笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

佐藤満春率いるサトミツ&ザ・トイレッツの不思議な縁

小学校のトイレで排泄をする行為は、未だに生徒たちのあいだでタブー視されているようです。そのせいなのでしょうか、NPO法人の日本トイレ研究所から「小学生の3人に1人は便秘状態・便秘予備軍である」という調査結果も出ています。

この健康にも影響しかねない悪しき風習を無くすべく立ち上がった人物がいます。トイレ好き芸人として有名な、どきどきキャンプの佐藤満春、通称サトミツです。

以前からこの問題に限らずトイレのイメージアップに努めてきた佐藤満春さん(以下、サトミツ)。しかしながら小学校のトイレ問題に関しては、なかなか思ったような成果が得られません。そこで一旦立ち止まって考えます。「子供たちにメッセージを届けるのに一番有効な手段は何だろうか?」と。導き出した答えは、音楽でした。

ということで、彼の活動に賛同して集まってくれたミュージシャンたちと結成したのが、サトミツ&ザ・トイレッツというバンドです。

メンバーは、次の6人。

サトミツ&ザ・トイレッツ
佐藤満春(どきどきキャンプ)
山田稔明(GOMES THE HITMAN)
伊藤俊吾(キンモクセイ)
佐々木良(キンモクセイ)
伊藤健太(元ゲントウキ)
森信行(元くるり)

集まった5人のミュージシャンの共通点は、サトミツの友人。それだけです。だからこの活動を通じて親交を深めてくれたら……そう考えていたのですが、なんと5人とも知り合いだったことが判明。しかもただの知り合いではなく、メンバー間で様々なドラマを抱えていたのです。

山田稔明(GOMES THE HITMAN)と森信行(元くるり)の出会いは1998年

2015年4月5日放送「佐藤満春in休憩室」(ラジオ日本)

パーソナリティは佐藤満春(どきどきキャンプ)。
ゲストは山田稔明(GOMES THE HITMAN)、森信行(元くるり)。

始動したばかりのサトミツ&ザ・トイレッツ。今後の活動について漠然と語り合ったあと、話題は山田さんと森さんの接点について。

山田「ちょっと今日調べてきたんですけど、くるりとGOMES THE HITMANが1回対バンしたことがあって、それが1998年でした
森「あれでしょ、渋谷の屋根裏」
山田「そうそう」
佐藤「へぇ~!」
山田「多分、僕らはデビュー前だったんだけど、くるりって何年目?」
森「僕らは1998年デビュー」
山田「じゃあ、くるりがデビューした年だ」
森「で、東京来たの1997年ぐらい……だからもう来たばっかり、ひょっとしたらその頃はまだ京都にも家があって、多分、 岸田繁は大学卒業できてなかったから」
(スタジオ笑)
森「みたいな感じやったんちゃうかな?」

当時、くるりの凄さを目の当たりにして劣等感を感じたと打ち明ける山田さん。そして素直に「もっと頑張ろう、もっと上手になりたい」と思ったそうです。

この対バン以降も森さんは、GOMES THE HITMANのベース須藤俊明さんと共に古里おさむさんのソロユニットであるウミネコサウンズのバックで演奏したり、自身が参加しているドラム11台のバンドDQSのキーボードが同じくGOMES THE HITMANの堀越和子さんだったり、なにかと縁があることを教えてくれました。

佐藤「それでこの、トイレッツのメンバーという」
山田「そう、だからちゃんとバンドをやるのは……僕はボーカリストで、そういういろんな現場に行けないんで、初めてですよ」
佐藤「あ~、そっか」
山田「16年経って」
森「ふふっ」
山田「本当、長くやってると何が起こるか」
森「ホンマね」
佐藤「トイレのバンドをやる羽目になるとは、ははははっ」

さらにキンモクセイ。実は彼らのメジャーデビューを後押しをしたのが山田さんだったのです。

山田稔明(GOMES THE HITMAN)と伊藤俊吾・佐々木良(キンモクセイ)は同じレコード会社に所属していた

2016年7月17日放送「佐藤満春in休憩室」(ラジオ日本)

