オードリー若林正恭は熱くてヤバい男
もはや人見知りではない。
オードリーの若林正恭は、自身のラジオ番組でこのような主旨の発言を時々しています。つまり「アメトーーク」の人見知り芸人で活躍していた頃の自分は、もういないと言うのです。
オードリーが定期的に主催している「ネタライブ」でも、出てくれた芸人をねぎらう打ち上げが「一番楽しい」と若林さんは話しています。昔だったら打ち上げをどうやって回避するかで頭がいっぱいだったのに。
当時は各番組にゲストとして呼ばれる立場だったのに対して、現在はメインとしてレギュラー番組を受け持つ機会が増えました。そうなってくると、出演者やスタッフをチームとしてまとめるリーダー的な役割を否が応でも期待されてしまいます。人見知りなんかしていられない環境に身を置かざるを得なかったことも、若林さんが変化していった要因なのかもしれません。
さらに若林さんと共演した芸能人の証言を拾っていくと、「人見知りではない」どころか、積極的に人と関わって番組を良い方向へ導こうとする姿が浮かび上がってきます。
オードリー若林の姿勢に感動するAKB48 Team 8選抜メンバーたち
2017年3月31日放送「AKB チーム8のブンブン!エイト大放送」(日本テレビ)
司会はオードリー(若林正恭・春日俊彰)。
出演者はAKB48 Team 8選抜メンバー。
AKB48というアイドルグループありきで、オードリーはバラエティに不慣れな彼女たちを支える意味合いが強い番組でした。深夜でワンクール限定ということもあり、「期間限定の助っ人」として雇われたような感覚です。ですから他の番組よりも若干流し気味になったとしても、仕方ない面が正直ありました。
そんな番組の最終回で、Team 8選抜メンバーに感想を聞いていく若林さん。
若林「さあ、倉野尾(成美)さん」
倉野尾「はい」
若林「いかがでしたかね?」
倉野尾「(目に涙を浮かべながら)さっきスタッフさんに聞いたんですけど」
若林「はい」
倉野尾「若林さんがすごい、なんか……打ち合わせをすごいやってくださったって聞いて」
若林「言ってた?」
倉野尾「ホントに、なんかもう、すごい嬉しかったです!」
若林「あ~、ホント? (とぼけた顔で)どの番組もね、あれぐらい打ち合わせしてるけどね~」
春日「やらしいな」
若林「ふふふっ」
春日「やらしい男だな」
若林「あはははっ」
倉野尾さんの純粋な眼差しをどう受け止めたらいいのか迷っている若林さんを、春日さんが助けるという構図がちょっと趣深いです。
最終回に若林さんの意外な一面が共演者によって明らかになる。こういった光景が過去にもありました。オードリー好きな方ならピンと来たかもしれません。そう、「ミレニアムズ」です。
「ミレニアムズ」のメンバーが明かすオードリー若林の熱さ
2015年9月15日放送「ミレニアムズ」(フジテレビ)
出演者は、オードリー(若林正恭・春日俊彰)、ナイツ(土屋伸之・塙宣之)、流れ星(瀧上伸一郎・ちゅうえい)、ウーマンラッシュアワー(村本大輔・中川パラダイス)、南海キャンディーズ山里亮太。
2000年にデビューした漫才師を9人集めて立ち上げた、いわゆるフジテレビ伝統のお笑いユニット番組です。キャプテン(リーダー)は、オードリー若林。
最終回は「カスママの店で全てしゃべり尽くし祭り」と題して、約5か月ぶりにメンバー全員がカスママの店に集合。紆余曲折ありながら1年間やってきたこの番組への思いを全て吐き出してもらいます。
塙さんが流れ星への秘めた感情を吐露したあとに、「他のメンバーはどうなの?」とカスママ(春日)がカウンターを見渡しながら尋ねました。すると村本さんが沈黙を破って、若林さんがキャプテンとして苦悩していたことを明かします。
村本「うーん、僕は若林君は好きでしたけどね」
若林「ああ、本当ですか?」
村本「若林君はやっぱこう、リーダーシップというか、『これからミレニアムズ、どうしていきたい?』みたいなことなんかもね、すごいね、自分で悩んでて」
春日「あっ、そうなの?」
村本「メールとかでも、『村本ちゃん、ちょっと今度皆でミレニアムズどうしていくか、俺が意見まとめてスタッフさんに言いに行くから』」
若林「(悶えながら)これはやめようよ」
村本「すごい熱いですよね」
村本さんに続いて、塙さんも口を開きます。
塙「やっぱり、すごい熱いから、でも若林君ね、久々に電話かかってきたときに電話番号変わってて、いっつも夜2時ぐらいにかけてくるの」
土屋「遅いよな」
(恥ずかしくて顔を伏せる若林)
塙「で、誰か分かんないじゃない、寝てるし、『ミレニアムズの件なんだけどさ……』つって急に始めるからさ、誰としゃべってるか分からなくて」
(スタジオ笑)
春日「『遅くにごめんね』とかも無しで、いきなり本題に入る」
塙「そうそう、自分のなかで出来上がってるから、多分うわーってなったときに(電話を)かける」
このまま言われっぱなしではいられない若林さん。
若林「でも皆の意見ひとりずつ聞いて、まとめてスタッフさんに伝えに行こうと思ったんだけど、春日とパラちゃん(中川パラダイス)だけ聞かなくていいやと思った」
(スタジオ笑)
春日「なんでなのよ~!?」
中川「だって電話かかってきてないですもんね?」
春日「初耳よね」
途中で深夜に降格という憂き目にも逢ったりしました。でも、そんな「ミレニアムズ」に対して最も熱い気持ちを持っていたのが、他でもないキャプテンの若林さんだったのでしょう。
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冒頭で触れたオードリーが主催している「ネタライブ」。次の開催が決まったときに、ちょうど南海キャンディーズが「M-1グランプリ」への参加を表明しました。このニュースを知った若林さんは、すぐさま山里さんにLINEを送ります。「僕らがやってるライブ、出てくれませんか?」と。
