笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

バカリズムの何気ない一言がダイノジを目覚めさせた

ある日の「バカリズムのオールナイトニッポンGOLD」。

オープニングのトークで、バカリズムが意外な芸人について語り始めます。と、名前を隠して興味を持たそうとしてもタイトルに書いているので意味ないですね。その意外な芸人とはダイノジ大谷さんです。

「大谷ノブ彦のGood Job ニッポン」に出演したと語るバカリズム

2013年12月9日放送「バカリズムのオールナイトニッポンGOLD」(ニッポン放送)

パーソナリティはバカリズム。

オープニングにて。

バカリズム「え~、先ほどね、あの~、大谷さんの番組、前の枠の番組にちょっと告知で出させていただきまして、もう久しぶりにね、大谷さんとちゃんとこう会話したというか、この『オールナイトニッポンGOLD』が始まる直前にチラッと、毎週ね、すれ違って挨拶はするんですよ、終わって帰ってくから」

一体どんな会話をしたのだろうか? そのことが気になって仕方なかったので、前の枠の番組である「大谷ノブ彦のGood Job ニッポン」のほうを先に聞くことにしました。両方とも録音しているので。

バカリズムにお礼が言いたかったダイノジ大谷

2013年12月9日放送「大谷ノブ彦のGood Job ニッポン」(ニッポン放送)

パーソナリティはダイノジ大谷ノブ彦。
アシスタントは増田みのり。

エンディングにて。

大谷「ニッポン放送『大谷ノブ彦のGood Job ニッポン』、そろそろお別れの時間になってきましたが」
増田「はい」
大谷「スタジオには、この方がいらっしゃってくれております、バカリズムさんでございます!」
バカリズム「どうも、こんばんは!バカリズムです」
増田「どうも、こんばんは~」
バカリズム「大谷さん、久しぶりです」
大谷「お久しぶりです、もう『オンエアバトル長崎大会』以来じゃないですか?」
バカリズム「あははははっ!そんなにですか!?」
大谷「はははっ、そんなことはないですけど」
増田「それは何年前ですか?」
大谷「それはず~っと前ですね~」
バカリズム「そうです」
大谷「あの頃は、泊まりとかあったんですよ」
バカリズム「ありましたね~」

コンビ結成はダイノジが1994年で、バカリズムが1995年(ウィキペディア情報)なので、ほぼ同期なんですね。

大谷「それであの~、1回お礼を言わなきゃいけないと思って」
バカリズム「何でですか?」
大谷「あの、実は『めちゃイケ』に僕ら出たときに」
バカリズム「はいはいはい」
大谷「あのとき大地(おおち)さんがパンツ一丁だったじゃないですか」
バカリズム「はい」
大谷「実は、バカリズムさん、まあ升野君って僕ら呼んでたんですけど、升野君のおかげなんです」
バカリズム「あれ、そうでしたっけ?」
大谷「僕ね、ネタ見せ行って、当時何も仕事なくて、ちょっと腐ってたんですよ、で、あの~『オモバカ』っていう夜中の番組でネタ見せ行ったときに」
バカリズム「はいはい」
大谷「もう自分ら何もないから、そのときにパッと思い付いたのが、前に大地がパンツ一丁の姿をバカリズムさんが、『これもう、R-1チャンピオンじゃないですか』って言ったんですよ
バカリズム「あはははっ」
増田「もうそれだけで?」
バカリズム「もうメッチャクチャ面白かったんですよ!」
(スタジオ笑)
バカリズム「それきっかけですか?」
大谷「そう!それで思い出して、もうバカリズムほどの天才が言うんだから間違いないなと思って」
バカリズム「くふふふっ」
大谷「『大地、パンツ一丁になってくれ』つって」
バカリズム「うわ~!すげ~嬉しい!それ」
大谷「で、本当にアレなかったら、あんときパンツ一丁提案しなかったですよ」
バカリズム「え~!」
大谷「で、大地はちょっとプライド高いんで、『ヤダ!』つって」
バカリズム「ははははっ!」
大谷「『俺、そういう笑いヤダ!』つって」
(スタジオ笑)

結果、番組スタッフにウケて「オモバカ」への出演が決定。

こうして芸人として邪魔だったプライドを捨てて目覚めたダイノジは、「めちゃイケ」新メンバーオーディションに挑戦します。もちろん大地さんはパンツ一丁で。

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「オモバカ」のダイノジを見てゲラゲラ笑っていた片岡飛鳥

2014年1月8日放送「ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)

