笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

今後のテレビとお笑い芸人の生き方

とにかく時間の許すかぎり過去のアーカイブを見まくっていた、GyaOでWEB配信されていた番組「ヨシモト∞」。

数多くの吉本の芸人が登場してきた中、私の琴線に触れたのがダイノジでした。

今回は、特に印象に残った「お笑い芸人の生き方」について語っていた回を紹介させて下さい。

広告収入が減ったテレビ局は映画を作り出した

2008年9月11日配信「ヨシモト∞」(GYAO!)

出演者はダイノジ(大地洋輔・大谷ノブ彦)。

大谷さんがいつものように講義したいと言い出します。

大谷「テレビの広告料ってめっちゃ減ってんの知ってます?」
おおち「いや、知らない」
大谷「分かります?例えばスポンサーだとしたら、そのCMを打っても視聴率がもう10年前と比べてすごい低いわけです、ということはどんどん離れていってるんです、今までタブーだったパチンコ屋とか、要するにあの~、サラ金とかのCMが流れているんです、テレビで、絶対流さなかったでしょ?今もうめっちゃくちゃ時間かけて流すじゃないですか」
おおち「うん」
大谷「ってことは、パチンコめちゃくちゃ上手ければテレビに出れるんです、もっと言っちゃうと、今まで広告収入が全部だったテレビ局は、それが少なくなったから、逆に映画作っているんです」
おおち「うん」
大谷「モノ作っているんです、だから映画絶対売らなきゃいけない」
おおち「うんうん」
大谷「だってそうでしょ?自分達のテレビ局の予算になるわけだから、だから一日中テレビに出るんですよ、番宣で」
おおち「はいはい」
大谷「ということは、テレビに出たかったら面白いネタ作るより、映画に出たら出れるんですよ、芸人が
おおち「ほ~」
大谷「お笑いって絶対ポジションがあるから、映画んとこに、だから番宣とかで一日中やるじゃないですか、したら主演の女優さん、男優さんが出たくない番組もありますよね?中には」
おおち「うん」

お笑い芸人のネタがどう消費されていくかに話が移ります。

テレビでお笑いのネタ時間が短くなっている理由

大谷「で、ネタも、例えば、昔は10分とか20分の漫才をさせてましたけど、今絶対出来ないじゃないですか?」
おおち「うん」
大谷「なんでかっていうと、あれって要するにアーカイブで後で……アーカイブって作品化したときに、残せる量ってのがダウンロードとかってしたら、みんなも多分携帯でやっていると思うけど、ダウンロードでネタ見ると、2分が限界でしょ?正直」
おおち「うん……」
大谷「だから2分以上のネタが出来ないんですよ、テレビで、結局あれ後でダウンロード出きる様になんなきゃいけないから、ソフトとして売るためには、ネタっていうのは携帯で見たら2分しか無理なんですよ」
おおち「ほ~」
大谷「着音も、着信の音あるじゃないですか、あれも要するに全部のフルで言ったら携帯にこうやってやる(ダウンロード)から、音楽を一番聴く機会ってのは、あれ一台持っていれば全部出来るから、ここに出来るかどうかってのが大事になってくるんです」
おおち「はいはいはい、携帯でな」

そういった状況の中で、お笑い芸人はどうしていくべきか。ここから熱さが増す大谷さん。

こんな時代だからこそ劇場が存在が大きい

大谷「つまり、作品自体ってのがどんどんそっち(携帯で見る)になっていくんです」
おおち「うん」
大谷「っていうことになると、お笑いっていうのは、今までは10分、20分のネタをテレビでオンエアしてたのが、今1分とかそういう風に、要するにダウンロード出来るネタじゃないと、テレビに出れないってことですよ」
おおち「(補足するように)短いね」
大谷「ってことは、みんなお笑いファンは、これからは10分のネタ見たかったらどうするかっていうと、劇場に行くしかないんですよ、つまり、それぐらい劇場ってすごい大事なんですよ、だから、飯島愛さんは引退するときに『板の上で勝負出来ないから引退します』って言ったじゃないですか?どういうことかというと、板の上って生の舞台のことですよ、要はこれからここの上で勝負出来ない人は、駄目なんですよ」
おおち「うん」
大谷「落語を見に行ったり、歌舞伎を見に行くような感じで、お笑いを見に行くような感じになるんです」
おおち「うん」
大谷「絶対そうでしょ?だから今日一日お笑いを見に行くぞ!って言って、みんなとわーって行くわけですよ、分かります?」
おおち「うん」
大谷「だからすごくライブって大事になってくるんです」
おおち「うんうんうん」

舞台で勝負出来る、作品を残せるお笑い芸人が生き残る

大谷「今度は、ライブはそのまま映像を撮ったら、それでアーカイブとして売れるでしょ?DVDとなって売れるでしょ?それ大事なんです、それがまた2次的なもので売れていくから」
おおち「お金が発生するし」
大谷「芸人というのは、今まではテレビに出たやつが勝ちだったんです、10年前は、それが今はそうじゃなくて、この先はライブでお客さんを呼べるとか、良い作品を作れたりとか、モノをそうやって売っていけるやつが、これから芸人の中で生き残っていくんです、しかもこれだけ芸人が多いから」
おおち「うんうん……」
大谷「例えば、1分のネタで出て行くけど、レッドカーペットみたいな番組にしても、ずーっと続くわけじゃないじゃん?」
おおち「ほぉ」
大谷「だってそうでしょ?ちょっと出て飽きたらみんなもう、そんなもん見なくなるじゃん、また新しいやつ出てくるし」
おおち「はいはいはい」
大谷「1分だったら幾らでも作れるし、そうでしょ?だからそこは、多分俺達にとってもこれから問題ですよ、ここ(テレビ)に出てくるときって多分、テレビタレントとしてまっとう出来たらいいわけで、一番大事なことは、こっちのほうですよ、さっき言った舞台とか、作品を残すほうになるわけですよ」
おおち「うん」
大谷「それは例えばさあ、絵本作ったりとか、本書いたりとかしたらさあ、この今の世代の人には届かなくても、その子の子供に届く可能性があるんですよ」
おおち「(気付かされたように)はっ!」
大谷「その子の子供が好きだって言うこともあるかもしれないから、このアーカイブってすっげー大事なんですよ」

