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笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

お笑いユニット番組「ミレニアムズ」の当て所は誰なのか

お笑いユニット番組を観るときの個人的な楽しみ方として、「当て所は誰なのか探すこと」があります。
そういった視点で最近注目しているのが「ミレニアムズ」です。

「ミレニアムズ」は、今年の秋にフジテレビで始まったバラエティ番組。2000年にデビューした同期の芸人だけでユニットを組んで、様々な企画に挑戦しています。メンバーはオードリー、ナイツ、ウーマンラッシュアワー、流れ星、南海キャンディーズ(山里亮太のみ)の5組。
そして、「当て所」とは、ウッチャンナンチャン内村光良が雑誌のインタビューで使っていた表現です。

ふかわりょうは「内村プロデュース」の当て所(クッション)だった

2005年12月発売の『クイック・ジャパン Vol.63』(太田出版)から。

初監督映画「ピーナッツ」公開を記念して、徹底特集のテーマは「内村光良」。
その特集のなかに「内村光良ロングインタビュー」がありました。聞き手である放送作家・高須光聖が、「内村プロデュース」(以下、「内P」)のレギュラーメンバーの関係性について尋ねます。

内村 あの番組、実はふかわのいない時にオレとさまぁ~ずだけで番組を回したことがあったんですけど、何かぜんぜん面白くない。普通の会話になっちゃうんですよね。
■―― ふかわがクッションになっていたということですね。
内村 不思議なポイントで返してきますからね、あいつは。

高須さんが、ダウンタウンと山崎邦正さんの関係性になぞらえると、

内村 そうかも知れない。みんなの当て所なんですね

ふかわさんは「内P」にとって欠かせない存在だったとウッチャンは説明します。さらに、「そういうメンバー同士の関係性の妙で成立していた番組だったんだと思いますね」と述懐していました。
「内P」は、ふかわりょうという「当て所」(クッション)のおかげでメンバー同士が良い関係性を保てた番組だったのです。

このインタビューを読んでから、「当て所は誰なんだろう?」と想像しながら観る楽しみを覚えました。過去の番組においても、そうやって見返すことで新たな味わいが生まれます。

クイック・ジャパン(Vol.63)

クイック・ジャパン(Vol.63)

例えば「夢で逢えたら」。この番組の「当て所」は野沢直子でしょう。

野沢直子は「夢で逢えたら」の当て所(接着剤)だった

「夢で逢えたら」は1988年から1991年までの約3年間、フジテレビの深夜に放送していたスタジオコント番組です。出演者はダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコ、野沢直子の6人。バブル真っ只中の時代に、ベタでありながらアート的な匂いもする笑いで絶大な人気を獲得しました。深夜番組ながら視聴率20パーセントを超えた回もあったそうです。

野沢さんが「当て所」だと判断する根拠は、番組スタッフだった元フジテレビ・吉田正樹さんの著書です。

2010年7月発売の『人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ ~「笑う犬」プロデューサーの履歴書~』(キネマ旬報社)から。

『夢逢え』はウッチャンナンチャンとダウンタウンの印象が強い番組ですが、実際のキーマンはほかでもない、野沢直子です。彼女が離れた後、この二組は友達ではあるけれども、番組内で今までどおりの笑いを維持することができなくなりました。なぜなら野沢直子は、ウッチャンナンチャンとダウンタウンをつなぐ”接着剤”の役割を果たしていたからです。

ふかわさん不在時の「内P」収録現場の話と重なります。
「夢で逢えたら」は、野沢直子という「当て所」(接着剤)のおかげでダウンタウンとウッチャンナンチャンが見事に融合した番組になったわけです。

人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ ~『笑う犬』プロデューサーの履歴書~

人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ ~『笑う犬』プロデューサーの履歴書~

ここでちょっと視点を変えて、「水曜日のダウンタウン」を通して「当て所」について考えてみたいと思います。

「売れてる芸人が連れてる後輩芸人ほぼほぼポンコツ説」から当て所について考える

2014年7月23日放送の「水曜日のダウンタウン」。

「水曜日のダウンタウン」は、プレゼンターが個人的に信じている説を持ち寄って、その信憑性をあらゆる手法で検証していくバラエティ番組です。司会はもちろんダウンタウン(浜田雅功・松本人志)。

この日の放送で、おぎやはぎ小木さんが次のような説を持って登場しました。「売れてる芸人が連れてる後輩芸人ほぼほぼポンコツ説」。発表した瞬間、スタジオの観客席は拍手と笑いに包まれます。異様なまでのウケ方に出演者たちは驚きを隠せません。まるで「あるあるネタ」のような反応です。

検証VTRには、オードリー若林とビックスモールン・ゴン、ケンドーコバヤシとネゴシックス、劇団ひとりと神宮寺しし丸、千原ジュニアとツーナッカン中本の4組が、サンプルとして出演。「売れてる芸人」が披露する様々なポンコツエピソードによって、小木さんの説が出演者にも理解されていきます。
でもそうなってくると、ある疑問が湧きます。それは「なぜ、それでも後輩を可愛がるのか?」。この疑問に若林さんは、こう答えました。

若林「楽なんですよ、なんかその~、なんだろうな? 表裏がないから、深く考えないで喋れるし、っていうところはあるのかもしれないですね、うん、あとその、勉強になりますよね、自分への戒めにもなりますし」
ゴン「あはははっ」
若林「くふふっ」

三又又三さんとよく一緒にいる松本さんも、その気持ちが分かるようです。

松本「ポンコツってね、気を使わないのよ」
小木「そうなんですよね」
松本「デキる後輩っていうのはなんか妙に気を使うから、でも気を使われるのも、またコッチも気を使うでしょ、で、ポンコツってアホなんで、俺が『焼肉食いたいな』って言ったら、『いや焼肉じゃないっしょ!』」
(スタジオ笑)
松本「で、これが、まあまあ場合によっちゃ心地よかったりすることもある」
浜田「あ~、そういうことか」
松本「うん」

不思議なポイントで返してきても、逆にそれが心地よかったりする。なぜなら相手に計算がないから。だからこっちも気を使わないで済む。これはもう、そのまま「当て所」の説明になっている気がします。

さて、「ミレニアムズ」で「当て所」の役割を担う芸人は誰でしょうか? そもそもいるのでしょうか?
放送が始まったばかりなので今すぐ判断することはできません。ただ、そういった想像をかきたてるような、メンバー同士の関係性を発見できる企画をたくさん観たいです。