笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

一人でもカンニング竹山という名前で出たい

日常生活でのモヤモヤが溜まると、昔のお笑い番組を見てやり過ごすことが多いです。今がその状態のようで、2005年10月1日に放送された「お笑い密着テレビ〜ウラ登龍門 やっぱり“ネタ”が好き〜」をまた見ていました。
この番組はタイトル通り、お笑い芸人に密着するドキュメント番組です。南海キャンディーズ、ペナルティ、カンニング竹山、パッション屋良に密着。彼らが見せる熱い部分がお笑い好きには堪りませんでしたが、パッション屋良さんが、映画「ピーナッツ」編集中のウッチャンを訪問しています。だから録画していたのでした。
で、今回はパッションさんでなくて、相方の中島さんが闘病中のために一人で活動しているカンニング竹山さんの密着を紹介したいです。5年後の今見返すと、そのときには無かった感情が湧き上がってきます。

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一人は良いと品川庄司に語るカンニング竹山

2005年10月1日放送の「お笑い密着テレビ〜ウラ登龍門 やっぱり“ネタ”が好き〜」。

密着の初日、「ココリコミラクルタイプ」の収録に臨むカンニング竹山。出演者である品川庄司の楽屋に顔を出します。

品川「竹山さんね、今ずっと一人だから」
竹山「一人いいよ」
庄司「いいですか?」
品川「『一人いいよ』って言っちゃっていいんですか?」
竹山「いや、まあ、また二人に戻るけど、まあ戻るけども、ずっと二人でやってきて一人になると」
品川「ちょっとね〜」
竹山「何が一番いいかって、楽屋が一番いいよ」
品川「いやそうでしょう、俺、楽屋が一番嫌ですもん」
竹山「あっはっはっはっ」
庄司「たまに、だからあの〜、ひと部屋ずつ取ってもらったりするときあるんですけど、そんときはいいですね、やっぱ(竹山に微笑む)」
竹山「あぁ〜、やっぱりね、ふふっ」

品川庄司の前では、笑顔で一人(ピン)は良いと語る。

竹山「『ミラクルタイプ』ってこないだ出してもらったけども、え、今日ってどういう風にすればいいの?」
庄司「あっはっはっはっ!」
品川「そんなの得意でしょう」
庄司「そうそうそう」
品川「キレればいいじゃん、キレれば」
竹山「キレりゃいいって、出来ないディレクターみたいに言うな、くふっふっふっ」

30分間も楽屋に居座り続けて、品川庄司を凹ませたと喜ぶ。それまで寝ていたのに、相手してあげる品川庄司も優しいです。

楽屋が一人だとしゃべるヤツが居ない

翌日、レギュラーになったばかりの「探偵!ナイトスクープ」収録のため、大阪にいたカンニング竹山。番組の収録が終わると、すぐにタクシーに乗り込み、東京へとんぼ返り。窓の外から松村邦洋が手を振って見送る姿。
そのタクシー内で同行スタッフから尋ねられます。

同行スタッフ「一日が過ぎるの早いですね?」
竹山「ん〜、一日、そうですね、早いですけどね、だからあんまり先のことは考えないようにしてるんですよね、先のことを考えると、もうやりたくなくなるんで・・・、一個一個その場に行って、戦ってみるっていうことですね」
同行スタッフ「ピン(一人)で寂しいときはありますか?」
竹山「あ〜、夜はね、あんま関係ないんですけど、別に中島と二人で飲みに行ったりしなかったんで、やっぱ、昼の現場とかは、ずっと楽屋とかが二人だったわけですよ、それがやっぱりあの〜、一人になるんで、実際あの〜、正直快適さもあるんですよ、楽屋を一人で使えるっていう、でもなんかあったときにしゃべるヤツが居ないということが出てきたりで」

タクシー内で素に戻ったカンニング竹山は、楽屋が一人の寂しさもあると。品川庄司の楽屋に顔を出したのもそういうことでしょうね。

相方中島の復帰について尋ねられるカンニング竹山

その翌日、今度は湘南の平塚競輪場で「カンニング竹山杯」に参加。あいにくの雨模様でしたが、お客さんを喜ばせようとサービス精神旺盛な姿がそこにはありました。運動の疲れもそのままに東京に戻り、ラジオの収録へ。仕事が終わって、ラブカップル中田喜之とさくらんぼブービー鍛冶輝光と飲んでるカンニング竹山。
その帰りのタクシーで、同行スタッフから相方の復帰について質問が出ます。

