笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

「トリビアの泉」が生まれるまでの経緯

TOKYO FM「よんぱち 48hours」に、吉田正樹さんがゲスト出演した放送を聞きました。
「よんぱち 48hours」は金曜日の13:00〜16:30、半蔵門アースギャラリーから生放送されているラジオ番組です。パーソナリティは放送作家の鈴木おさむさん、柴田幸子さん。

「夢で逢えたら」を見て、それに憧れてテレビの仕事を目指した鈴木おさむさん。「笑う犬」の大ファンだったと語る柴田幸子さん。このラジオだからこそ引き出せたであろう興味深い話の連続でした。途中、ユニコーンの曲「スターな男」を挟み、最後は部下を育てることについて話題が及びます。

人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ ~『笑う犬』プロデューサーの履歴書~

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部下を育てる方法

2010年8月6日放送のTOKYO FM「よんぱち 48hours」。

ゲストに吉田正樹。パーソナリティは鈴木おさむ、柴田幸子。

鈴木「あの〜、この本(『人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ』)ですごい興味深いのは、吉田さんが駆け抜けていくとこも面白いんだけど、今度、吉田さんが上司になっていって、部下がいっぱい出来てくるところからもまた面白いんですけど」
柴田「はい」
鈴木「吉田さん〜、そのね、ご自身で部長とかいっぱいやってて、人にチャンスを与えないと、新しい番組が今度できなくなってくる訳じゃないですか、それって、どうやって人を育てるんですか?」
吉田「人は育てるんじゃない、勝手に育つんですよ、それにはまず邪魔しないこと、ね」
鈴木「(深く納得する様に)う〜ん」
吉田「大体ほら、下にやきもち焼いちゃうから、なんか俺のときはこうだった、とか言うでしょ?言っちゃいけない、もう素晴らしいなと褒めなきゃいけない」
鈴木「う〜ん」
吉田「それと、無理やりやっぱ・・・、自分もそうだったけど、バッターボックスに立たないことにはダメだから、まず立て!と、どんどん立たせる」
鈴木「うん」
吉田「もう一個は、どんどん失敗させる」
柴田「はい」

部下を育てるにはどんどんバッターボックスに立たせて失敗を経験させること、と語る吉田正樹さん。

深夜番組の存在意義

吉田「え〜、まずは本当の勝負の前に、いっぱい失敗してないとダメ、テレビは昔はそりゃ深夜番組がいっぱいやってた、誰も見てない時間に、自由に失敗できてた」
鈴木「(さらに深く納得するように)う〜ん」
柴田「はぁ〜」
吉田「タレントもそうなんですよ、あの〜いろんな・・・、でも、う〜んなんて言うの、稽古場でやってもしようがないね」
鈴木「うん」
吉田「やっぱり番組になって、でも、たいした視聴率取ってないから失敗できるわけ、それで本当に健康的にゴールデン上がったときには、ここは勝負だ!と、今まで考えてきたこと全部入れる、みんなそういうところがあると思いますよ」

その失敗の経験を積める最適な場所が深夜番組であると。ここで放送作家で現場をよく知っている鈴木おさむさん、具体的に質問します。

鈴木「でもその、例えばじゃあ、企画書持ってくるじゃないですか、下の子が」
吉田「うん」
鈴木「で、あんまり良くない・・・、まあ、やろう!って決まるとするじゃないですか、例えば」
吉田「うん」
鈴木「でも吉田さんが、もっとこうしたら良い、もっとこうなったら良いのになって、自分の、演出家としての気持ちも出てくるときあるじゃないですか、結構それ、悩むところだと思うんですけど、ね」

その状況にぴったり当てはまる番組が過去にあった、と語り始める吉田正樹さん。

最初は「へぇ〜」しかなかった

吉田「それはね、よく『トリビアの泉』の例であるんですけど、『トリビアの泉』って、僕あの〜、こういう手帳、フジテレビの手帳があってね、この裏に、え〜と、フジテレビのバラエティセンターの人、入社年次と年齢が書いてある」
鈴木「うん」
柴田「はい」
吉田「で、そうすると、あっ、コイツとコイツ同期だなとか、この期はコイツはもうゴールデンでやってるけど、コイツはまだやってないとか、よく分かるわけ」
鈴木「うん」
吉田「そうすると時々、空いてる人がいるわけですよ、ちょっと出世が遅れてたり」
鈴木「チャンスを貰えなかったり」
吉田「うん、貰えなかったり、あるいはその〜、早く抜擢して、この2人いいな〜と、で、『トリビアの泉』は塩谷(塩谷亮)君と木村(木村剛)君って人が、え〜、むちゃくちゃつまんない企画書を持ってきた、それは(ビートルズ)『Hey Jude』の音楽が流れて、『へぇ〜15』って」
鈴木「ふっふっふっふっ」
吉田「『へぇ〜』と思うことがあったら、へぇ〜15♪って、曲が流れる」
柴田「はっはっはっはっ」
吉田「そういう企画書なんですよ」
鈴木「はい、はい」

