小説『昭和の犬』で第150回直木賞を受賞した作家・姫野カオルコさん。受賞会見の場にジャージ姿で現れた女性、と言えばピンと来る方もいるのではないでしょうか。
そんな姫野さんが受賞後に、「ラジカントロプス2.0 文学賞メッタ斬り!SP」に出演されていました。パーソナリティを務める書評家の大森望さんと豊崎由美さんが、その名のとおり芥川賞・直木賞のノミネート作品をメッタ斬りしていく番組なのですが、ゲストである姫野さんの独特なキャラクターがとにかく際立っていました。
ラジオ愛が止まらない姫野カオルコ
2014年1月20日放送「大森望・豊崎由美のラジカントロプス2.0 文学賞メッタ斬り!SP」(ラジオ日本)
パーソナリティは大森望、豊崎由美。
聞き手は植竹公和(歌う放送作家)。
ゲストは姫野カオルコ。
先週の予想編を受けて、今週は結果編。第150回芥川賞・直木賞の受賞作品を発表したあと、姫野カオルコさん登場。
植竹「早速ですが、姫野さん」
姫野「はい」
植竹「この番組って大体、受賞された方がゲスト来て、みんな聞いてらしたんですが、聞いてくださってましたでしょうか?」
姫野「すみません、聞いたことありませんでした」
豊崎「幸いなことです」
(スタジオ笑)
姫野「理由あるんです」
植竹「うん」
姫野「なんか、豊崎さんと大森さんだから、本に関する話をされるじゃないですか」
大森「はい」
姫野「だから聞かないようにしてたんです」
大森「そうなんですね」
姫野「ラジオは大好きで、家にテレビがなくて」
植竹「ないんですよね」
姫野「うん、ラジオしか聞かないんです、すごく良いラジオ持ってるんです」
大森「ふふふふっ」
姫野「すごい良いラジオなんです、お薦めなんです」
大森「はははっ、それどんなラジオなんですか?」
姫野「ソニーの……型番号はちょっと暗唱できないんですけど、番組が全部きれいにビデオ録画みたいに」
植竹「あ~、ありますね」
大森「録音できるやつですね、はいはい」
姫野「それの一番最新のを」
大森「ラジオサーバーみたいなやつですね」
姫野「で、あの、レビューも書いたんです」
大森「あっ、製品レビューを」
ラジオ好きと聞いて、一気に親近感が。
姫野「本に関する情報は一切入れないようにしてるんですね」
豊崎「うん」
姫野「もう何年もの間、だから新聞も取らないし」
大森「はい」
姫野「あの、ラジオのニュースと、気になったニュースなどはインターネットでそこのところだけ見るっていう、新聞取ると本の広告とか入るので、見ないようにして、電車も吊り広告は見ないようにして」
豊崎「へぇ~」
大森「じゃあ書店には行かない?」
姫野「行かない」
植竹「ええ!?」
大森「全く行かないんですか?」
姫野「それはあの~、急にナントカが必要とかあるじゃないですか」
大森「うん、なるべく小説のところには近寄らないようにして」
姫野「うん、急になんかあの、急に文春に電話しなきゃってときに、電話番号が分からないときに『あれ?何番だっけ?』って、携帯もよく忘れるので」
(スタジオ笑)
姫野「本屋さんに入って、なんか裏見て」
豊崎「あっ、奥付で」
なぜそこまでして、本に関する情報をシャットアウトするのでしょうか?
