笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

明石家さんま「努力という言葉を努力不足のヤツが作りよった」

「努力すればかなう夢もある」。

これはビートたけしの言葉です。

つまり「努力すれば必ず夢はかなう」という言葉を否定しています。ただし完全に否定する表現にはなっていません。なぜでしょうか。おそらく、その一方で芸能界で夢をかなえた人は必ず努力しているからでしょう。

バラエティ番組で自分がスベッた箇所を10回見直す嗣永桃子

2013年8月12日放送「ストライクTV」(テレビ朝日)

司会は爆笑問題(田中裕二・太田光)。
アシスタントは石井寛子。
ゲストは土田晃之、嗣永桃子、菊地亜美、ダレノガレ明美、古澤未来。

「マネージャーのホンネ大暴露SP」と題して、スタジオに集まった売れっ子バラエティアイドルの実態を解き明かしていきます。

番組中のちょっとした雑談で、嗣永桃子さんがバラエティで活躍できている理由が語られていました。

土田「さっき休憩のときに太田さんと、ももち(嗣永桃子)が10回1つの番組を観る、これはすごいと」
太田「そうそう」
嗣永「(照れながら)いや……」

ここで、嗣永桃子さんと親しい菊地亜美さんが会話に参加してきます。

菊地「しかも、ももちのすごいところって、番組では、『1回なんか、許してにゃんとか言って皆が笑ってくれたら、そこをいっぱい観て、ああ、今日も可愛いなぁって思うんです~』とか番組では言ってるんですけど」
太田「うん」
菊地「逆で、ももちがスベったときを10回観るんです、ももちが」
(驚くスタジオ)
太田「あはははっ、すげ~!」
嗣永「いや、それは努力とかじゃなくて、ホント苦でもないんですよ」
(スタジオ笑)

このやりとりの直前、収録前の楽屋でフリートークの練習をしていることがバレてしまった菊地亜美さん。さんまさんの番組で恥をかくよりもそっちのほうがマシだから「苦にならない」と言い訳して、スタジオは笑いに包まれていました。

嗣永桃子さんはそのときの流れをとっさに利用して、さらに大きな笑いを起こしたのです。こういった機転が利くところも、彼女がバラエティ番組で活躍できた理由のひとつでしょう。

芸人と遊ぶときにボイスレコーダーを仕込んで話術を磨いた武井壮

2015年6月274日放送「極上空間」(BS朝日)

ゲストは武井壮、アンタッチャブル柴田。

スズキ(自動車メーカー)が提供する旅番組です。ドライブをしながら、同乗者に紹介したいお薦めスポットを目指します。

東武動物公園に向かう道中、ハンドルを握る武井さんが尋ねました。芸能界におけるキーマンは誰なのかと。すると助手席の柴田さんは「個人的には、くりぃむしちゅーの上田さんですよね」と答えます。ツッコミとして引き出しを多く用意しておくことの大切さを上田さんから学んだと言います。

そして武井さんにとってのキーマンは、中居正広さんなのだそうです。「うもれびと」という番組に呼んでもらい、散々イジってもらったおかげで、芸能界で活躍できるようになったと武井さんは言います。いわゆる武井壮の「取扱説明書」は中居さんが作ったのかもしれません。

しかし、中居さんに甘えていたら1年で芸能界から消えてしまう。そうならないために必要なのはトークスキルだと気付いた武井さんは、驚くべき行動に出ます。

武井「街で出会ったおぎやはぎさんとかさ、とんねるずさんとかさ」
柴田「おおっ」
武井「バー、俺がいっつも行ってた西麻布のバーに、よく来てた芸人さんたちがいたから」
柴田「うん」
武井「これは柴ちゃんには言ってないけど、俺はそういう人と会うとき必ずボイスレコーダー仕込んでた
柴田「マジですか!?」
武井「そう、仲間とかとしゃべって、俺が笑っちゃってるときとか、周りの人がゲラゲラ笑ってるときに、なんでそうなったのかを、ず~っと、その遊びに行ったあと」
柴田「聞くんですか?」
武井「レコーダーのやつを、イヤホンで聞いてたの」
柴田「へぇ~」
武井「それで、その人と同じしゃべり方で、同じ間で、同じことを全部トークを言えるまで、1人だけで、だから柴田と3人ぐらいで遊んでたら、柴田の役を俺がずっとやって、そのテープの内容をずっと追えるように練習したり」
柴田「へぇ~! 面白い」

柴田さんにおける上田さんのような存在が、武井さんにとってはテープレコーダーだったわけです。

また武井さんも、この話術を磨く作業を苦だとは思っていません。

武井「俺はオタクだからさ、スポーツもそうだけど、凝り性だから」
柴田「あ~、なるほど」
武井「とにかく研究して、分かんないことを研究して、できるようになるっていうのが好きなタイプだから」

冒頭のたけしさんの言葉「努力すればかなう夢もある」。

これは「世界まる見え!テレビ特捜部」のなかで紹介されていました。実はこのとき、明石家さんまさんもスタジオにいたのです。

明石家さんま ベスト・コレクション

明石家さんま ベスト・コレクション

努力という言葉は死語にしたほうがいいと語る明石家さんま

2016年4月4日放送「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)

レギュラーは所ジョージ、ビートたけし。
アシスタントは杉野真実、桝太一。
ゲストは明石家さんま。     

1000回目の放送を記念した特番で、「所・たけし・さんまの素敵な名言」というコーナーがありました。

桝「今度は、たけしさんの名言でらっしゃいます、『努力すればかなう夢もある』」
たけし「『努力すれば必ずかなう』って言う人がいるけど、そんなことは絶対ない」
所「ないね」
たけし「かなう夢はあるけど、かなわないのがほとんどなんだっていう」
所「そうだね」

さらに「努力」という言葉にも、さんまさんは言いたいことがあります。

さんま「これはもう、たけしさんらしいよね、大体『努力』も、これももう死語にしたほうが、努力って皆普通にするもんやろ、実は」
所「そうだよね」
さんま「行動やろ、人としての」
所「うん」
さんま「それを努力という言葉を、努力不足のヤツが作りよったから
桝「いやぁ、深いですね……」
さんま「いや、多分そうやねん、逃げ言葉やねん、これ」
桝「そうか、努力って、本当にしている人は別に言わない……」
さんま「言わない、言わない」

確かに嗣永桃子さんも武井壮さんも、周りは努力と捉えていても本人は当たり前の行動のように話していました。もちろんバラエティ番組なので謙遜が含まれているのかもしれませんが。

それにしても努力に対して容赦ないさんまさんの姿勢には震えました。