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笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

「ネタ帳」という言葉を初めて放送で使ったビートたけし

ベテランの芸人が今もなおトップを走り続けている秘訣。
それは、「準備を怠らないこと」ではないでしょうか。

日記からネタ用メモを番組ごとに作っている笑福亭鶴瓶

2005年12月18日放送「笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ」。

パーソナリティは笑福亭鶴瓶。ゲストはナインティナイン岡村隆史。
鶴瓶さんを見習って日記をつけ始めた岡村さん。しかし、その日記から全然エピソードが生まれないと嘆きます。もしかしたら鶴瓶さんの話は実際の出来事ではなく、ネタ(創作)ではないか?
そんな疑問を抱く岡村さんに対して、鶴瓶さんは無実を証明すべくカバンから日記を取り出します。

鶴瓶「ちょっと、ちょっとあの、俺のバッグ持ってきてくれ」
岡村「あっ……やっぱり毎日つけてはります?」
鶴瓶「毎日つけます、毎日つけますというか、これは日記ですからね」
岡村「これはでも、財産ですよね」
鶴瓶「財産っていうか、こんなん……」
岡村「いくつのときから、つけてはります?」
鶴瓶「俺はだから20歳のときからですよ」
岡村「ほら、やっぱ遅すぎたよ」
鶴瓶「いや、遅すぎることあらへんがな、そんなもんは別に、人それぞれですからね」
岡村「いやホンマ、そんなんね、どっかでそんなん書くの格好悪いとか思ってましてん、ちょっと尖っている時代、20歳ぐらいのとき」

取り出した日記をパラパラめくっていると、小さなメモが出てきました。鶴瓶さんの説明によると、トーク番組で使えそうなネタがいくつか書いてあって、ゲストが困らないようにそれをポケットに忍ばせておくのだそうです。鶴瓶さんは小さなメモを見つめながら、さまぁ~ず三村さんの人柄がうかがえるエピソードを語り始めます。

鶴瓶「不思議なことやね、これおかしかったで、こういう小さなメモ持って、そやけど『鶴の間』行くときに、なんにも相手がね、ネタなかったらアカンからこんなんしようと思って、持ってたわけよ」
岡村「はい」
鶴瓶「それでこうやって入れて、『あっ、コレとコレとコレ、もしなかったらコレ行こう』とか思ってて、『コレとコレ出そう』とか思って、スーツのポケットの中に入れてたんや」
岡村「ほぉ~」
鶴瓶「それ借り物(衣装)やん、スーツ、俺はちょっと痩せたやんか、三村は太りよったんや、そのスーツがね、三村のとこに行ったんや、さまぁ~ずの」
岡村「くふふっ、三村さんのスーツやったんですか?」
鶴瓶「いや、あの~、だから借り物(衣装)やんか」
岡村「ああっ、はいはい」
鶴瓶「ある日、三村が違うところでそのスーツを着たわけや」
岡村「はい、なるほど」
鶴瓶「ほんで、ふとポケットに手を突っ込んだら、なんかネタみたいなんがあるねん」
岡村「はははっ、なんか恥ずかしいですね、他の人に見られるの」
鶴瓶「そうそう、で、ふと見たら、なんかネタが書いて羅列してるわけ、その中のひとつに、俺のテレビ観て笑ったやつがあったんやて、『コレ……鶴瓶さんのや』と」

このあと三村さんが取った行動について。

鶴瓶「ほんで、そのメモを……アイツはいいヤツやねぇ、スーッと隠して持ってくれてて」
岡村「へぇ~」
鶴瓶「2週間後に会ったときに、俺の『いいとも!』の楽屋の前にチョロチョロと来て、俺のスタッフにも見せたらアカンと思ったんやろうね」
岡村「誰にも見せんように」
鶴瓶「ええヤツやがな~、ほんで『ちょっとちょっと……』と呼ぶから『何?』言うて、『コレもしかして……』って言うから、『あっ、コレ俺のや、俺のや』、俺は別にそんなん平気やから、全然恥ずかしないねん」
岡村「ちゃんとネタとして書いてるんですか? 箇条書きなんですか?」
鶴瓶「そうそうそう、例えば『きらきらアフロ』でも、こんなんやで(岡村にメモを見せている模様)」
岡村「(そのメモを見て)あ~、すごいなぁ、これやっぱり……ベテランでもやってんねんもんな~」
鶴瓶「いやいや、やってる言うてもね、沈没してまうがな、そんなもん、こんなこと言うてもアレやけど」
岡村「だから、こんなん若手がやってないということ事態がアカンことやねんわ、今日勉強になるわ!」
鶴瓶「いや、『勉強になるわ!』やあらへんがな、ふふふっ」

ところで、フリートーク用のメモと言えば、高田文夫さんが話していた「ビートたけしのオールナイトニッポン」のエピソードを思い出します。

渡る世間はシャレばかり―96~04大衆芸能日記 (笑芸人叢書)

渡る世間はシャレばかり―96~04大衆芸能日記 (笑芸人叢書)

「ビートたけしのオールナイトニッポン」に存在したトーク内容をびっちり書いたノート

2014年10月20日放送の「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」。

パーソナリティは高田文夫。アシスタントは松本明子。ゲストはナインティナイン岡村隆史。
今年の秋に「ナインティナインのANN」が終了。その後、岡村さんだけ残って「ナインティナイン岡村隆史のANN」として再スタートしました。やはり20年以上も相方と一緒にラジオをやってきたので、1人でしゃべる不安を口にします。

高田「10月からいよいよ1人になってね、どう調子は?」
岡村「いや、そうですね~」
高田「どんな感じよ? だって今まで要するに20年間さ、2人でしゃべってたのよ」
松本「矢部さんと、相方と一緒に」
岡村「やっぱ相槌をね、打ってもらえないというのがあって」
高田「間が埋められないもんな」
岡村「だからすぐに僕がイメージしたのは、たけしさんのオールナイトやから、いつもずっと付いてくれてはる作家さんに、『高田先生を意識してくれ』と」

