10個良いことがあっても1個嫌なことがあれば、そっちだけをチョイスして数珠に繋げてしまう。
「オードリーのオールナイトニッポン」で、自分のネガティブさをこう表現した若林さん。そして、「ただのバカなんだよ」と笑う。
現在、若林さんはオードリーがブレイクした直後の話を書いているそうです(本人曰く、仕事で書かされている)。テレビにたくさん呼ばれるようになって、芸人として売れた状態に入った時期です。なのに、辛かったことしか思い出せないと言います。しかし、そういうネガティブさはネタ作りのときに活きるのかもしれない、と。
ネガティブな芸人が面白いネタを生み出せる理由
2012年12月8日放送「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)
パーソナリティはオードリー(若林正恭・春日俊彰)。
天才と言われる芸人の特徴について。
若林「天才と言われるような人とか、ものすごい面白いネタを作り過ぎてる人……作り続けてる人って、一緒に飯食って話してると、やっぱすっごいネガティブ」
春日「へぇ~」
若林「うん、あの~、まあ……名前あんま出したくないけど、あの~天才じゃない、山ちゃん(南海キャンディーズ山里亮太)って」
春日「うんうん」
若林「まあネガティブ」
春日「あ~、ネガティブってイメージあるね」
若林「あのね、天才的なワードを20個出してても……もうすごいのよ!その20個が、けど、あんまり入らなかった(ハマらなかった)3個ぐらいを延々言ってるもん、打ち上げとかで」
春日「ほぉ」
若林「俺がア○ルにさ、漫才でアドリブでさ、『ボレーシュート!』つったら、(山里)『ああ、ゴールポストに弾かれた!』つって、飲み会でずっと(山里)『あれ、クロスバー直撃だったなぁ……』って、くふふっ」
春日「ははははっ、なるほどね」
なんてストイックな山里さん。さらに、
若林「だから、ネタかける(披露する)前とか、ネタ作ってるときに怖いから、『これ、ウケねえんじゃねえかな?』とか、『いや、これ入るかな~?』と思うと、しつこく考えるから」
春日「うんうん」
若林「ものすごい面白いネタが出来るのよ」
春日「あ~、なるほどね、そうだね」
若林「ネタを作ってるときにネガティブだから、ウケないだろうと思って」
春日「うんうんうん」
以前に放送された「おどおどオードリー」でも、同じような話題になったことがあります。
多くの芸人は人間不信である
2012年2月25日放送「おどおどオードリー」(フジテレビONE)
レギュラーはオードリー(若林正恭・春日俊彰)。
第3回から。どうしても会いたい人を呼んで話を聞く「スナックピンクベスト」。春日さんがスナックを経営するママで、若林さんが常連客という設定で、その会いたい人がお店にやってくる。
今回は若林さんのリクエストで、精神科医・名越康文先生が来店。春日ママそっちのけで、悩みを打ち明ける若林さん。
若林「自分でも悩んでるんですよ、物事を何も肯定的に捉えられなくて、ただVTR見てる番組とか、あの~良いモン食ってるのが延々流れてるだけで、なんかイジワルな気持ちになってくるんですよね」
名越「あ~、でも中学のときからそうでした?」
若林「何かに対して否定的なんですよね」
名越「なるほどね」
若林「だからすごい困ってて」
その悩みに対して名越先生は、若林さんみたいな人間が一番お笑いに行くと答えます。
若林「お笑い芸人っちゅうのは、人を笑わしたい……人たちなわけじゃないですか」
名越「うん」
若林「笑ってもらうことによって満足するわけでしょ?これ、症状で言うとどんな症状なんですか?」
名越「いや、だから人間不信ですよ」
若林「あはははっ!」
春日ママ「やだぁ」
名越「徹底して人間不信の人間が、お笑いに行く人が多いよ」
若林「(深く感心しながら)へぇ~」
名越「だから世の中で、例えば、ここの大学で面白いヤツとか、ここのクラスで面白いヤツって大概、全然面白くないでしょ?」
(若林爆笑)
名越「一番、お笑いの人から遠いんですよ、世間で言う面白いヤツって」
若林「楽しいヤツね、ノリがいいヤツとか」
名越「そう」
若林「暗い人多いもんね、芸人って」
名越「それは、お互いの人間関係の上で成り立った笑いだから、他の人にとってはシラケるんだけど」
若林「あ~」
名越「お笑いの人がなぜ万人受けするか?っていうと、『本当におかしい?今、本当におかしかった?』っていう、この疑い、疑念」
若林「へぇ~!」
名越「疑い深さ」
さらに、突っ込んで聞く若林さん。
相手を笑わせたら完全にコントロールできた証明になる
若林「人間不信っていうのは、信じられないから……自分がなんか言ったことでリアクションがあると信じれる?」
名越「笑いって、ウソの笑いかホントの笑いか、大体分かるじゃないですか、呼吸で」
若林「うんうん」
名越「だから笑ったら、『あっ、これ今本当に笑ってる』と」
若林「あ~」
名越「ところが自分のことを褒められる……普通の人だったら褒められたら、ここでエンドマークでしょ?『あ、褒められた、良かった』と」
若林「うん」
