笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

オードリー春日のピンクベストは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が由来

オードリー若林はエレファントカシマシが好き」の続きです。

本題である舞台「芸人交換日記」の話へ。脚本・演出を鈴木おさむ、主役をオードリー若林が務めます。

『クイック・ジャパン』で初の表紙を飾るオードリー若林

2011年6月17日放送「よんぱち 48hours」(TOKYO FM)

パーソナリティは鈴木おさむ。
アシスタントは柴田幸子。
ゲストはオードリー若林正恭。

おそらく目の前に置いてある『クイック・ジャパン』を手に取って、会話が始まります。

鈴木「あっ、表紙になってますね」
若林「そうなんですよ~、初表紙が田中君(田中圭)と、っていう」
(スタジオ笑)
鈴木「これね、俺、本当申し訳ないな~って思って」
若林「いやいや」
鈴木「初表紙が春日君とじゃなくて田中圭君と、黄色のね、イエローハーツ(小説『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』に登場する11年目の売れない漫才コンビ)として出て、特集してもらってるんですけど、『芸人交換日記』」
若林「はい」
鈴木「ね、僕が書いた小説をずっと『クイック・ジャパン』で連載してまして、で、それを8月5日の金曜日から7日の日曜日まで、本当短い期間なんですけど東京グローブ座にて、上演させていただきます、僕が作・演出をしますけども、まあその……芸人のね、売れないときのもがき」
若林「はい」
鈴木「スゴイじゃないですか、コンプレックスとか嫉妬とか、それを僕なりに表現したんですけども」

東京公演のチケットを申し込むも落選してしまいました。

小説の『芸人交換日記』を読んだ若林さん。オードリーも8年ぐらいくすぶり続けた遅咲きコンビであるため、共感できる部分が沢山あると言います。

オードリーはすぐに売れたと世間は思っている

若林「スピードワゴンの小沢さんも『芸人交換日記』読んでて、話をしたんですよ」
鈴木「うん」
若林「僕は感動したと思ってたんですよ、ずっと、でも小沢さんが『もう胸が苦しくて読み進められなかった』って言ってて」
鈴木「あ~」
若林「あっ!そっちだな~って思いましたね、苦しいんですよね、同じ経験を……」
鈴木「苦しいでしょうね」
若林「はい、イエローハーツがしているから」
鈴木「だから読む人によって全然違うと思うんですね、芸人さんも、あんま苦労してない人もいるじゃない」
若林「そうなんですよね」
鈴木「早売れしている人は多分、結構なんか全然違う感じで読むだろうし」
若林「はい」
鈴木「この舞台をやるっていろんな人に、いろんな芸人に、やっぱり若林君が田中(漫才コンビ「イエローハーツ」のボケ)っていう役をやるのが、みんなピッタリだと言うのね」
若林「ははははっ」

その理由を説明します。

鈴木「なんでかって言うと、世の中の人、意外と知らないですけど、それこそオードリーのこと早売れだと思ってるんですよ、みんな」
若林「あっ、そうなんですかね~」
鈴木「うん、やっぱりあの~、M-1ね、2008年」
若林「はい」
鈴木「準優勝、パーン!って来て売れた、あのとき何年目ですか?」
若林「あれがちょうど、8年目ですね……9年目?」
鈴木「でしょ」
若林「はい」
鈴木「多分イメージ的に、あれ実は3、4年なんじゃないかってイメージだと思うんですよ」
若林「そうなんですかね」
鈴木「うん、だから、いろんな芸人さんは、オードリーがどれだけくすぶっていたかってのを知ってるから」

オードリーがどれだけ下積みを重ねてきたか、お笑いファンなら知っている人が大半なはず。でも普段、お笑いに接することのない層にとっては、鈴木おさむさんが言ったような感覚なのでしょう。お笑いにどっぷり浸かっていても、世間はこう見ている、という客観的な視点を持つことは作家として大事なのかもしれません。

このあとオードリーがくすぶっていた頃の話になり、春日さんのキャラクター遍歴で盛り上がります。

オードリーがくすぶっていた頃に日記を書いていた若林

アフロから始まり、若林さんがお笑いを辞めると切り出した翌日、それを阻止すべく春日さんが編み出した緑のモヒカンキャラ。しかもその日の仕事はラジオのみ。さらに、まちゃまちゃさんとカブっていること、自分の中にパンクの要素がないということで、1日でこのキャラを捨てた春日さん。^^;

