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笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

流れ星とワム!に見るコンビの妙

ダイノジ 東京ポッド許可局 お笑い以外 オードリー

少し前に、漫才師・流れ星のインタビュー記事を読みました。
コンビならではと思われる興味深い話が出てきたりして、「コンビの関係性」について改めて考えるきっかけになりました。

流れ星が「THE MANZAI」で披露した漫才「ひじ神様」誕生秘話

流れ星、ネタ大ウケも「理由わからない」 「ひじ祭り」誕生秘話語る ニュース-ORICON STYLE-」。

流れ星は、ちゅうえい(ボケ)と瀧上伸一郎(ツッコミ)が組んだ浅井企画所属のお笑いコンビです。
ウーマンラッシュアワーが優勝した2013年の「THE MANZAI」で、彼らが披露した漫才「ひじ神様」は世間に強烈なインパクトを与えました。流れ星の代名詞となったこの漫才は、完成するまでかなり苦労したそうです。オチが決まらずに頭がおかしくなるぐらい悩んだと、ちゅうえいさんは打ち明けます。

 ちゅえいは「考えすぎて一回そこで詰まった。これもう『ひじ祭り』で終わりだよって諦めかけたときに、瀧上がパッと『ひざ祭りでいいんじゃない?』って思いついた」と当時を思い出し熱弁。それでも、パターンを考えすぎたため「正直、肘から膝になっただけであんなに笑ってもらえるか、まだ理由がわかっていない」と頭をかき、「納得できないですね」といまだ理解できていない様子だった。

このエピソードを読んで、私は「ワム!の関係性」をちょっと思い出してしまいました。
ワム!は、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーが組んでいた2人組デュオ。80年代の音楽シーンで大活躍しました。クリスマスの定番曲「ラスト・クリスマス」を作ったミュージシャンと言えば、分かる方もいるんじゃないでしょうか。

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天才ジョージ・マイケルの才能を引き出す役目を果たしていたアンドリュー・リッジリー

2014年6月26日放送の「大谷ノブ彦キキマス!」。

パーソナリティはダイノジ大谷ノブ彦。アシスタントは脊山麻理子。
毎回オススメの曲を紹介するコーナー「大谷レコメンドミュージック」。この日はワム!の「フリーダム」でした。紹介しておきながら大谷さんは、当時ちゃんとワム!を聴いていたわけではないと言います。それなのに選んだのは、ノーナ・リーヴス西寺郷太さんが書いた小説「噂のメロディ・メイカー」の面白さを伝えたかったから。

大谷「これがですね、帯に書いてるんですけど、『ワム!のゴーストライターは日本人だった!?』っていう、『ラスト・クリスマス』を手掛けたのが日本人ゴーストライターだという噂がありまして、それを徹底的に郷太さんが取材して、実は本当にそういう都市伝説があったんですよ、それを調べていくうちに、ワム!の話、もっと言っちゃうと80年代カルチャー」

さらに「ワム!とダウンタウン、ほぼ同一学年説」といった話も出てきたりして、ワム!を知らない人でも十分楽しめる小説に仕上がっている。だから「みんなに読んでもらいたい」と熱く語る大谷さん。

大谷「西寺さんの『噂のメロディ・メイカー』を読んでても思ったんですけど、ジョージ・マイケル自体は幼年期に非常に暗い性格で、でまあ太ってて、眼鏡かけてたんですけど、アンドリューっていう相棒のほうは、もう子供のときからクラスの人気者で、やたらと明るくて、で、実はアンドリューの真似をしてたんですよね、ジョージ・マイケルはアンドリューに近付こうと思ってダイエットして、『陽気なアイツみたいになりたい』つって、2人でコンビ組んで、やってたんだと」

ここで、ワム!の名曲「ラスト・クリスマス」の話に。

大谷「『ラスト・クリスマス』ができたときも、ジョージ・マイケルが家で曲を作ってたんですよ、まあコンビで言ったらネタを作っているほうですよ、ず~っとしこたまネタを作ってたら、『こんな簡単な曲、こんなのシンプルすぎて世の中に出せないんじゃないかな?』と思っていたら、横でサッカー観戦してて、サッカー観戦してたっていうのがバカじゃないですか、ふふっ、アンドリューがサッカー観ながら盛り上がってて、『何? 曲できたの? 聴かせてよ』つったら、『めちゃくちゃイイじゃん! 絶対出そうよ、絶対世に出したほうがいいよ、この曲!』って言って、出したらもう大ヒット、それが『ラスト・クリスマス』らしいんですよ、なんかコンビの妙ですよね」

アンドリューは「ラスト・クリスマス」のレコーディングには参加していません。ジョージ・マイケルがひとりで作りました。しかしアンドリューがいなければ、この名曲は世に出なかったかもしれないのです。
楽観主義で非常にポジティブなアンドリューが、天才ジョージ・マイケルの才能を引き出す役目を果たしていた。それがワム!というコンビだったそうです。

噂のメロディ・メイカー

噂のメロディ・メイカー

いつも聞いているラジオ「東京ポッド許可局」。そこで出てきた「芸人、目が怖い論」をワム!に当てはめてみると、アンドリューは「星目」で、ジョージ・マイケルは「石目」に分類できるのではないでしょうか。