物事の悪い面だけを見る性格なので情報を入れすぎると暮らしていけない
大森「影響されたくないとか、そういうことですか?」
姫野「私は気が小さいんです、だからビクビクするんです」
豊崎「うん」
姫野「だから、なんか悪いように悪いように取るので、悪いことしか考えないので、あの~、もう悪いこと見つけるの得意なんですよ」
豊崎「あ~」
姫野「親2人から仕込まれましたんで、小さいときから物事の悪い面だけを見るように」
(スタジオ笑)
大森「悪かった探しをするタイプですね」
で、その悪かった探しが、最終的に自分に向かってくると言います。
姫野「全部その粗探しが、自分に向くようになったんですね」
植竹「あららら」
姫野「だから自分に向いて、悪い人でも、例えば大犯罪者とか見ても、その人の良いところに目が行くんですよ」
大森「はいはい」
姫野「それに比べて、なんて私はダメなんだと思うんですよ」
(スタジオ驚きの声)
姫野「だから、ふふっ、そういうのを聞いたり見ると、情報入れるともう、なんか暮らしていけなくなる、だから入れないようにしてたんですよ」
したがって、今回の直木賞選考委員による選評も一切見ていない姫野さん。
親指シフト愛が止まらない姫野カオルコ
毎回恒例となっている受賞当日までのドキュメンタリーを、本人に振り返ってもらいます。ここで、会見での質疑応答が話題になると、
姫野「私はもっと親指シフトについて質問して欲しかったんですよ」
植竹「あ~!親指シフトね」
大森「だいぶ語ってましたね」
豊崎「はいはい」
植竹「富士通でしょ?アレ」
姫野「いや、富士通って限らないんです」
植竹「あっ、そうなんですか」
大森「もう離れてますからね」
姫野「版権って言うの?権利?離れちゃったんで、誰が使ってもいいんですけど、あの、だからNHKも別に撮っても(放送で使っても)よかったんですよ」
植竹「ふふふっ」
大森「まあ使われてなかったですね」
「親指シフト」とは日本語の「かな入力」を効率よく行うために考案された、キーボードのキー配列の一種です。会見翌日に収録した「王様のブランチ」のインタビューでも、姫野さんは「親指シフト」のことを熱く語ったそうなんですが、放送では全部カット。^^;
なので、その不満をこの場で解消してもらいます。
豊崎「親指シフトに対する愛があれば、もう存分に語っていただいて結構ですよ」
植竹「今日行けますから、ずっと永遠に」
豊崎「でも、親指シフトのファンの物書きって多いですよね」
植竹「多いです、椎名誠さんもそうですって」
豊崎「確か高橋源一郎さんも」
姫野「そうです、そうです」
植竹「20台買い占めたって言ってましたよ、富士通のを、ふふっ」
姫野「で、俵万智さんも」
豊崎「へぇ~」
姫野「あと、勝間和代さんも」
植竹「書きやすいんですか?小説を」
姫野「うん、日本語を書きやすいんですよ」
豊崎「あっ、そうなんですか~」
さらに、親指シフトのワープロ専用機がもたらした縁について話す姫野さん。
椎名誠に「親指シフトのワープロ専用機」を送ったら「五島列島のうどん」をもらった
姫野「親指シフトのワープロ専用機もたくさんあったんですけど、流石にもう買い占めたんですよ、私も」
植竹「あっ、やっぱり」
姫野「だけど、パソコンの、親指シフト仕様ってちゃんとあるんで」
大森「あります」
姫野「『なんだ~、買い占めることなかったのに~』って」
豊崎「ふふふっ」
姫野「流石にそれ、いらなくなってきたんですよ、場所取って、で、どうしよう?って、捨てるわけにも……」
豊崎「もったいない」
姫野「ねぇ、もったいないので、そうだ!と思って、全然私は交流なかったんですけど、椎名誠さんなら専用機のままなんじゃないか?と思って」
植竹「はい」
姫野「担当の人を通じて聞いてもらったんですよ、したら、『欲しい!欲しい!』って言われて、全部お譲りしました」
植竹「へぇ~」
豊崎「へぇ~、イイ話だ」
大森「そう、北上次郎さんもそうですね」
植竹「あっ、そうなんですか~」
姫野「で、お礼に、五島列島のおうどん頂いた」
(スタジオ笑)
豊崎「ね~、ワープロ専用機がうどんになって返ってくるっていうね」
そして、番組の後半、姫野カオルコさんの意外な事実が判明します……って、タイトルで思いっきりネタばれしていますが。
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直木賞受賞会見での姫野カオルコのジャージ姿に全く驚かなかった安住紳一郎
会見での姫野さんの「ベストジャージスト賞作家」発言が、メディアを賑わせていたことに触れて、
大森「もうテレビではすごい大反響で使われてましたね、あそこね、あちこちで、ベストジャージスト賞の話が」
姫野「私ひとつも見てないんですよ、だから、自分が報道された姿を、本当にひとつも見てないの」
大森「うん、でもそのあと、いろんな人からジャージの話ばっかり聞かれたりしません?」
植竹「あはははっ」
姫野「どうも、ジャージの話ばかりが聞かれるのはなぜだろう?的な」
姫野「今日の朝、『(安住紳一郎の)日曜天国』を……あっ、すみません」
植竹「いえいえ、どうぞ」
大森「全然大丈夫ですよ」
姫野「他局の、朝のラジオを聞いてたら、担当の安住さんもそれを」
大森「うん」
姫野「(安住)『ジャージのことが話題になっているようですが、私は姫野さんがジャージをいつも着てるのは、前からハガキをいただいたりして』……あっ、投稿してたのね」
(スタジオ笑)
植竹「え~!ハガキ職人!?ちょっと待ってください」
姫野「で、(安住)『知ってたので、全然驚きませんでした』って」
植竹「へぇ~!」
ラジオを聞くだけでなく、まさか投稿もしていたとは!姫野カオルコさんに対して、さらに親近感がわきました。