笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

「どうせ」という感情は声に出してコントロールする

「どうせ私なんか~だし」みたいなネガティブな感情を、私はよく抱いてしまいます。

それを相手に伝えることは、「たりないふたり」で言う銃口ワードなのでしょう。相手は私が銃を突きつけているように思えて、「そんなことないですよ」と答えるしかありません。なので、言わないよう心掛けています。

さらに、何か行動する前に「どうせ上手くいかない」と考えて、実行しなかったりします。実行するにしても、最悪のケースが訪れた場合に「やっぱり……でも分かっていたけどね」と平静を装う。ダメージを最小限に抑えるための保険にしているんでしょうね。

そんな傾向がある私なんですが、この「どうせ」という感情と向き合う方法について、最近ヒントをもらいました。しかも2人から。

心理カウンセラー心屋仁之助の場合

2012年11月20日放送「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)

司会はナインティナイン(岡村隆史・矢部浩之)。
解答者は心屋仁之助(心理カウンセラー)。
相談者は清水章吾・ハルマン夫妻。

芸能人夫婦の危ない秘密大流出!緊急拡大SP。20人のクセ者相談員が独自の視点でアドバイスをし、悩める芸能人を救済していくバラエティ番組です。

番組の最後に、清水章吾・ハルマン夫妻が登場。夫の清水章吾さんは俳優で、アイフルのCMでチワワを見つめる父親役を演じた、と言えば分かる方が多いかもしれませんね。妻のハルマンさんはドイツ人と日本人のハーフで、世界的に活躍する画家でもあります。

ハルマンさんを「芸能界最強モンスター鬼嫁」とテロップで紹介。自宅を取材したVTRを見ると、家事は全て夫の清水さんがこなしています。「ストレスは感じないか?」とスタッフに尋ねられて、清水さんが答えようとすると、ハルマンさんが割り込んできてバッサリ。まさにカカア天下。

このように自分の主張は聞いてもらえず、妻が強すぎて夫婦の会話が成り立たないことが、夫である清水さんの悩み。「惚れたアンタが悪い」、「胸張ってパンツ洗え」、「1年間離婚しろ」など、クセ者相談員の解答はどれだけ自分の個性を乗せるか勝負みたいなところがあって(そこを楽しむ番組なんですけど)、私はあまりピンときませんでした。が、1人だけこれはスゴイ!と唸ってしまった相談員がいます。心理カウンセラーの心屋仁之助さんです。

心屋「これ今、ご夫婦の問題で話されてるんですけど、実は全く関係のない話で、あの~、特にハルマンさんは何も悪くなくて」
岡村「おっ」
心屋「で、清水さんの心の中の問題なんですね、あの~、一体何の話をしてるのかって言うと、清水さん、これ今に始まったことじゃないですよね?他人からこういう扱いを受けるっていうこと、それから女性からこういう扱いを受けるってことは」
矢部「あっ、ハルマンさん以外に」
心屋「今に始まったことじゃないですよね?」
(言葉が出てこない清水)
心屋「子供の頃から自分の話は聞いてもらえない、遮られる……」
清水「ああっ、その通り」
心屋「そうですよね」
清水「そういうのを直したくて芸能界に入ったんです」
矢部「あらっ」

今までの相談員は、夫婦間の問題としてあれこれ言葉を尽くしてきたのに対して、全く別の視点を持ち出してきた心屋さん。スタジオの空気が一変。

心屋「ということは、その問題をまだ、ハルマンさんを使って解決しようとしている最中なんですね」
矢部「ほぉ、なるほど」
(深くうなずく清水)
心屋「だからハルマンさんの態度を作ったのは清水さんということなんですね」
清水「なるほどね」
心屋「ということは、清水さんが解決するのは、清水さんとハルマンさんの間柄ではなくて、清水さんと本当の相手がいるんです、それが多分、お母さんなんですね」

清水さんの気弱な性格は、母から受けたトラウマによるものである。

それを見抜かれてしまった清水さんは、学生時代に母子家庭であるが故に仲間外れにされて、人前でしゃべれなくなったと告白。

心屋「今、その親との関係をハルマンさんを使って修復しようと頑張ってる最中なんですよ、だから、清水さんが言わなければいけないのはハルマンさんに対して何かを言うのではなくて、清水さんの頭の中に住んでいるご両親に対してのセリフなんですね」
岡村「う~ん、深いわ」
心屋「両親から認めてもらうために、一生懸命役立つことで、自分が一生懸命働くことで、働けば認めてもらえるだろうということを繰り返したんですけど、いつまでたっても認めてもらえない」