作家も長年の癖があるから、いきなりスタンスを変えてリアクションを取るのが難しいそうです。「ビートたけしのANN」では、作家の高田文夫さんとの掛け合いが魅力でもありました。でも、最初の頃は一切リアクションせずに筆談でやりとりしていたと言います。

高田「たけしさんの場合は、最初ディレクターとかプロデューサーから言われたのは、『たけしさん、ラジオというものは……』ってちょっと言われてさ」
岡村「はいはい」
高田「あの、『リスナーとしゃべり手のもんだから、直接語りかけて下さい、リスナーに』って」
岡村「うんうん」
高田「だからたけちゃん、1本目、2本目、俺はさ、筆談だよ、『次、何行こう』とか、『次、この話しましょう』とか」
岡村「はいはい」
高田「しかし、どうも間がつかめない、たけしさんも、したら段々俺もリアクション取るようにして、ちょっと笑い声とか出ちゃう、ついつい、それでもうさ、書くより笑ったり言ったほうが早いじゃん、『次このコーナー行こう』とか」
岡村「なるほど」
高田「そうなってたのよ、したら(たけしさんも)しゃべり易くなって、どんどん」
岡村「だから今の作家さんも筆談っていうか、なんかあったらパッて書きはるんですけど」
高田「そうなの、本来はそれなんだよね」

1人になった対策として、フリートークの内容をノートに書き留めるようになった岡村さん。

岡村「僕もだから今まではね、ラジオでしゃべるのも、なんかこう……ノートに書いてとか、そんなんするの格好悪いと思ってたんですけど」
高田「うんうん」
岡村「1人になってから、ちゃんとノートに書いて、ここに置いてるんです」
高田「偉いねぇ」
松本「真面目」
岡村「20年間やったことないんです」
高田「あ~、そうかぁ」
岡村「でも、たけしさん、やってはったんでしょ?」
高田「それさ、初日からびっくりしたのがさ、『たけしさん、何そのノートは?』って」
松本「え~」
高田「初日のときにさ、びっちり書いてあんのよ」
岡村「ほら」
高田「で、『(そのノートは)何?』つったら、そのとき、たけしさんが初めてラジオで『ネタ帳』つったの、それから、みんなが今は『ネタ帳、ネタ帳』って普通に使うじゃん」
松本「ええ」
高田「最初に、初めて放送で言ったの、『ネタ帳』って言葉をね、全部書いてたの、それに」

ラジオ用の「ネタ帳」を作って準備を怠らない岡村さんの姿勢に、松本明子さんは「ちゃんとしてる」と感心します。

岡村「あのねぇ、やっぱり……なんて言うんですかね、トップ取る人はちゃんとそういうことしてんねんやなって、やっぱり思って」
高田「してますよ」
岡村「どっかでそういうのすんの格好悪い、『ええやんけ!』って思ってる自分がいたのを反省してるんです、今」
高田「そうなんだよ、トップ取る人はみんなそうなんだよ、こないだテレビ観ててびっくりした、所ジョージが、所さんがさ」
岡村「はい」
高田「『台本とか読まないで本番やるんでしょ?』って質問されてたの」

高田文夫さんが観ていたテレビは「ナカイの窓」でしょう。

ファモーソ・ダイアリー3 (NEKO MOOK 1726)

ファモーソ・ダイアリー3 (NEKO MOOK 1726)

所ジョージの仕事のこだわり「カンペは一切見ない」

2014年10月8日放送の「ナカイの窓」大物司会者SP延長戦。

MCは中居正広。ゲストMCは山里亮太。
ゲストは所ジョージ、ヒロミ、田中裕二(爆笑問題)、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)。
ゴールデン特番で放送できなかったトークをランキング形式で紹介していきます。そのランキングの中に「カンペは一切見ない! 所ジョージ 仕事へのこだわり」というトピックがありました。

所さんのレギュラー番組の継続年数を見てみると、「所さんの目がテン」が25年、「笑ってコラえて」も25年、「世界まる見え!テレビ特捜部」でも23年です。日本テレビだけで3つも長寿番組を抱えている。まさにトップに君臨する大物司会者。そんな所さんが、今のバラエティ番組では欠かせない存在であるカンペ(カメラの背後からスタッフが掲げるカンニングペーパー)は必要ないと明言するのです。

所「カンペみたいのを今は皆さん見てやるけど、まあ見ないね」
中居「あ~」
所「だからなんか新番組始まるとか、なんかスペシャルあるときも『カンペはいらないから』って」
山里「(体をのけ反らせ)え~」

当たり前のように語る所さんに、ほかの出演者は呆気にとられます。

所「それはね、茶の間に、こうカメラに目線が外れるのが、もうちょっと失礼かなと思ってる」
中居「はぁ~」
田中「信じられない」

そうするためには台本をちゃんと覚えていないとできない芸当です。

田中「いわゆるその番組上、必要なことはカンペで出してくれるから」
中居「うん、そうだよね、所さんは(台本を)入れてくるんだ?」
所「入れてくるっていうか、まあ……」
中居「ある程度の」
所「ある程度の流れはね」
中居「へぇ~」

所さんは「ある程度の流れは」とぼやかしていましたが、つまりは番組を進行していく上でカンペが一切必要ない程度まで、台本を読み込んで来ているわけです。高田文夫さんも、「家で3回はシミュレーションしている」と先ほどのラジオで推測していました。
ベテランの芸人は準備を怠らない。そして、それを当然のように淡々とこなす。だからこそトップを走り続けることができるのでしょう。