同行スタッフ「中島さんの復帰は?」
竹山「中島ね〜、(息を深く吸い込み)復活をして欲しいんですけど〜、やっぱ病気が病気なんで、で、ほとんどね、病状は治ってるんですけど、現状的には、年末はちょっと、まあ無理かもしんないけど、来年の春ぐらいまでには・・・、いけるかなっていう感じですね」

言葉の選択にとても慎重。

竹山「なんかよく言われるのが、『このままピンになる気なんだろう』とか、そういうことを、一人でやってるんで言われるんですけども、そういうことはね、本当に全く思ってないですね、あくまでもカンニングという・・・、名前でやりたいんで、一人で出てるときも『カンニング竹山』という名前で出たいっていうのが、ありますね」

一人でも「カンニング竹山」として活動することは、相方の復帰を願う強い気持ちの現れだったのです。
リアルタイムで見ていたときは、とにかく二人で漫才をやっている姿を再び!そう願うのみでした。

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これで思い出したのが、その年の元旦に放送された「登龍門F 若手芸人ネタ祭り!元旦生ライブSP」。ネタをするカンニング竹山さんの姿です。

生放送で一人でネタをしなければならないカンニング竹山

2005年1月1日放送の「登龍門F 若手芸人ネタ祭り!元旦生ライブSP」。

一人でネタをしなければならない状況で登場すると、右側にはディスプレイが置かれてあり、それには相方中島さんの宣材写真が映し出されています。

竹山「(ひとつ出番前の安田大サーカスが残した床の紙ふぶきを見て)汚いわ!散らかりすぎやろ!」
(お客さん笑)
竹山「え〜、一人でやってきました、え〜、うちの相方がこのクッソ忙しい年末と年始のね、一番稼ぎ時に、倒れました」
(お客さん笑いと動揺の反応が半々)
竹山「死ね!」
(お客さん笑)
竹山「(右のディスプレイを指差し)写真なんか出さんでいい、コイツ!コイツはなんか、病院かなんかでのんびり寝とるんよ!俺が稼いだ金で」
(お客さん笑)
竹山「(カンペを見て)3分前とか出すな!俺3分もいらんわ!」
(お客さん爆笑)
竹山「言っとくぞ、1分半で終わるぞ!ほんでお前ら客に言っとくぞ!テレビなんか全部無視してな、客イジりバンバンするからな」
(お客さん「えー」)
竹山「『えー』とか言うな!お前ら以上に一人で立っとる俺の方が辛いわ!」

真骨頂であるキレ芸を炸裂させて笑いを取り、ネタの後半、おなじみの客イジりへ。

竹山「テレビ消せ!テレビ消してもう寝ろ!」
(お客さん笑)
竹山「俺面白かったか?お前、俺面白かったか?(前列の女性の目の前にサンパチマイクを向ける)面白かったか!」
(お客さん笑)
竹山「竹山さん面白いって言え、竹山さん面白いって」
女性「竹山さん面白い」
竹山「ウソつけ!」
(お客さん爆笑)
竹山「お前は、面白かったか?(別の女性にマイクを向けて)竹山さん愛してるって言え、竹山さん愛してるって言え!」
女性「竹山さん愛してる」
竹山「俺はそれ以上に愛してる!」
(お客さん爆笑&拍手)
竹山「アホか!」

ここでネタ終了かと思いきや、今度はマイクを自分に向けて、カメラ目線で叫ぶ。

竹山「おい!おい、相方!早く帰って来い・・・」
(スタジオ一瞬の静寂)
竹山「(顔をくしゃくしゃにして)もうダメだ!」
(お客さん笑)

ここでネタが終わり、泣き顔のアップになってCMへ突入。
正直、カンニング竹山さんはピンでも十分やっていけるでしょう。しかし、このときのカメラ目線での叫びを聞いて、本人は二人で一緒に漫才をしたいんだという気持ちが、強烈に伝わってきました。
また、ネタの中で「お笑いブームが終わって俺もテレビから消えるぞ!」と吼えていましたが、こんなお笑い芸人がそう簡単に消えるわけがありません。

クイック・ジャパン 70

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