しかし、山里さんは返事を保留。なぜなら新ネタを試す機会に恵まれておらず、ウケる確証がないから。ある意味アウェイな場所で勝負するにはまだ自信がたりない。そういった旨をLINEで伝えると、若林さんは「待ってます」と返してきたそうです。
その後「ルミネtheよしもと」で新ネタを試したらウケた。さらに「M-1グランプリ」の1回戦も突破した。確かな手ごたえを得た山里さんは、「お邪魔させてもらっていい?」と若林さんに連絡を入れます。すると若林さんは快諾した上で、次のような提案を持ちかけてきたそうです。「サプライズで出したいんで、言わないでください」。
そして「ネタライブ」当日。シークレットゲスト扱いの南海キャンディーズは、お客さんに見つからないよう注意しながら、会場である有楽町の「よみうりホール」に入ります。
南海キャンディーズのサプライズプランを直前になって取り止めた理由
2016年10月1日放送「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)
パーソナリティはオードリー(若林正恭・春日俊彰)。
「ネタライブ」にシークレットゲストがいることは予め案内しておく。芸人が登場する直前に流れる紹介VTRで、まずは足元だけを映す。そこから徐々にカメラが上昇していき、顔が映った瞬間、その正体が南海キャンディーズだったことを観客は知る。若林さんが考えたプランでした。
ところがです。このプランを当日になって取り止めてしまうのです。一体なぜでしょうか。
若林「お客さん、すごい温かいから、これで南海キャンディーズがドーンと出たら、なんか、すげ~盛り上がるだろうなと思って」
春日「まあ盛り上がるよね」
若林「その勢いのまま南海キャンディーズがネタやったら、すげ~ウケるじゃん、多分」
春日「まあ、ウケるよね」
若林「あんまその姿見たくねえなと思って」
(スタジオ笑)
春日「見たくねえ? その、ウケるところっていうこと?」
若林「まずその、歓声の大きさに山ちゃんがまんざらでもない顔、見たくない」
(スタジオ笑)
山里さんが調子に乗っている姿を見たくないという理由で、だいぶ前に南海キャンディーズが出ることを舞台上で発表してしまった若林さん。発表したあと、舞台袖にいた山里さんに捕まります。
若林「山ちゃんは、出番直前にお客さん知るって打ち合わせしてるから、サトミツ(どきどきキャンプ佐藤満春)と」
春日「うんうん」
若林「俺がだいぶ前で発表したから、なんかちょっと1個乗せてくるね、やっぱね、袖でも」
春日「あっそう、なんつってたの?」
若林「『独特な紹介のタイミングだねぇ』って」
(スタジオ笑)
このときの顛末については山里さんも自身のラジオで話しているのですが、そこでは若林さんが言及していない新事実が出てきます。
山里亮太が語るアナザーストーリー
2016年9月28日放送「山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)
パーソナリティは南海キャンディーズ山里亮太。
ネタライブで、南海キャンディーズの次の出番がオードリーだったので、つかみで軽くサプライズの件に触れてから漫才に入ります。
山里「そのあとオードリーにバトンタッチですよ、バトンタッチしたらオードリーが出てきて、ゆったりとね、若林が『今日のライブ、皆さん楽しんでいただけてますか?』みたいな感じから、『なぜ自分がああいうシークレットゲストのやり方したかっていうとね、そんなもん決まってるでしょ、ウケちゃうじゃないですか、嫌ですよ、自分の主催のライブで、南海キャンディーズ、そりゃあ出てくれるのは嬉しいけど、あの~、なんでわざわざウチらがウケさせなきゃいけないんだよ、絶対に嫌だから、ああいう方法にしました』って」
しかしこれには「アナザーストーリーがある」と語る山里さん。
実は、ライブが終わってから構成をしていた佐藤満春さん(通称サトミツ)に教えてもらったそうです。若林さんがサプライズプランを直前になって取り止めた本当の理由を。
(佐藤の発言は山里が再現)
山里「全部構成を作ってるサトミツ君がね、実はリハーサルではちゃんと完全に、さっき山里が言ったようなサプライズの仕方だったと、でも、それで若ちゃんが」
佐藤「(打ち合わせで)『サトミツ、あのさ、この方法だと、最初の1分ぐらい、多分うわ~! っていうザワつきで、山ちゃんはそれに合わせてネタを変えて、本来のネタのパターンじゃないやつで掴んでから、ネタに戻すっていうやつに、あの人はすると思うんだよ、ごめんだけど、南海キャンディーズが当初やりたかった形のネタを見たいから、俺、このサプライズの方法壊していい?』って許可取ってきたんですよ」
「M-1グランプリ」を目指す南海キャンディーズにとっては、フラットな状況でネタをやって感触を確かめてもらうことが何よりも重要だと若林さんは判断したのでしょう。だから「すごいウケる姿を見たくない」という若林さんの説明は、あながち間違いではありません。
山里「あいつ、メッチャ格好よくない? で、その日の夜に! 南海キャンディーズのネタを見た日の夜に、新ネタ作り出したらしいよ、『うちダメだわ』って言いながら、やべぇんだ、アイツ! バカじゃねえの!」
ネタライブおつかれさまでしたー!今回のOPイラストはいかがでしたでしょうか pic.twitter.com/aEzpSHXzyF
— いとう© (@kadzuhiroguide) 2016年9月25日