笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

映画史・時代劇研究家の春日太一にとって『ロッキー』は人生を変えてくれた映画

今、春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』を読んでいます。

この本を手に取ったのは、だいぶ前に「ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン」で大谷さんが絶賛していたから。3月に入って、ようやく部屋の隅に積んであった本が全部読み終わったので(と言っても、たいした数じゃないですが)、職場から近い八重洲ブックセンターに寄って『あかんやつら』を購入。残り少ない著者サイン本を入手することができました。

私は時代劇に疎い人間です。それなのに、とても面白い。偶然にも「あかんやつら」を読み始めた頃に、大谷さんのもうひとつのラジオ番組「Good Job ニッポン」に春日太一さんがゲスト出演されていました。

映画史・時代劇研究家の春日太一はハロプロの℃-uteが好き

2014年3月6日放送「大谷ノブ彦のGood Job ニッポン」(ニッポン放送)

パーソナリティはダイノジ大谷ノブ彦。
アシスタントは増田みのり。
ゲストは春日太一。

まずはゲストのプロフィールを紹介から。

大谷「じゃあ増田さん、プロフィールをお願いします」
増田「はい、改めまして、春日太一さんは1977年東京都のお生まれ、映画史・時代劇研究家です、なんですが、今入ってきて、まず一番最初に大谷さんと話したのは℃-ute(キュート)の話」
(スタジオ笑)
増田「アイドルもお好きということですね」

時代劇と℃-ute。好きなジャンルとして共存するのが不思議でならない増田アナ。^^;

増田「そしてね、今は、映画史や時代劇に関する本も多数書かれていらっしゃいます、この番組でもお話いただきました『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』ですとか、『時代劇は死なず!』」
大谷「名作ですね」
増田「『天才 勝新太郎』」
大谷「これ最高面白いですよ、『天才 勝新太郎』」
増田「など、他にも週刊文春、週刊ポスト、時代劇専門チャンネルガイド、京都新聞で連載を持たれています」
大谷「連載持ってんな~!」
春日「月に多分、13ぐらい締め切りがありますからね」
大谷「あ~、そうなんすか」
春日「2日にいっぺんぐらい締め切りがあるという、訳の分かんない状態ですね」
増田「うわ~」
大谷「大変だ~」

現在、多忙を極める春日太一さん。

しかし、時代劇研究家として活動を始めたばかりの頃は全くチャンスをもらえずに苦しんだと言います。そして、その状況を変えるきっかけとなったのが、ある映画との出会いでした。

映画『ロッキー』でフルラウンド戦い抜くことを学んだ

「我が青春の1本」と呼べる映画をゲストに紹介してもらうコーナーで、春日太一さんが挙げた映画は『ロッキー』。

大谷「どこが青春の1本だったんですか?」
春日「これですね、特に青春というか、今の時代劇研究家の春日太一の第一歩を作ってくれたようなところがあって、僕ホントね、人生全て途中でなんでも投げ出してきたんですよ」
増田「え?」
春日「もうなんにも上手く行かなくて、それこそね、受験やってる最中にもね、途中でイヤになって帰るぐらい」
増田「へぇ~」
春日「どうしようもなかったんですけど、で、ロッキーって見ていくと結局、何があってもフルラウンド俺が……同じような感じですね、僕と、そういう意味では」
大谷「うん」
春日「何やってもダメなヤツが、チャンスもらってフルラウンド戦い抜くぞ、っていう話で」

より具体的な話に。

春日「最初に、時代劇研究家として京都に行ったんですよ、取材で」
大谷「うん」
春日「そんときね、本当に全然受け入れてもらえなくて、もう何やってもダメで、『お前、邪魔だ!どけ!』って言われて、途中で逃げたんですよ、実は」
大谷「うんうん」
春日「で、帰って逃げたときに、『俺、何やってたんだろう……』と思って、たまたまロッキー、たまたま見たんですよ」
大谷「うん」
春日「そうしたら戦い抜くんだっていう、格好いいなと思って、それでもう1回、なんでもいいから、得られなくてもいいからフルラウンド戦ってやるぞ……だから、今ちょうど時代劇のある作品、クランクインが始まって、とりあえずクランクアップ最後にするまで、何も得られなくてもいいからあの現場に立ってやるっていう風に」
大谷「へぇ~、文句言われても」
春日「もう何言われてもとりあえず最後まで、ボコボコに殴られても立ち上がるロッキーと同じで、なんかあるはずだと思って、それでもう新幹線乗るときに、今流れてるの(ロッキーのテーマ曲)をずっとヘビーローテーションで聞いて」
(スタジオ笑)
大谷「これ聞いて」
春日「俺はロッキーだ!戦うんだ!っていうんで、もうね、関ヶ原超えたぐらいからどんどん高まってくんですよ」
大谷「あはははっ」
増田「ふふふっ」
春日「今でもね、京都行くときは頭で曲が流れるんで」

何があってもフルラウンド戦い抜く気持ちで戻ってきた京都。

大谷「それで、行ってからどうだったんですか?映画の撮影」
春日「行ったらね、逆にもう、まさか戻ってくるとは思わなかったので」
大谷「あっ、向こうが」
春日「向こうが、だから『よく来た!』っていう感じで受け入れてくれて」
大谷「へぇ~」
春日「で、ちょうど当時ね、付き合ってた女性がいて、(取材が)終わって『やった~!』って戻って、ロッキーのラストシーンみたく『エイドリア~ン!』って言おうと思ったらね、別に男を作ってて」
(スタジオ笑)

現実は映画のようには行かない。見事なオチがつきました。^^;

映画『ロッキー』のラストシーンは、フルラウンド戦い抜いたロッキーが「エイドリアン!」と叫び、リング上で熱く抱き合います。ところがそれとは別の、もうひとつのラストシーンが存在するんだそうです。

映画『ロッキー』幻のラストシーン

大谷「最後はなんか、エイドリアンと2人で手をつないで、会場から去るっていう」
春日「今度だから、ブルーレイが4月に出るんですけど、それの一応パッケージはそのシーンなんですよね」
大谷「あっ、もしかしたら……」
春日「2人が手をつないで去っていくところが」
大谷「ポスター作ってたんですよね、その去っていくシーン」
春日「で、特典見たら、それこそジョン・G・アビルドセン監督とか、スタローンの音声解説が入ってるんで」
大谷「あらっ」
春日「これ宣伝じゃないんですけど、僕ね、早速予約入れちゃいましたよ」
(スタジオ笑)
春日「また違うロッキーが見えてくるんじゃないか、と」
大谷「あるかもしれない」

映画『ロッキー』は見返すたびに新しい発見があるので、昔に見た経験がある人にも是非薦めたいと語る春日太一さんでした。

この放送を聞いていたら、映画評論家の町山智浩さんが次のようにつぶやいていたのを思い出しました。

ビリヤードのルールを知らなくても「ハスラー」に震える。ボクシングに興味なくても「ロッキー」に感動する。プロレスが嫌いでも「レスラー」に泣く。F1について何も知らなくても「ラッシュ プライドと友情」に燃える。描いているのは、人生だから。

https://twitter.com/tomomachi_bot/status/856709520159948800

時代劇を知らない私が『あかんやつら』に心奪われる理由が分かりました。この本には人生が描かれているからだ、と。

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