そんな紆余曲折ありながら、ついに、あのピンクベストにたどり着いたのでした。

鈴木「いろいろ経て、(春日さんが)今のキャラクターに落ち着いたのはどのぐらいなんですか?」
若林「始めたのが2005年だったんですよ、だから5年目、6年目のときですね、あのピンクのベスト、当時はピンクの長袖だったんですけど、ふふっ」
鈴木「ははははっ」
若林「ベストにして考えるんですよ!売れないと、ベストじゃ駄目なんじゃないかとか、はははっ」
鈴木「ははははっ」
若林「関係ないんですけどね」
鈴木「えっ、ピンクベストは、自分のアイデアですか?」
若林「僕がパッケージというか、パッと見て、いつも同じ服のほうがいいと思って、それこそザキヤマさんが白いネクタイをしているっていうのが、もう若手がみんな考えるんですよ、そういうこと」
鈴木「うんうん、そうだよね」
若林「ザキヤマさんがあの服にしてから……って、みんなホント考えるんですよ!朝まで」
鈴木「うんうん」
若林「で、なんだろう?と思って、たまたま『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見てて、あのお父さんの大学時代、ピンクのベストをカレッジで着てて、あれを見て『コレだ!!』と思って
(スタジオ笑)
鈴木「すごいところから閃きますね」
若林「不潔だとダメだろうな~って思ってて、で、春日に着せたら、コレがピッタリだっていうのがありましたね」

まさか春日さんのピンクベストを考えたのが、若林さんだったとは。

若林「でもちょうど僕、2006年から2010年まで、5年間日記を書いてたんですよ、ずっと」
鈴木「ほぉ」
若林「で、なんかこれ、『芸人交換日記』やるからって引っ張り出して、2006年のM-1の、2回戦で落ちたときの日記とかひどかったですね、へへへっ」
鈴木「ふふふっ、どんなこと書いてんの?」
若林「何にもやる気しなくて、で、次の日のライブでも、『もう何にもやる気がしないで、ウケる気もしないし、お客さんの笑顔も見たくない』みたいなこと書いてあって」
鈴木「へ~」
若林「とにかく筆圧がないんですよね」
鈴木「ははははっ、だからね~、やっぱね、M-1で落ちて次の年、1年間の芸人の腐り方たるや、世の中の人はもっと知った方がいいですね」
若林「ははははっ」

そろそろ終わりに近付いたところで、本題の舞台「芸人交換日記」の話へ。

クイック・ジャパン96

クイック・ジャパン96

  • 作者: 若林正恭,田中圭,中村珍,ジョージ朝倉,土屋太鳳,石川直樹,鈴木おさむ,ももいろクローバー,百田夏菜子,諫山創,新井英樹,井上智徳,高良健吾,吉木りさ
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2011/06/11
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オードリー若林にとって初舞台となる「芸人交換日記」

鈴木「舞台初めてじゃないですか?まあその、お芝居ね」
若林「はい」
鈴木「多分コレ、セリフとかめっちゃ多いと思うんですけど、セリフ覚えはいいんですか?」
若林「そう……でも漫才は自分で作るんであれなんですけど、台本だとどうなるのかなっていう、初挑戦なんで」

続いて、舞台での心配事を聞きます。

鈴木「舞台を前に、心配なことはなんですか?」
若林「そうですね~、僕らがライブとかやると、お客さんは笑うかどうかっていう1個の感情しかないので」
鈴木「あ~、そっか、そっか」
若林「俺が真面目なセリフを訥々と語ったりするときに、客席からクスクス笑い声が上がったりしたら、俺心折れちゃうんですけど」
鈴木「ははははっ」
若林「『それってどうなんですか?』って、バナナマンさんとかに相談したら、『いや、大丈夫だよ』と、『導入から、ず~っと見てる流れがあるから』つって、言ったんですけど」
鈴木「うん」

バナナマンからアドバイスをもらったものの、心配の種は尽きない若林さん。

若林「僕の声って、なんか自分で、バカみたいな声だなと思うんですよね、テレビなんか見てると」
鈴木「ははははっ」
若林「だからその、真面目に絶叫するときとか……」
鈴木「大丈夫、大丈夫、それはね、絶対大丈夫ですよ、その辺はもう僕もプロですから」
若林「あっ、ホントですか」
鈴木「やっぱ芸人さんの舞台やって、こう……やっぱね、一番はあの~、コントも僕同じだと思ってるんですけど」
若林「はい」
鈴木「『ウケなくてもいい、スベるな』と思うわけ、いっつも
(若林笑)
鈴木「それが大事」
若林「ああ」
鈴木「『ウケなくてもいい、スベるな』って言うのは、だから、舞台でちょっと笑いとか取りに行くときもあるじゃない」
若林「はい、はい」
鈴木「そういうときは、スベると、その感覚は残るわけ」
若林「ふふっ、なるほど~」
鈴木「それって意外とね、みんな気付いてないテクニックだと思ってるんですけどね」
若林「そっか~、『ずっと笑いがないと、スベっているような気分になるんですかね?』とか聞いたりしたら、『そうでもないよ』って」
鈴木「それはないですよ、やっぱりね、何百人の目が、その人たちのお話を見てるってスゴイことだと思いますよ」

この舞台のチケット、かなりの競争率だったそうです。果たして舞台「芸人交換日記」にあのピンクのニクイ奴が舞台に舞い降りる……なんていうサプライズはあるのでしょうか?

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