この言葉で、清水さんが黙々と家事をこなす姿に納得がいきました。

「どうせ自分は認められる」と声に出す

頭の中のお母さんに声に出して語りかけ、そして、お母さんが笑顔になっていく姿を想像する。これを何度も繰り返すことで、親との関係を修復していけるとアドバイス。さらに、

心屋「どうせ自分は愛されるって、ちょっと言ってみてもらっていいですか?」
清水「どうせ自分は愛されない、じゃなくて?」
心屋「ええ」
(言われた通り復唱する清水)
心屋「どうせ自分は認められる」
清水「どうせ自分は認められる」
心屋「このセリフもちょっとしばらく言ってみて欲しいんですね、というのも、どうせ自分は認められない、どうせ自分は価値がないと思ってるから、やっぱり認められない、やっぱり価値がないっていう出来事が集まってくるんです
清水「はいはい」
矢部「なるほど」
心屋「ということは、どうせ自分は認められるって思ってると、『認められるというやっぱり』が今度集まってきます

「どうせ」というフレーズに清水さんが反応。

清水「『どうせ』って先生が今仰ったが、『どうせ』っていうのは年中思ってます」
心屋「そうですか」
清水「芝居でも、『あ~、どうせ俺はダメなんだ』とかね」
矢部「仕事のほうも」
清水「『この仕事はどうせダメになるな』とかね、ず~っと来たんです、それで」
矢部「あ~」

アドバイスが心臓に刺さったと語る清水さん。ナイナイも感心しきりでした。

解決!ナイナイアンサー 魔法の言葉 (日テレbooks)

解決!ナイナイアンサー 魔法の言葉 (日テレbooks)

で、ヒントをくれたもう1人は、南海キャンディーズの山里亮太さんです。

南海キャンディーズ山里亮太の場合

2012年9月19日放送「山里亮太の不毛な議論」ポッドキャスト(TBSラジオ)

パーソナリティは南海キャンディーズ山里亮太。

前向きな行動を取ろうとしても「どうせ才能ないし」と億劫になってしまう。「どうしたらいいのでしょうか?」とリスナーからメール。

山里「何かをしようとして、そういう『どうせ』とかって言い訳が出るときって、コレなんで出るか?って言うとね、人間の脳みそってそうなってんの、人間の脳みそは楽になるために作られてるから、そうなの、で、何かをやれなかった、何かを断られた、何かに失敗したってときに、脳みそが必ず最初に『どうせ』って言わせんのよ、『どうせこんなんだし』って言ったら、それを言うことで目の前で起きたミスや失敗を、こう目を伏せちゃう、で、目を伏せてるんだけど、それをあたかもその為に何かやってるって勘違いさせて、脳みそは嫌なことを忘れてくわけ、そう出来てる」

人間の脳みそは何か失敗したときに「どうせ」と考えるようになっている、と持論を展開する山里さん。

山里「で、それを回避するには、『どうせ』と言ってるとき、その自分にこう言うのよ、『あ、出てきたな、人間の本能』、こういうサボるための言い訳の本能が出てきたら、無視させてもらうよと、無視するってどういう行動か?って言ったら、その目の前にある問題に対してどうやって向き合ったらいいかとか、じゃあ、コレに近付くために、今から15分だけやってみようってのを繰り返していると、『どうせ』って言う脳みそが、コイツ『どうせ』っていうやつ出しても無駄だな……と思って、逃げ道を作るのが減ってくるのよ」

逃げようとしている自分を声に出して分析する

山里さんは「どうせ」と考えた時点でありがたいと思ったほうが良い、とリスナーに言います。なぜなら、

山里「この『どうせ』すら気付かないヤツもいる、ただ単にボーっとしちゃうヤツよりかは、『どうせ』って逃げようとしている自分を見つけたら、『あ、俺逃げようとしている』って俯瞰で立って、自分を声に出して分析するのよ、それを繰り返していくと、いつの間にか努力できるようになって、で、努力が当たり前になってくると仕事とか私生活がついてくるから、解決するっていうね、ことがありますから、是非やってみてください、ええ……アレ?ヤバイ……面白くない、面白いこと言ってない」
(作家笑)

最後に照れちゃうのが山ちゃんらしいです。

2人に共通するのは「声に出すこと」。そう私は捉えました。「たったこれだけのことをすれば全て解決するんだ」よりも、「こうしてちょっとずつ変えていくしかないんだ」と言ってくれたほうが、私は素直に受け入れられるみたいです。