、そうですね、なんか、人を笑わすということの本質みたいのを捉えてたら、運もついてくると思うんですよ」
鈴木「あ~、うんうん」
若林「だけどその、自分が……自分の欲とかが勝っちゃってると、運はついてこないのかな?って最近は、思ったりも」
鈴木「あ~」
若林「もう結構、ホントになんかもう、なんだろう?哲学みたいなとこに行っちゃうんで、ふふふっ」
鈴木「ふふっ、なる、なるよね」
若林「はい、まだ分からないですけど、難しいところですね」
鈴木「うん」
若林「で、『アイツ売れたな』つって、みんなが『なんで?』って言っても、ホントに3年後、全く出なかったりとか、リアルな話……」
鈴木「あります、あります」
若林「あるんで、10年、20年残ってる人となると、やっぱそういうとこなのかな~って」

自分次第で運を手繰り寄せることが出来る。そう若林さんが言ったときは震えました。後でちょっと濁していましたけど。

では、そうやって運をつかんで売れた芸人において、それを継続出来る人と、そうでない人とを分ける要素は一体なんなのでしょうか。

このテーマについて考えていたら、バナナマンのラジオにさまぁ~ず三村さんがゲスト出演したときの放送がふと浮かんできました。

お笑い界では毎年2組の脱落者が出る

2010年10月22日放送「バナナマンのバナナムーンGOLD」(TBSラジオ)

パーソナリティはバナナマン(設楽統・日村勇紀)。
ゲストはさまぁ~ず三村マサカズ。

今後のバナナマンについて、設楽さんが三村さんに相談します。

設楽「まずバナナマンのこれから、近い未来、こんな感じになったらいいんじゃないか、どうしたらいいのか?」
日村「あ~、すごい、そこもう核だね、それね」
三村「いや、バナナマン、このまんまいったらこう……なんかこう、なんだろうな」
日村「はい……」
三村「みんながみんな、脱落者が年に2組ぐらい出ている気がするわけ」
(バナナマン笑)
三村「今、実戦でいる人達の中から、脱落者が」
(日村笑い止まらず)
三村「いやだってそういう歴史だもん!お笑いって」
設楽「まあまあ、そうですね」
日村「そうなんですよね」
三村「ね、このまんま、じゃあこの今37、38(歳)、バナナマン、おぎやはぎ、この辺のラインの人達が全員」
設楽「はい」
三村「1年後、2年後、ドンッて残ってるかって、そんな例ないからね、そんなかで、つまんなかった人達が2組必ず消えていくから」
設楽「ひひひっ、こえ~話だな~!」
三村「ははははっ」
日村「(三村の言葉をかみ締めながら)う~いや~、もう~」
三村「だから、オモシロ続けなきゃいけない」
日村「なるほど」

お笑い界は、まさに生き馬の目を抜く世界。そこで、山あり谷ありの芸人人生を歩んできた三村さんの言葉だからこそ、説得力があります。

ここで、三村さんの言葉を裏付けるようなエピソードを設楽さんが話し始めます。

「内P」時代の三村マサカズ「俺はもっと面白くなりたい!」

設楽「だって俺ら、驚異的だったのが、『お笑いさぁ~ん』に行ったときも話したけど」
日村「うん」
設楽「あの内Pのときのさまぁ~ずさんが、三村さん、その当時まだ言っても3、4年前ですかね?」
日村「もう内P最後の」
設楽「とかぐらいですかね、もう、『俺はもっともっと面白くなりてえ!』って、すげ~言ってて」
日村「うんうん」
設楽「もうコントもね、面白い、その、大喜利とかやってもすげ~面白くって、さまぁ~ずさん」
日村「面白い」
設楽「うわ~、すげ~な~って思ってて、でも、飲んでたりすると『俺はもっと面白くなりたい!もっと!もっと!面白くなりたい!!』って、ずっと言ってたから、この人すげ~な~って思いましたもんね、恐ろしいなって」
日村「うん」
三村「なんだろうな~、面白さへの嫉妬がもう半端ないんだよね」
設楽「ははははっ」

内P時代の三村さんはウッチャンにもライバル意識を燃やしていて、打ち上げの席で酔いが回ると、ウッチャンに勝負をけしかけたりしていました。後になって、その他人を蹴落とそう的な考えは違うんじゃないかと気付いたそうです。

売れたからってそこで安心してしまうと、そのうち脱落させられてしまう。売れたらさらにアクセルを踏んで、走り続けないと、長く活躍することは出来ない。三村さんの言葉を聞いていたら、ある番組で、さまぁ~ずがウッチャンに対して何気なく語っていた風景が自然と蘇ってきました。

そのある番組とは、「さまぁ~ず げりらっパ」です。

15年間ぐらい売れ続けているからね

2006年1月24日放送「さまぁ~ず げりらっパ」(名古屋テレビ)

レギュラーは、さまぁ~ず(大竹一樹・三村マサカズ)。
ゲストは内村光良。

映画『ピーナッツ』宣伝のために、名古屋へやってきた内村光良。

バラエティ番組ってことで、さまぁ~ずチームとの雪合戦で勝利したら宣伝をしてもいい、という条件がスタッフから言い渡されます。しかし、この映画に出演しているさまぁ~ずには勝ちに行く理由が全くありません。^^;

そんなよく分からない設定で番組は進行。雪合戦の直前、スタッフがさまぁ~ずに意志を確認します。

スタッフ「本当にちゃんと、内村さんに玉をぶつけれますか?」
三村「ぶつけれねえよ」
スタッフ「ぶつけてくださいよ」
大竹「あれ、危ねえぜ」
三村「結構あの~、こうやって近い存在なんだけど、あの人本当にアレだからね、大物だからね」
大竹「そう」
三村「年こそ3つしか違わないけど、あの人、15年間ぐらい売れ続けているからね
大竹「そうなんだよ!ず~っと売れてる人だから、(遠くで雪合戦の準備をする内村光良を見て)そんな人いないから
三村「俺ら、言ってもここ5年ぐらいだから、ははははっ」
大竹「(笑顔の三村とは対照的に真面目な顔で)たいしたことねえ」

最初は、「確かにウッチャンはすごいよね!」とファン丸出ししたぐらいで、特に気にも留めていませんでした。しかし、バナナマンのラジオで語っていた三村さんの口から出た「売れ続けている」という言葉だと考え始めると、実はウッチャンに対する最大級の褒め言葉であったんだと思わざるを得ず、胸が熱くなってしまいました。