「星目」は性善説、「石目」は性悪説

20014年7月25日放送のTBSラジオ「東京ポッド許可局」。

パーソナリティはマキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの3人。
今回のテーマは「芸人、目が怖い論」。
映画のキャンペーンで、あるお笑い芸人にインタビューされた話を始めるマキタスポーツさん。

マキタスポーツ「世間のパブリックイメージだと怖いと思われてない人なんですよね、ところが、俺的にはその人の目を見たときに、気持ちがもうなんかザワッとした、『あっ、怖い』とかって思ったんですよ」
サンキュータツオ「はははっ」
マキタスポーツ「でも思い返してみたら、芸人って大体あの目つきしてるなって思った、で、石の目で、僕は『石目』って言ってるんだけど」
サンキュータツオ「石目、石」
マキタスポーツ「反面、僕はアーティストとかミュージシャンとも付き合いあるじゃないですか、この人たちは、石目じゃなくて『星目』」
サンキュータツオ「うん」
マキタスポーツ「どっちかっていうとキラキラしている」

代表的な石目の芸人としてバカリズムやオードリー若林、山里亮太などの名前が挙がります。一方、芸人でありながら星目なのが狩野英孝ではないか、と。さらに、学生時代を二番手三番手として過ごし、ワンオブゼム(その他大勢)感が強いのが石目で、クラスの人気者タイプでオンリーワン(主人公)感でいっぱいなのが星目。こういった具体例や特徴を出していって、石目と星目の輪郭をハッキリさせていきます。

サンキュータツオ「もっと言うと、星目っていうのは性善説なんです」
マキタスポーツ「なるほど」
サンキュータツオ「で、石目っていうのはもう性悪説」
マキタスポーツ「うんうん、なるほど」
サンキュータツオ「人に期待していない目だと思うんですよ」
マキタスポーツ「それ分かるわ」
プチ鹿島「うん」
サンキュータツオ「人に期待してないけど、別にがっかりさせられることを非難もしないし、軽蔑もしないで、笑い飛ばすっていうのが芸人だと思うんですよ
マキタスポーツ「うんうん」

ここから「石目の自意識」について掘り下げていきます。

石目が星目に抱くコンプレックスと憧れ

サンキュータツオ「『あんなことやってるけど格好悪い』とか、『そんなの怖い』って思っている人のほうが自意識強いじゃないですか」
マキタスポーツ「うんうん」
サンキュータツオ「例えば、ナンパできる人とできない人とかそうだと思うんですけど、『アイツ、ナンパとかしてるけど格好悪いな』とか、『あんなとこ見られたらイヤだな』って思うからナンパしないわけでしょ? 多分ね」
プチ鹿島「うん」
サンキュータツオ「俺とかもやっぱナンパできない、そういうところの『別にオマエそんな特別じゃねえから、恥ずかしいところ見られたっていいじゃん!』っていう風に割り切れないところというか、むしろそういうところを笑い飛ばす側に回るっていうね」

そして、星目を「格好悪い」と言って笑い飛ばす裏側にはコンプレックスがある。サンキュータツオさんはそう分析します。

サンキュータツオ「だけど、そっち側に行きたくても行けないみたいなコンプレックスとかも感じるんですよ」
マキタスポーツ「そうだね」
プチ鹿島「絶対ある、絶対あるんです」
マキタスポーツ「俺は少なくとも、その星目に対するコンプレックスって実はすごくある、自分であるって分かってるんですよね」
プチ鹿島「うん」
サンキュータツオ「俺もやっぱり、そうだね、大学入ってもテニスサークル入れなかったし、いわゆる皆がやってることができなかった」
マキタスポーツ「うん」
サンキュータツオ「乗り切れなかったっていうのが、当時は格好悪いと思ってたけど、今はコンプレックスでしかない」

「星目になりたいけど、なれない」。そんな石目のコンプレックスを解消してくれる装置が、お笑いの世界には存在しているとマキタスポーツさんは言います。それは「ゴッドタン」の人気企画「マジ歌選手権」である、と。

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石目が星目になる言い訳を与えてくれる「マジ歌選手権」という装置

マキタスポーツ「あとね、『マジ歌選手権』っていう企画あるじゃないですか」
サンキュータツオ「あるね」
マキタスポーツ「アレ見てるとね、芸人サイドってすげえなと思うんですよ、要するに擬似的に目キラキラさせて歌うってことじゃないですか」
サンキュータツオ「そういうことだよね」
プチ鹿島「なるほど」
マキタスポーツ「ね、一周させてキラキラさせて歌うってことじゃないですか、そんなことができるわけですよ、芸人って」
プチ鹿島「どれだけやればキラキラになるか、見せることができるかっていう判断は、石目じゃなきゃできないですよね」
マキタスポーツ「そう、石目じゃないとできないんですよ」
サンキュータツオ「でも確かに、そんな、いま俺ら周りでもよく言われている『熱量』、みたいなこととかっていうのも、要は一時的に星目になること
マキタスポーツ「そう!」
サンキュータツオ「っていうことですよね、テクニックとしてボケるんじゃなくて、『星目になる』っていうことを面白がってもらう」

このトークを聞きながら、私は「オードリーの関係性」について考えていました。
若林さんは確かに石目でしょう。一方の春日さんはどっちか? 個人的には「星目にずっとなり続けている石目」だと思うんです。「マジ歌選手権」のような石目が星目になれる装置。春日さんにとってのそれは、七三の髪型であり、ピンクのベストであり、六畳一間のアパート「むつみ荘」に住むことなのではないでしょうか。