ここで「舞台で勝負出来るといっても、それは吉本の芸人であってこそ」だと、ふと疑問に感じたんですが、大谷さんはそれについてもちゃんと付け加えます。さらに熱が上がります。

吉本のお笑い芸人と他事務所のお笑い芸人の違い

大谷「これすっごい吉本がいいのは、劇場を赤字でもずっとやり続けているじゃないですか、他の事務所は……例えばこれ、俺ずっと言ってるんですけど、例えば、M-1とかってヤラセがあるとかさあ言う人居るじゃん、吉本ばっかり、なんか決勝に残ってとか言うじゃん?」
おおち「ふんふん」
大谷「でもあんなの当たり前だと思わない?俺から言わせれば、だってさあ、毎日やってんだよ!漫才」
おおち「うん」
大谷「しかも優勝してもテレビタレントで逃げれないんだよ、漫才師やらされんだから、(少し間をおいて)ぶっちゃけて言って、他の事務所で優勝したコンビ居るじゃん、M-1で、今漫才やってる?やってないじゃん!なぜなら劇場が無いから」
おおち「うん……」
大谷「出来ないの、だけどこっち(吉本)はやらせる場所があるの、だから漫才師って生き方があるんです

他事務所の例として、同期で解散してしまった漫才師・号泣を挙げる大谷さん。

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号泣とバナナマンの生き方

大谷「俺なんかさあ……同期でずっと活躍してて、一緒の舞台に立って、まあいろんな事情があるから大きいこと言えないんだけど、号泣っていうやつが居るのね、で、解散しちゃったの……その一人(島田秀平)がなんか占いのキャラでばーっと出ちゃって……」
おおち「うん」
大谷「もう一人のやつはネタしか出来ないやつなの、昔から一緒に……もうその、客とか30人のライブに出ててさあ、終わったあとにさあ、お前もうちょっと要領よくやれよ、みたいなこと言ってたの、俺」
おおち「ふんふん」
大谷「お前もっと前出ろよとか、エンディング、『いや俺ネタだけウケていればいい』って、要するに不器用なんですよ、だけどあいつの生き方有りでもいいわけじゃん?……って俺は思うのね」
おおち「はい」
大谷「漫才師で最後終わってもよかったはずなのに、あそこの事務所劇場ないから、漫才師で生きていけないんですよ
おおち「(いろんな思いを巡らせているかのように)ほぉ~」
大谷「漫才って手段だけなんです」
おおち「ほぉほぉほぉ」
大谷「例えば、それがバナナマンさんみたいなさあ、定期的に単独ライブやってしっかり入って、DVDも出せて形になって残せたら生きていけるけど、そういう選択肢が出来ないやつっているわけじゃん?」
おおち「うん」
大谷「っていうことは、やっぱりあの~、さっき言ったバナナマンさんみたいな生き方ってのを、ちゃんとみんなしっかり意識しないと駄目だなって、みんなその~漫才ライブやって漫才をアーカイブに残すってのが難しかったら、違う形でもいいから芸人っていうのは、作品を残すってことが、すっげー大事なんだなって」

お笑い芸人の趣味は作品に直結してなんぼ

大谷「本でもいいし、で、さっき言った映画ってのは絶対廃れないですよ、テレビの広告収入は減っているけど、映画は人がめちゃくちゃ入っている、だからテレビ局は作っているわけですよ、お金投資して、そうでしょ?で、宣伝すればちゃんと入るわけですよ、だからどこの事務所も映画作るのに一生懸命ですよ」
おおち「うん」
大谷「で、吉本も、その松本さんのがちゃんとヒットしたってのもあるけど、これから先に、なぜ神保町花月がお芝居をやっているかというと、あそこから映画作るやつが出てくればいいんです、監督やるやつだったり、芝居のやり方……ってか、あそこで芝居やって学ぶことっていっぱいあるわけじゃん?」
おおち「ん~、映画もやってたしな、吉本」
大谷「そう、だから吉本は、そこをちゃんと見ているってことでしょ?ということは絶対みんながそうなるべきだと思うんですよね、ってなったらやっぱり、作品を残さなくちゃいけないんですよ、芸人ひとりひとり」
おおち「ほぉ~」
大谷「ならば趣味をやるってことは、イコール、それに直結していなければ駄目なんですよ、変わったものっていうのは、これからキャラクターの、要するにさっき言った黒魔術*1でもいいと思いますよ、それはあ~面白いなって思われたらいいんですけど、だけど、黒魔術の本を出すなり、黒魔術界で第二段階の作品が残せなければ、やっぱりその趣味って意味無いですよ、これから俺達芸人がやるかぎり」

「爆笑レッドカーペット」でネタをするダイノジも好きですが、こういった一面をテレビで見せているダイノジも見てみたいです。矛盾するかもしれませんが。

*1:番組の冒頭で趣味を見つける話になって、いろんな芸能人の趣味を発表したときに、ある人の趣味が黒魔術とあり、それを受けてのお話