名越「でも大体、お笑いの人は、『ん?なんか裏があるな……』と」
若林「うんうんうん」
名越「『これ、褒めてるってことは、飽きたのかな?』とかね」
(若林大きくうなずく)
名越「そっちに行くから、笑わしたら完全に相手をコントロールできたっていう証明になる」
若林「確かに、いろんなリアクションで笑うって、なかなかウソつきにくいですもんね~」
名越「そう」
若林「(嬉しそうに)面白いな~!」
「スナックピンクベスト」は深い話が聞けるので、私は大好きです。最近やらないのがちょっと寂しい。
この後、名越先生によって春日さんの深層心理が丸裸にされていきます。ピンクのベストを着てないと人前に出られない理由や、独自の言葉使いをする理由など。オードリーファンならば、是非DVDでご覧になっていただきたいです。
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オードリー若林さんが天才と認める、南海キャンディーズ山里さん。そんな2人で組んだユニットが「たりないふたり」。今年の夏に中野サンプラザで、「たりふた SUMMER JAM '12」と銘打ったライブを2日間やって、大成功を収めました。
で、そのライブ直後のラジオで、山里さんは意外な感想を述べていたのです。
「たりないふたりライブ」初日はオードリー若林に完敗したと語る山里亮太
2012年8月22日放送「山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)
パーソナリティは南海キャンディーズ山里亮太。
オープニングトークにて。
山里「あのね、『たりないふたり』ってね、テレビ番組12回やって、で、幻の#13ってのが『DVD』に入ってて、まあライブはそれぐらいやってて、3年前からやってるからかなりの数やってきたんだけど、で、それを経て、最終的に俺がネタ作りにおいて、『たりないふたり』で大きく変わったことが今回あって」
番組でやっていた漫才は、2人で交互にネタを書いていたそうです。それが、
山里「真ん中ぐらいから、若林君がボケとしてクオリティが高すぎるってんで、俺が……絶対、若林君にこれは言いたくないから言わなかったんだけど、あの、芸人として若林君に負けた、ってもう認めた時期があるの、その時期からどうなるかって言うと、ネタを書くときにまず立候補しなくなるんだけど、俺が、怖くて」
結果、若林さんのボケを待つようになった、と山里さんは言います。
最初は、台本をきっちり書いてから、若林さんに渡してボケを差し込むスペースを見つけてもらっていた。それが中盤あたりから、若林さんが先にボケを考えて、そこを出発点にしてネタを構築していく形に変わった、と。
山里「これって、若林君は気付いてないんだけど、動物で言うところの、若林君におなか見せちゃってるようなもんなのよ、もうあなたに負けましたと、ボケをやっぱ……優劣って言い方分かんないけど、コンビでやっててボケを完全に任せるっていうのは、なんて言うんだろうな?ずっと組んでくコンビだったら、それはすごく当たり前のことなんだけど、こう……ユニットじゃない、派生ユニットでボケを任せるっていうのは、南海キャンディーズはオードリーに負けましたよ、って言ってるような気持ちになっちゃうの、俺の中で」
そして、テレビ放送終了後に行われた「たりないふたりライブ」。
山里「だから、その気持ちがあるから、漫才以外のとこでの、若林君に負けたくないって気持ちがすごくて、で、2日間あるんだけど、もうなんとか!若林君よりも面白い……いろんな飲み会の逃げ方とか、テレビでの立ち振る舞い方とかの技をね、出すっていうのが俺らの『たりないふたり』だから、結局やっぱり、どんなにハコ(会場)が大きくなっても俺ららしい、いつもの逃げることをやろう!と言って決めてやってたの、だからもう自分のパートに対する執着心、執念がすごくて……で!臨んだ1日目で、これね、みんな気付いたか分かんないけど、俺が完敗なのよ、1日目、しかも漫才も負けて、コーナーも俺が若林君に負けたから悔しくて」
ライブの初日が終わって行った、ちょっとした打ち上げの席。山里さんは、若林さんに完封負けしてる悔しさで居ても立ってもいられなかったと、そのときの心境を振り返っていました。周りのスタッフさんは、なんでそんなに沈んでいるのか分からなかったそうです。
私もこの日のライブを会場で観ていたんですが、「山ちゃんの完敗だった」とは微塵も感じませんでした。この放送を聴いていた若林さんもオールナイトニッポンで「そんなことなかったよ」と言い、観に来ていた春日さんも同意。多分、そう感じていたのは、山里さん本人だけではないでしょうか?
「若林に完敗した」という意外な感想を聞いたとき、ふと私の頭に浮かんだのが、先ほどの「おどおどオードリー」での名越先生の言葉です。「本当におかしかった?」という疑い深さ。この疑い深さが誰よりも過剰だから、他の人から見れば間違いなく合格点なのに、山里さんの中では全然それに達していない。だからフレーズを極限まで磨き上げる。その繰り返しによって、周りから天才と呼ばれるようになった。そんな風に私は思いました。