笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

博多華丸・大吉が東京のテレビ番組に馴染めなかった理由

この前の「アメトーク」の芸人ドラフト会議。もし私が選ぶとしたら絶対に外せないのは、博多華丸・大吉ですね。一人だけと言われたらしぶしぶ博多大吉を選びます。
今回は私にそう思わせた「ヨシモト∞」での博多華丸・大吉のトークから書き起こしてみます。

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ノーひな壇芸人

2006年5月30日配信の「ヨシモト∞」。オリエンタルラジオ司会「教えて先輩!」。

芸暦15年以上もあって福岡でも数多くの番組に出演してきた博多華丸・大吉は、満を持して東京に進出しました。しかし、そんな彼らが東京のテレビ番組に出てもどう立ち振る舞っていいのか分からないと、後輩である司会のオリエンタルラジオに語りかけます。

中田「福岡でやってらして、東京の攻め方ってね、なんかこう違います?」
華丸「あ〜、攻めるというよりもなるべく当たり障り無く」
(会場笑)
華丸「波風を立てずに」
中田「大人ですね〜」
大吉「そうそうそう、迷惑をかけずに」
中田「波風を立てないっていうのが、ひとつあるんですか」
大吉「目標は平均点だから」
中田「あっはっはっはっ、平均を目指す?」
大吉「100点なんかいらないんだから、大体80点ぐらいをね」
華丸「そうそう、前に出ない博多華丸・大吉です」
藤森「はっはっはっはっ」
大吉「よ〜心配のメールとかね、地元から来るんよ」
中田「あります?」
大吉「みんな、やっぱわーっとね、東京に来て一番初めての仕事なんよ、そういう芸人さんたくさんと一緒に出る」
華丸「ひな壇みたいなね」
大吉「15年やってても1回もやったこと無いから」
中田「あ〜あ〜」
藤森「ほうほう」
大吉「で、こういう歳やし分からんのよ、出方とか、もう反射神経とかもだいぶ鈍っておりますんで」
(会場笑)
藤森「身体的にも」
中田「20人ぐらい若手わーっと並んでて、MCの方がなんか言ったら(右手を前に出して椅子から立ち上がり)『ちょっと!ちょっと!ちょっと!』って言う」
大吉「早いやん!今のもう」
藤森「今のですか?」
中田「これが僕じゃなかったらどうなんですか?」
大吉「まず1回、こうね、後ろに反動をつけてから行かないと」
(会場爆笑)
中田「よい、しょ、って行くんですか?」
大吉「そうそうそう」
中田「その間に周りは『ちょっと!ちょっと!』って行っているわけですね」
大吉「こう行きながら他の人たちに、『前すみません』みたいな感じで行くからものすごい出遅れる」
(会場爆笑)
藤森「ちょっと遠慮しちゃったりして」
中田「あ、大変ですね」
大吉「ものすごい難しい」

東京のテレビ番組は本番中に私語が多い

藤森「東京来てからそういう戦いもあると」
大吉「で、本番中しゃべるやろ、あの人たちって」
中田「しゃべる?」
大吉「聞こえるように、コーナー見ながら」
藤森「あ〜、はいはいはい」
大吉「文句言ったりするやん」
中田「ほぉほぉ」
大吉「こないだ初めて笑金(笑いの金メダル)に出させてもらったときに、これ言うけど、HGとホリ君が対決して負けた方がものすごいお金を払うっていう企画で、どっち選ぶっていう感じで、僕の横にたむけんがおったんよ」
藤森「はい」
大吉「で、獅子舞男がさ、収録中にずっと、『でも払えるだけ稼いでるってことやな〜』みたいな」
(会場笑)
大吉「言うから、気になってしょうがない!どうしたらいいの、この獅子舞!」
中田「あ、なるほど〜」
藤森「本番中にこそっと言うの全部本音ですからね」
大吉「あれは、難しいな〜って思いましたよ」
中田「そういう番組っていうか、わーっと集まった中での動きというか」
大吉「動き方も分からんし、横は横でそんなこと言いよんし、結構言うやろ、みんな」
華丸「言うね、私語が多い」
大吉「私語が多いから」
(会場爆笑)
中田「私語が多い?ふぁっはっはっはっ」

