笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

コントは誰もがやっているベタな設定を誰もやっていない切り口で

先週の「ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン」に、バイきんぐ小峠さんがやって来ました。自分の好きな曲をエピソード込みで出し合い、どちらが心揺さぶることができるかで勝負する「洋楽じゃんけん 80s編」の対戦相手として。

BSで洋楽番組の司会を務めるほど洋楽に詳しい小峠さんは、大谷さんと互角に渡り合い、1回目のお試し企画ながら非常に盛り上がりました。きっと2回目もあるはず!

バイきんぐと言えば、「キングオブコント2012」優勝とそれまでの長い苦節時代です。対決の合間に、そんな彼らの芸人人生を掘り下げていった大谷さん。私は、小峠さんが明かしたコントのこだわりが一番印象に残りました。

バイきんぐのコントに対するこだわり

2013年7月10日放送「ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)

パーソナリティはダイノジ大谷ノブ彦。
ゲストはバイきんぐ小峠英二。

リスナーから「バイきんぐのコントは立ち位置が決まってるが、こだわりがあるのですか?」という質問が来て、

小峠「立ち位置についてのこだわりは、特にないんですけど」
大谷「コントのこだわりってなんかあるの?」
小峠「コントのこだわり……」
大谷「このルールだけは絶対ある、みたいな」
小峠「あ~、あの、最初は、訳の分からんコントばっかりやってたんです」
大谷「はいはい」
小峠「誰もやったことのない設定、考え付かない設定とかでやってたんですけど、なんか今はもう、ある設定、誰もがやってる設定で、切り口が誰もない、やってない切り口っていうので考えてますね、はい」
大谷「すっごい分かる」
小峠「それをやるようになって、あの~、徐々に良くなっていきましたね」

売れない時代が長く続いても芸人を辞めなかった理由について。

大谷「よく続けたね、辞めなかったね」
小峠「よく辞めなかったっすよね~」
大谷「それって多分さ、ウケてたからでしょ?」
小峠「いや……どうなんすかね~」
大谷「だから一般の人はさ、キングオブコントで、一夜でさ、全部人生変わったように思ってるけど」
小峠「はいはい」
大谷「本当に人生が変わったのって、ウケてたときだよね」
小峠「あ~、でもそうですね、ウケ出してから」
大谷「違う確信が自分に持てたときだよね」
小峠「そうですね」

ダイノジも仕事が全然なかったとき、劇場ではウケていたから芸人を続けられたと言います。

大谷「君らは実はウケてたもんね、何年も前から」
小峠「う~ん、そうですね……(自分で言うのもなんだけどという感じで)ウケてはいました、確かに」
大谷「俺、前の年に(キングオブコントの)準決勝で落ちたとき、『そっか……ルックス的にゴールデン出しちゃいけないんだ』」
小峠「あはははっ!」
大谷「あんな面白いのに!受けねえ(決勝に行けない)ってことは、そういう判断なんだなって思っちゃった」
小峠「なるほど、いや、僕も恨みましたよ、親の遺伝子恨みましたよ」
大谷「ははははっ」

この話を聞いて、うしろシティもコントのこだわりを以前に語っていたのを思い出しました。

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うしろシティのコントに対するこだわり

2012年9月2日放送「うしろシティのラジカントロプス2.0」(ラジオ日本)

パーソナリティはうしろシティ(金子学・阿諏訪泰義)。
聞き手は植竹公和(歌う放送作家)。

うしろシティは、金子学(かねこまなぶ)と阿諏訪泰義(あすわたいぎ)が結成した松竹芸能所属のお笑いコンビ。バイきんぐが優勝した「キングオブコント2012」の決勝に進出した実績がある、若手実力派のコント師です。

挨拶代わりに転校生のコントを披露。そのあとのトークにて。

植竹「転校生って設定は、これはもう、クラシックですよね」
金子「そうですよね」
植竹「昔からあるよね、だけど、なんか面白いんだよね、この設定っていうのは」
阿諏訪「はい」
植竹「なるほど、ネタっていうのはですね、え~と、どういう手順で作ってるんですか?」
阿諏訪「手順?手順は……」
植竹「ネタ作り」
阿諏訪「基本的に僕らって、なんかその、ベタベタなことを題材にして、それをいかにこうズラすか、というか」
植竹「あ~、転校生とかね」
阿諏訪「そうですね」
植竹「例えば、医者と患者じゃないけど、いわゆる……」
阿諏訪「よくある、誰もが知ってる」
金子「うん」
植竹「それを今までにないコントに持って行くっていう考え方なんだ」
阿諏訪「そうですね、だからベタベタな設定が、すごい探してて、あだち充さんの漫画を読んだりだとか」
植竹「へぇ~」
阿諏訪「言ったらもう王道の」
金子「ホント漫画みたいなことを」
植竹「うんうんうん」
阿諏訪「あるじゃないですか、その、本屋で女の子と、本取ろうとして手が触れたりとか」
植竹「はははっ」
阿諏訪「ああいうような、ベタベタなことを」
金子「学校急いでたら八百屋のとこでぶつかって、女の子の紙袋に入ってたレモン転がる、みたいな」
植竹「そんなことあるのかよ、はははっ」
阿諏訪「ふふふっ、あるじゃないですか」
植竹「つまり入り口は、みんながこう『ああ~』みたいな、見てる人が、聞く人が思うような分かりやすいところで」
阿諏訪「そうですね、突飛なモノから作ったりはほとんどしないですね」

バイきんぐとうしろシティ、両者のコントに対するこだわりがほぼ一致。

いろんな人たちに使い倒されたベタな設定から、新しい笑いを生み出せる力が備わっているからこそ持てるこだわり。そういう風にも思いました。ベタな設定をどう料理してオリジナリティを出しているのか?で見ていくのも、楽しみ方のひとつかもしれません。