パーソナリティはダイノジ大谷ノブ彦。
ゲストはコトブキツカサ(映画コメンテーター)。

先ほどの「オモバカ」のオーディションで受かったエピソードを話したあと、

大谷「じゃあ何組かになりましたから、これで『オモバカ』っていうトーナメント出れますってなって、何にも期待しないで夜中行ったら、あの~、出たときに俺たち、すげ~ウケちゃったの、芸人の前で」
コトブキツカサ「うんうん」
大谷「なんか多分、年数(芸歴)もあったし、悲壮感もあったの、ふふふっ、俺たちがもう本当に悲壮感すごかったの」
コトブキツカサ「うん」
大谷「なのに、なんかメチャクチャやってるから、結構若手がゲラゲラ笑ってくれて、パッと見たら横で、片岡飛鳥さんがゲラゲラ笑ってるの
コトブキツカサ「あらっ!」
大谷「アレ!?と思って、この番組、飛鳥さんがやってんだ!あの『めちゃイケ』の!と思って」
コトブキツカサ「うんうん」
大谷「したら大地が(スカした感じで)『ちょっと大谷さん、俺のファンいるよ』つって」
コトブキツカサ「ははははっ!」
大谷「『アイツ超笑うよ、俺のやることに』って」
(スタジオ笑)
大谷「大地さん、片岡飛鳥さん知らなかったの」
コトブキツカサ「ホントやめちまえって」
大谷「あはははっ」
コトブキツカサ「大地さん、もう!」

がむしゃらに笑いを取りに行く悲壮感いっぱいのダイノジが、「めちゃイケ」を手掛ける片岡飛鳥さんのハートをがっちりキャッチ。

それがどんな影響を与えたのか分かりませんが、ダイノジは「めちゃイケ」新メンバーオーディションの最終選考まで残りました。しかし、レギュラーにはなれませんでした。加えて、レギュラーになれなかった他の参加者たちには別の番組の仕事が与えられたのに、ダイノジだけ何もなかったのです。

その理由を、片岡飛鳥さんが直接楽屋まで来て伝えてくれたそうです。

片岡飛鳥「ダイノジはかわいそうだから面白い」

大谷「最後にああいう結末になったときに、飛鳥さんが言ってくれたの」
コトブキツカサ「うん」
大谷「その~、終わってから、審査員特別賞だったんです僕ら、で、僕らだけテレビのアレ(仕事)がなかったんですよ、仕事みんな振られてんのに、レギュラーはもちろん、他のみんなも『○○の番組出れます!』、『××出れます!』、で、『ダイノジさん、審査員特別賞です!』」
コトブキツカサ「ふふふっ」
大谷「『お~い!』って言って、そんときに『仕事は~!?』って、ツッコんで終わったんですよ」
コトブキツカサ「ありましたね」
大谷「で、終わってから楽屋戻ったら、飛鳥さんが居て、『これ、どう思う?』って、『こういう風にしたんだけど、最初レギュラーにしてもいいなと思ったんだけど、いろいろ考えて、これが君たちにとって絶対良いと思ったんだけど』つって、1時間その話をしてくれたの」
コトブキツカサ「へぇ~」

長い話し合いが終わり、楽屋から出て行く片岡飛鳥さん。

大谷「で、最後出るときに、飛鳥さんが『しかし、ダイノジはかわいそうなときやっぱりオモシれ~な~』って言ったの
コトブキツカサ「なるほど……」
大谷「俺は、それがもう……もうバカで本当申し訳ないけど、十何年やってて、全然知らない価値観だったの」
コトブキツカサ「うん」
大谷「かわいそうだから面白いって」

最近、大谷さんは『俺のROCK LIFE!』という本を出しました。

その冒頭で次のように書いています。

負け続けてもギブアップだけはしなかった

大谷ノブ彦『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』。

この本は、負けまくって負けまくって負けまくって、それでも唯一ギブアップだけはしなかった芸人の能書きを集めたものだ。

負けている姿さえも、ネタになって笑いになることに気付いた。それに気付いたからこそリスクを取って行けるし、ギブアップもしない。私はそうやって戦い続ける芸人が好きみたいです。