笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

小さな実績を積み重ねないとやりがいのある仕事は回ってこない

マイナビ新書から発売された『「自己啓発」は私を啓発しない』を読みました。

これを読んだのは、著者の齊藤正明さんと常見陽平さんの対談記事がきっかけでした。

目の前の仕事をしっかりこなすことが大事

齊藤正明氏&常見陽平氏に聞くビジネスサバイバル術 (2) 出世する人・しない人の違い | マイナビニュース

「出世するためには、どうしたらいいでしょうか?」という質問に対して、

齊藤氏「目の前の仕事をしっかりこなすことが、じつは近道なのかもしれません。いまはたとえ、会社で飼っている魚のエサやりなどの雑用しか与えられなかったとしても、それをしっかりこなすことが大事。エサのやり方を工夫したり、エサそのものを見直したりして、上司に言われたことに対し、100%以上の成果を出すことを目指します。そうすれば信頼度が増しますし、必ず次のステップに進めるようになりますから」


常見氏「与えられたことに対し、少しでもいいから成果を上乗せできるといいですよね。やり方を変えてみたり、新しいトライができるか考えてみたり。目の前の課題から仕事を創造できるといいと思います」


齊藤氏「出世するには、自分からのし上がるというイメージを抱く方もいるかもしれませんが、地道にコツコツやることに尽きると思います。山を下から築くようなイメージですね。どんなことでもコツコツとこなしていけば、『こいつ、便利だな』と思われて引き上げてもらいやすくなります」

この記事を見つける数日前、「1つ1つの仕事を丁寧に全力でこなせ」というエントリーをブログに書きました。その中でさまぁ~ずの大竹さんが言っていた内容と、対談記事から引用した部分が繋がったのです。私の中で。ここで一気に興味が沸きました。

1つ頼まれたら2つやる

さらに、「アメトーーク」や「ロンドンハーツ」などのプロデューサーをしている加地倫三さんの著書『たくらむ技術』。この本の中で、加地さんは次のように書いています。

加地倫三『たくらむ技術』(新潮文庫)

P144から。あらゆる雑用をこなさないといけないAD。例えば「コーラ買ってきて」と頼まれたが、店になかった場合、

そのとき、気が利くADならば、その人がいつも飲むものを覚えていて、それを代わりに買ってきたり、別の炭酸飲料を選んだりするかもしれません。
さらに気が配れるADならば、ポテトチップスか何かお菓子の1つも添えて出すことでしょう。「1つ頼まれたら2つやる」です。
ところが気の利かないADだと、「コーラがありませんでした」と何も買わずに戻ってくる。「コーラを頼んだのは喉が渇いているからだ。それなら何か別の飲み物を買ってこよう」という想像力が働かないのです。

これまた対談記事の内容とリンク。AD時代の加地さんは、こういうことを積み重ねて仕事を取りに行ったと言います。ちなみに「1つ頼まれたら2つやる」は、就職したときに母親から受けたアドバイスなんだそうです。

『「自己啓発」は私を啓発しない』を読んで。

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自己啓発セミナーや教材につぎ込んだ額は600万以上

前半は、就職したバイオ企業にいた上司のパワハラが原因で、自己啓発にハマり、悩み続ける日々。後半は、人材ビジネスへの転職を目指しながら、講師として起業し、成功をつかむまでの苦難の道のり。

ざっくり言うとこんな感じで、著者の齊藤さんが体験してきたことがリアルに書かれていました。自己啓発セミナーや教材につぎ込んだ額は、なんと600万以上。波乱万丈な人生を送ってきた者の物語として、面白かったです。

新しいセミナーに向かうところで、「なんでまた行っちゃうの!」とツッコミを入れたり、教材を売る側の追いつめ方を見て、「自分もその場しのぎでサインしちゃうかも……」と同情したり。失敗してもそこから学び、人生を押し進めていく齊藤さんの姿に感情移入しながら読みました。

本書の中で一番印象に残ったのは、転職活動をしている時期の話です。

技術職から人材ビジネスへ、異業種への転職ということもあってか、なかなか上手く行きません。そんなとき、転職成功セミナーを受講する齊藤さん。私は、「またセミナーかよ!」とさまぁ~ず三村さんばりにツッコミを入れつつ、読み進めていくと、そのセミナーの講師からこんな言葉が。

自分を安く売ってくださいね

ペンが止まる受講者たち。極端な例と前置きした上で、お茶くみを頼まれた場合について、講師はこう語ります。

齊藤正明『「自己啓発」は私を啓発しない』(マイナビ新書)

P85から。

「でも、そのお茶くみのようなどうでもいい仕事でも、『この人は濃いのが好きだよな』『この人は熱いのが好きだよな』という相手の好みを覚えて、それに合ったお茶を出せると、周りの人が、『この子は使えるな』と思ってくれるんです」
「それによって、人手が足りないとき、『あの子に手伝ってもらおう』と、ちょっとだけやりがいがある仕事が回ってきて……というのを繰り返すことで、徐々に活躍の場が広がるんです」

この話が聞けただけでも十分に元は取れた、無駄じゃなかったと言う齊藤さん。そういう気配りややる気に応えて、チャンスを与えようとする上司がいるかどうか?それも大事だなって、ちょっと思いましたね。

最後のほうで、齊藤さんはこんな風に書いています。

寿司屋で安さを売りにして成功している店もあれば、食材にこだわり高級路線で成功している店もある。社会に出たら答えは無限にあるのだから、この本を読んでも全部に同意する必要はなく、時にはツッコミを入れながら、自分なりの正解を紡ぎだしてくれれば嬉しい、と。

余談ですが、齊藤さんが講師としてパッとしない時期が続いたとき、あるアドバイスのおかげでスランプから抜け出します。そこから一気に人気講師へと上り詰めていくのですが、その過程がどうもオードリーと重なってしまって。「マグロ漁船=ズレ漫才」みたいな。