福岡のテレビ番組の作り方

大吉「福岡で似たような番組しよるときに、私語とか一切禁止やったから」
中田「そうなんですか?」
大吉「僕たちアドリブ禁止の福岡吉本やったから」
中田「え、え、そういうことってあるんですか?」
大吉「番組に関してはね、今は違うけど」
中田「あ、台本がきっちりあって」
大吉「昔はこういう生番組も一応やってたんよ、僕らがメインであと福岡吉本の芸人5人ぐらいで、8人ぐらいでやっとたけど」
藤森「はいはい」
大吉「本番が日曜日やったら、金曜日から打ち合わせ行って」
中田「(驚いた様子で)金曜から?」
大吉「で、何しゃべるかスタッフの皆さんと一緒に考えて、で、大体たたき台みたいのを作って」
華丸「まあそうですね」
大吉「で、日曜日の朝、本番の5、6時間前に来て、1回みんなでやって」
華丸「思い出してね、金曜日のことを」
大吉「で、スタッフさんの前でおんなじことやって、カメラマンさんの前でもおんなじことやって、で、カメラマンさんがカメラ持ってようやくカメリハ」
(会場から驚きの声)
藤森「えー!そんな段取りあるんですか?」
中田「うわー!」
大吉「で、手直しやって本番」
藤森「じゃあ、アドリブでなんかやったら怒られてたんですか?」
大吉「いやもう、決まっているからね」
中田「カメラ撮れねえじゃねえかよってことですか」
華丸「そうそうそう」
大吉「技術的な問題なんよ、それ」
藤森「へ〜」

スイッチャーさんはカメラマンの定年間近の人の職だった

大吉「今は違うけど、昔このスイッチャーさんっていうね、この画面がどんどん切り替わる」
藤森「ふんふんふん」
大吉「それを福岡の局は、カメラマンの定年間近の人がやれる仕事だったんよ」
中田「最後の職だったわけですね」
大吉「最後の最後ご苦労様でしたで、スイッチャーさんになれるみたいなシステムやったんで、まあ言ったら結構お年を召した方なんで、ついていけんとよ」
中田「(深く納得するように)はぁ〜」
大吉「だからちゃんと紙に書いてあるとおりにボタンを押すみたいな感じやから」
中田「うわ〜、(お客さんに向かって)この話めちゃめちゃ面白いよ!この話、聞けないよ!ほんとに!超面白いじゃないですか」
大吉「だから公開でやったから、違うタイミングでボケとか行くやん?」
中田「はいはい、行きますね」
大吉「行きたいけど、行ったら行ったで、もちろんカメラには映ってないし、お客さん笑うし芸人としては満足やけど、本番終了後死ぬほど怒られる」
藤森「はっはっはっはっ」
中田「うわ〜、そうなんすね〜」
大吉「なんだったんだ、金曜日からの話はみたいな」
華丸「まあ、そりゃそうやね、金曜日からやっとうわけやからね」
藤森「だから、ちょっと東京で環境が変わって、戸惑うこともあると」
大吉「そうそう」
中田「そうですよね〜」
華丸「リハ無しが多い、リハーサル無し」
大吉「これもそうやんね、それが信じられんとよ」
中田「ぶっつけでね」
大吉「そういう体(てい)でやることはあったけど、ひゃーとか言いながら何日も前から知ってたとかいうのはある」
中田「あ〜、はいはいはい」
藤森「うわ〜、それは知らなかったですね〜」
華丸「まだツッコミはいいよ、ボケよ!おんなじことばっかりやるのよ」
中田「あ〜、それってテンション的なもんどうなんですか?」
華丸「それもそうやし、(大吉を指しながら)『これ、あの話しよる』みたいな顔しとるんよ」
大吉「ふっふっふっふっ」
藤森「ここで来るぞ、ここで来るぞ、みたいな」
華丸「『またこの話、こう来てこうやろ』みたいな」
大吉「うっふっふっ」
華丸「って思ってしまうんよ!」
中田「まあそうですよね」
華丸「お互いそうやけど」
大吉「でも金曜から計算すると、もう十何回目のおんなじ話」
華丸「これから入りますよ〜みたいな」
藤森「はぁ〜それはきついですわ」
中田「うわー!」
大吉「今はだいぶ違ってますんで、ご安心ください」
中田「これ貴重な話でしたね〜」

この話に対するオリエンタルラジオ中田の異様なほどの食いつき具合に、私も共感しまくりでした。アドリブ禁止なのは、放送禁止用語とかの問題ではなく技術的なものだったとは。これとは全く逆なのが特にアメトークでしょうね。決められたこと以外のこと、芸人が勝手なアドリブを入れても辻さんがきっちりカメラに捕らえてくれるというね。^^;

この「ヨシモト∞」は基本的に若手ばかりだったんで、たまにこうして博多華丸・大吉が来ると、経験値にトーク力、どんなお客さんでも掴む幅の広さにもう心打たれっぱなしでした。さびしい客席でもそこに居る客が手を叩いて笑っている姿を見たとき、これが本物のお笑い芸人なんだと実感しました。