笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

漫才とリズムネタと手拍子

「M-1グランプリ2017」を観ました。そして存分に堪能しました。

もし「今大会で一番好きな漫才を挙げろ」と言われたら、迷うことなく、さや香の「歌のお兄さん」を選びます。

正直に言うと、漫才における歌ネタがあまり好みではありません。でも、さや香がやったのは歌ネタ。最初に歌ネタだと気付いた瞬間、不安が襲ってきました。きっと歌い方や歌詞の内容がヘンテコで、そこにツッコミを入れていくスタイルなのだろうと。

ところがこの予想は裏切られます。歌の途中で「ホンマや」「期待しとるで」などと割り込むから間延びしないし、なによりボケ側が全力で歌を肯定するではありませんか。そのあと繰り出されるハイテンションなやりとりに最後まで笑いっぱなしでした。

笑いの量だけでなく己の苦手意識を完全にひっくり返された衝撃も相まって、漫才が終わったあとの満足感は全出場者のなかでも突出していました。だから点数には多少の不満が残りましたが、でも仕方ありません。

そして、さか香のときの余韻がまだ残っていた影響もあるのか、最後の出番だったジャルジャルへの松本人志のコメントを聞いて改めて考えてしまったのです。漫才とリズムネタの境界線を。

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