パーソナリティは、どきどきキャンプ佐藤満春。

ある日、所属しているレコード会社(BMG JAPAN)から、「次に推そうと思ってるバンドのライブがあるから1回観て判断して欲しい」と依頼されたGOMES THE HITMANの山田稔明さん。

山田さんは下北沢のライブハウスに足を運び、そのバンドを観た感想をこう伝えました。「なかなか良いんじゃないですか」。つまりレコード会社の人は彼の音楽的センスを信頼していたわけです。

ところが、現実はシビアでした。そういった評価をされながらも、一方で「次にリリースするCDの売り上げがこれ以上行かなければ契約を打ち切る」とレコード会社から宣告されてしまったのです。結果、そのハードルを越えることができませんでした。

佐藤「最後(レコード会社で)『じゃあ、もうお別れですよ』みたいな話をしているときに、その控室の向こうから、ウキウキの若者の声が聞こえてくるんだって、マネージャーかなんかと話してる」

そのウキウキな若者たちの正体は、メジャーデビューが決まったばかりのキンモクセイ。

佐藤「バンドとしてもどうやっていいか分かんないってときに、もう逆に、ドア1枚隔てた向こうでは、ここから! ね! バンドマン、ミュージシャンとしてメジャーデビューするっていう寸前の若者たち、しかも自分がライブを観に行って『良いんじゃないですか』って言った若者たちのウキウキな声が聞こえてくるっていう」

このGOMES THE HITMANとキンモクセイの壮絶な出会いの場面は、山田さんの小説『猫と五つ目の季節』に詳しく書いてあります。

サトミツ&ザ・トイレッツのメンバー全員がスタジオに集まった際、山田さんが「俺がクビになって入ってきたのがコイツらなんだよ」と面白おかしく話して場を和ませてくれたそうです。

でも、そのあとの打ち上げの席で、キンモクセイの2人が本音を打ち明けます。

佐藤「皆で飯食ってるときにさ、そのメンバーのイトシュン(伊藤俊吾)とか良さんがさ、『いや、山田さんって俺たちのこと嫌いだと思ってたんですよね』って、結構その、なんて言うの……本音みたいのを話して」

もちろん山田さんは彼らのことを嫌ってなんかいません。今回こういった縁があったおかげで、その誤解が解けました。

佐藤「なんか、ここを引き合わせれたのは意味があったな、みたいな……で、イトシュン(伊藤俊吾)さんとかはソロでやってて、山田さんが今ソロでいろいろ活動してるのを参考にしたかったから、『いろいろお話、聞きたかったんですよね』みたいなことを言ってて、良かったなっていうのもあって」

最後は、元ゲントウキの伊藤健太さん。

ホワイト・アルバム

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  • アーティスト: サトミツ&ザ・トイレッツ
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  • 発売日: 2017/11/10
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伊藤健太(元ゲントウキ)はメンバー全員と共演した経験の持ち主

ベーシストの伊藤健太さんは現在フリーで活動しており、スキマスイッチのアルバムに参加するなど、数々のバンドで活躍中です。

佐藤「イトケン(伊藤健太)っていうベーシストは、山田さんとバンドとしてライブやったりしてるし、モックン(森信行)とも同じユニットでやってるし、キンモクセイの2人とも組んでる、全員と繋がってたりするのよ!」

自分の友人という手掛かりに頼って集めたにもかかわらず、メンバー間で様々な繋がりがあったことを知った今、改めてサトミツ&ザ・トイレッツというバンドの意義について考えるサトミツ。

佐藤「だからこのサトミツ&ザ・トイレッツっていうのはね、なんか出会うべくして出会ったみたいな、サトミツっていうのを介在して、いろんなドラマをね、俺がオムニバスのショートストーリーを全部繋いだんだよね、最後に、トイレで」

思うに、佐藤満春さんはそういった人たちが自然と集まってくるような魅力を持った芸人なのでしょう。