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笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

グレーゾーンを楽しむ姿勢

山里亮太 オードリー JUNK オールナイトニッポン 東京ポッド許可局

「キャラを演じているんでしょ?」と切り込み、「実はこういう人だ」と素を暴く。
こういった発言で爪痕を残そうとする人が最近のバラエティ番組で増えている。そんな話をよく聞きます。

キャラを暴くのが早すぎる

2014年7月16日放送の「山里亮太の不毛な議論」ポッドキャスト版。

パーソナリティは南海キャンディーズの山里亮太。
2013年「THE MANZAI」優勝でブレイクしたウーマンラッシュアワーの村本さん。「ファンに手を出す」などのゲスい行動に注目が集まり、現在は多くのバラエティ番組で活躍しています。山里さんは、そんな同期の活躍を見ていて歯がゆくなる場面があると言うのです。

山里「最近あの~、『キャラ』っていう言葉とかさ、『実は』って言うの早いよね、ウーマンの村本にもさ、よく行くんだよ、みんな、実はイイ人とか、実はマジメとか、実はゲスくないって言うけどさ、そこのメリットが見えないんだよね、そこであたふたさせたっていうさ、アレは成立するんだけど」

そして「村本さんはクズである」と改めて訴えます。

山里「それでちょっとさ、実は村本はマジメでイイ人みたいに思っているわけでしょ? そういう人たちに言いたいんだけど、あいつクズだよ、全然、うん、だからみんなね、あの~、クズじゃなく見えるっていう、あいつの手の平の上で踊ってるだけっていうことに、ちょっと気付かせたいんだよね、俺は」
(作家笑)
山里「あいつはクズです、ええ、ゲスだしファンに手出すし、ふふっ、そこらへん皆様お忘れなきよう」

クズなのはキャラで実はマジメ、そう印象付けようと振る舞っている村本さんのクズさに早く気付いて欲しい。いかにも山里さんらしい言い回しによる愛情表現ではないでしょうか。

他にも山里さんと同じようなことを言っている芸人がいます。オードリーの若林さんです。

テレビの予定調和を崩してやろうとするキャラの人が多すぎる

2014年7月19日放送の「オードリーのANN」。

パーソナリティーはオードリー。
バラエティ番組の司会を任せられる機会も増えてきた若林さん。全体を見渡す立場になって実感するようになった、ある傾向について語り始めます。

若林「なんか最近テレビも、俺分かんないけど、そいういう時期に入ってきてんのかなって思うことがあって」
春日「うん」
若林「俺が言うのも生意気だけど……う~ん、いや、絶対その事実の捏造はダメなんだけど」
春日「うん」
若林「なんか、『そこはいいじゃない』ってことを鬼の首取ったように、『いや、これウソでしょ?』って言うのって、もうちょっと、ダサくねえかなっていうか」
春日「うん」
若林「最近もう、テレビの予定調和を崩してやるっていうキャラの人が多すぎて、もう『収録始まります、3、2、1、はいスタート!』ってなったときに、『今日はナニナニのコーナーやります』って言った瞬間に、『えっ、コレ興味あるの?正直』みたいな、クククッ、もう誰かれかまわず言うから」
(スタジオ笑)
若林「もう何にも成立しない」

先ほどの山里さんは、ウーマン村本さんに対する「実は真面目でイイ人」を例に出していました。若林さんも同様に分かりやすい例を挙げます。それは、山里さんに対する「実はモテるでしょ」発言です。

若林「確かに山ちゃんのファンの人とか、すごい女性とかも、5年前に比べたらすごい増えた」
春日「あ~、まあそうだろうね」
若林「と思うんだよ、一緒に『たりないふたり』とかライブとかやってて」
春日「うんうん」
若林「ただ、いかんせん難しいのが、いわゆるその言われてたような、『山ちゃんにすぐ抱かれたい』って思うような好きになられ方は、そういうファンは多分いないんだよね、くふふっ、出待ちを見るかぎり」
春日「まあそうだろうね」
若林「本当に山ちゃんのトークとか」
春日「うん、分かる分かる」
若林「センスとか、笑いが好きなわけであって、多分いないんだよね、ヒヒヒッ」
春日「そうだろうね(キッパリ)」
若林「これが非常に難しいんだよ、モテてねえんだよ、だから多分、ははははっ!」
春日「だから~、そうね、何をもってモテてるのか?っていうところだね」
若林「そこそこそこ!」

「山里さんはモテていない」と断言したのに、本人は損していない。むしろ芸人として最高の褒め言葉になっています。もし山里さんがモテないキャラだとしても、「そこはいいじゃない」という気持ちがある若林さん。最近どっぷりハマっているプロレスでもって、次のように例えていました。

若林「これはなあ、言っちゃいけないんだけど、プロレスとして……っていう言い方もなんだけど、『モテてない』って言い方(キャラ)だとしてね、山ちゃんが」
春日「うん」
若林「それをなんか、いやその、本当にあの、ナイフ持った観客がリング上がっちゃうみたいな感じで……」

この若林さんの例えを聞いて、私は「プチ鹿島ブログ『俺のバカ』」にある記事を思い出しました。

プチ鹿島さんは、プロレスにとても詳しいオフィス北野所属のお笑い芸人です。マキタスポーツさんとサンキュータツオさんと共に「東京ポッド許可局」というユニットでも活動していて、プロレス的な見方を活かした時事ネタが得意なことから「時事芸人」なんて呼ばれたりもしています。

教養としてのプロレス (双葉新書)

教養としてのプロレス (双葉新書)

時代は「白黒はっきりつける」「グレーは許さない」ツッコミの時代

蓮舫を考えることは悦びである | プチ鹿島ブログ『俺のバカ』」。

2009年12月2日に書かれた記事の一節から。

時代は「白黒はっきりつける」「グレーは許さない」ツッコミの時代になった。あうんの呼吸で成り立つ「プロレスラーのテクニック」ではなく、少々下品でも「素人のマジ蹴り」が歓迎されるのだ。ある意味それは息苦しい時代。

今のバラエティ番組にはグレーを許さず、白黒はっきりつけたがる人が多すぎるのかもしれません。

それにしても5年前にこのような指摘をしていたプチ鹿島さんの先見性には驚きます。グレーゾーンを楽しむ遊び心、様々な角度からモノを見る「半信半疑」の姿勢を、私も見習っていきたいです。