笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

ツッコミがいない漫談は漫才と違って遠いところまで行ける

お笑いの基本は、ボケとツッコミです。

だから漫才やコントをやる芸人はコンビが多いわけです。そんな当たり前のことを考えるきっかけとなったのが、「内村てらす」の解散特集でした。

コンビを解散してツッコミの重要性に気付いた元巨匠・岡野

2017年6月22日放送「内村てらす」(日本テレビ)

司会は内村光良。
アシスタントは小熊美香。
ゲストは元シンクロック(木尾陽平・吉田結衣)、元巨匠の岡野陽一、元弾丸ジャッキーのオラキオ、平成ノブシコブシ(吉村崇・徳井健太)。

今回のテーマは「最高の解散」。コンビを解散してまだ日が浅い芸人たちが、解散の原因やその後の環境の変化について語り合います。

岡野さんは、巨匠というコンビで「キングオブコント」に2年連続で決勝に進出しました。そんな輝かしい実績があるにもかかわらず、2016年1月に解散。理由は、相方の本田さんが料理人になりたいからでした。

2回目の「キングオブコント」決勝進出が決まったとき、本田さんの気持ちはすでに料理に傾いていたので、「何で決まっちゃったんだろう……」という複雑な心境だったそうです。

そして巨匠は解散し、本田さんは料理人、岡野さんはピン芸人として、それぞれの道を歩み始めます。

内村「コンビでまたやろうとは思わないの? ピンで行こうと思ってんの?」
岡野「そうですね、ピンで行けたらやりたいなと思ったんですけど」
内村「うん」
岡野「なんか変なネタがけっこう多くて、それで、ピンでそのままやってみたんですけど、なんか……奇人が3~4分出てきて、4分経つと去っていくだけのネタみたいになって」
(スタジオ笑)
徳井「ツッコミがいないからね」
岡野「そうなんです、そうなんです」
内村「ツッコミって大事なんだなって分かるんだね
岡野「めちゃめちゃ思いました!」
内村「その人が巻き込まれるから、面白いんであって」

コンビ解散がもたらす人間模様よりも、ツッコミ不在による苦悩のほうが強く印象に残っているのは、翌週の放送でも同じ悩みを抱えていた芸人が登場したからかもしれません。

コンビを解散してとにかく明るくなった、とにかく明るい安村

2017年6月29日放送「内村てらす」(日本テレビ)

メンバーは先週と同じ。

先週に引き続き「最高の解散」がテーマということで、とにかく明るい安村さんがコメントしていました。スタジオにいる解散したばかりの芸人たちを勇気づけるために。

安村さんは、元々アームストロングというコンビで活動していました。相方とは幼なじみで、テレビの露出もそれなりにありましたが、徐々に関係性が悪化。相方が無理難題を押し付けてくる。安村さんはその仕返しとして相方をスベらせようとする。その積み重ねで2人の仲がどんどん悪くなっていき、14年目にしてコンビ解散に至ったそうです。

安村「解散ってマイナスなイメージしかないし、僕もなかったんですけど、実際自分がしてみると、こんなに素晴らしいものなんだ、解散は、めちゃくちゃ明るいです、だから今、本当にとにかく明るいです」

しかし、解散による苦労もあったと打ち明けます。

安村「コンビで14年やってて、いきなりピンネタやり始めたんで、ツッコミがないっていうのが、どんだけ大変なことなんだろうっていうのをすごい実感しましたね、全くウケなかったんですよ、ネタが、最初は」

安村さんの言葉に聞き入る岡野さん。

安村「それが一番つらいですけども、一時(いっとき)、一瞬だけなんですよ、つらいのは、今まで培ってきたものがゼロになるのが怖いから解散しない、っていうので悩んでんだったら、ちょっともったいないなと思いますね」

その一方で、ピン芸人をツッコミから解放された自由な存在として羨ましく思う芸人もいます。

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街裏ぴんくに嫉妬するAマッソ

2017年7月12日放送「冗談手帖」(BSフジ)

司会は鈴木おさむ。
アシスタントは曽田茉莉江。
ゲストは街裏ぴんく。

次世代を担う若手芸人を発掘していくお笑い番組です。

今回のゲストは、街裏ぴんくさん。芸歴10年目で、「架空の話をもとにした漫談で、ネタの初めから終わりまでボケっぱなしという漫才の形式とは全く違うスタイル」が特徴のピン芸人です。

彼のネタ作りにスタッフが密着します。するとラスタ原宿で開催されている芸人合同ライブに、Aマッソの姿がありました。実はAマッソは以前にこの番組で、「嫉妬するほど面白かった芸人」として街裏ぴんくさんの名前を挙げていたのです。改めて、その理由を尋ねます。

加納「すごい褒め言葉ですけど、『何言うてんねん!』っていうのを、ずっと言ってるじゃないですか」
スタッフ「あ~」
加納「ちょっとはね、やっぱ3分ネタでも、10秒ぐらいは何言うてるか分かるところが普通の人やったらあるんですよ」
街裏ぴんく「はははっ」
加納「でも、ず~っと、だからすごい嫉妬するんですよ、漫才っていうのは、ツッコミがおる時点で、ちょっと常識人が1人混じってしまってて」
スタッフ「はい」
加納「で、漫談っていうのはどこまでも行けるんですよ、そんな遠いところまで行けるんやっていうね、いつも悔しくて」

下手に街裏ぴんくさんをテレビのネタ番組に呼ぶと、本人を傷つけてしまうかもしれない。なぜならネタ時間が短いから。遠くにたどり着く前にタイムオーバーとなって、世間から誤った評価をされてしまいかねない。

その可能性を危惧する鈴木さんは、初期のバカリズムのように、「テレビに出るよりもまずライブの動員を増やす」方向で頑張ってみたらどうかとアドバイスしていました。