企画書がよくなかった番組として、「トリビアの泉」が出てきたのは意外でした。

バッターボックスに立つ若者をしっかりサポート

吉田「バカじゃないの?って思うんだけど、で、この2人はその、きくち伸って人が居ましてね、あの〜、音組の、音楽プロデューサーの」
鈴木「はいはいはい、『堂本兄弟』とかやってますね」
吉田「この人の部下で、もう全部いろんなことやった、便利に使われていろんなことやってきた、で、これ、もみくちゃになる前になんかやらせたほうがいいなと思って、とにかくこの2人にやってもらいたい」
鈴木「うん」
吉田「で、港(港浩一)さんっていう上司にも、この2人がやるってことが重要だから、企画どうでもいい、それで枠を進めて下さい、って言って」
鈴木「ふ〜ん」
吉田「『へぇ〜15』・・・、ん〜、まあ、『へぇ〜』っていうものを集める、まあそれだけは分かったから」
鈴木「ふふふっ」
吉田「これを小松(小松純也)と、それから宮道治朗というね、え〜部下にですね、家庭教師をやってくれと、でもお前らの企画じゃない、コイツらの企画をどう変えるか、ってのをやってくれと」
鈴木「う〜ん」
吉田「と言うと、いつの間にかあの〜、『トリビア』というもの、『トリビア』っていう言葉は無かった、『へぇ〜』しか無かった」
鈴木「うん」
吉田「ね、『トリビア』というコンセプトが生まれて、それであの〜、あのロケのスタイルですよね、最初にもう答え言っちゃって、では見てみよう、あのスタイル、あと『泉』というなんか、ものが」
鈴木「う〜ん」
吉田「それは家庭教師たちが多分考えたと思うんだけど、でも若者が、自分が成功したっていうことが大事なんですよね」

バッターボックスに向かう若者に代打を出して「よ〜く見とけ」とするのでなく、試合前に十分な準備とサポートを行っておいて、後は何も言わずバッターボックスへ送り出す、これが吉田正樹流の部下育成方法なんですね。

今のテレビは余裕がなく失敗をしづらい

とは言え、今のテレビがそれをなかなか許さない状況であることも事実。

鈴木「ふ〜ん、やっぱそう!思うんですよね、チャンスをあげて、バッターボックスに立たせるって言って、今、失敗するって言いましたけど、失敗することを上司も怖がるじゃないですか」
吉田「うん」
鈴木「そこですよね、やっぱね」
吉田「それはやっぱりテレビなり、日本に余裕があったんだよね」
鈴木「なるほど、今は失敗できないですもんね、ふふっ」
吉田「今はもうテレビだけじゃなくて、日本中が、それはいくら儲かるのか?と聞いてしまうから」
(鈴木おさむ笑)
吉田「それはいかがなものかと」
鈴木「ふっふっふっ」

フジテレビには、ここで語られたような育成のやり方がお笑い芸人にも存在していると思うんです。
「冗談画報」で種をまき、「夢で逢えたら」で花を咲かせ、「やるならやらねば」と「ごっつええ感じ」で羽ばたく。「新しい波」から「とぶくすり」が生まれ、「めちゃモテ」を経て、「めちゃイケ」というゴールデン番組にまでに成長する。また、「爆笑レッドカーペット」でチャンスを掴んだ人達が、「爆笑レッドシアター」へと昇格する。こういった要素がフジテレビの強みなのではないかな?と、お話から感じました。

今回初めて「よんぱち 48hours」を聞いたのですが、この日の前と後ろのゲストが放送作家・中野俊成さんとビビる大木。公式サイトから過去のゲストを見てみると結構、FMらしからぬ(偏見ごめんなさい)お笑い好きには笑みがこぼれてしまうラインナップ。
金曜の午後はコーヒーでも飲みながら、TOKYO FMに耳を傾けてゆっくりしたいですね〜。でもこれは願望でありまして、現実は仕事なので録音しておいてから後で聞く、ってことになりますが。^^;

天才ではない君たちは「ひらめき」に頼るな、「論理」を手に進め。

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