笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

子供たちが憧れるクイズ番組を目指して

「ブラマヨとゆかいな仲間たち」に出演したオリエンタルラジオ中田敦彦が、趣味について熱く語っていました。

「仕事に繋がらない趣味はストレス解消にならない」と断言。そして、実際に仕事に繋がった趣味として挙げたのが、クイズでした。

オリラジ中田がクイズ番組の作り方を解説

2013年5月11日放送「ブラマヨとゆかいな仲間たち」(テレビ朝日)

司会はブラックマヨネーズ(吉田敬・小杉竜一)。
ゲストはオリエンタルラジオ中田敦彦。

ブラックマヨネーズが司会を務める深夜のトーク番組。

最初から熱さ全開の中田さん。武勇伝バブルが弾けた後でも、クイズ番組にはギリギリ呼ばれていた。慶応大学出身という経歴のおかげかもしれないが、自分が呼ばれる理由を求めて「クイズ番組はどうできているのか?」を考えていた、と。

今回はその話をしたいと言って立ち上がると、後ろからホワイトボード登場。講義が始まります。

中田「ちょっと今日はね、簡単な図ですから、見ていただきたいんですけども」
吉田「え、何?クイズ番組のシステム?」
中田「システムです、どうやってできているのか」
吉田「ほぉ」
中田「クイズ番組におけるピラミッドがありますね、え~(ホワイトボードに三角形を描く)、レベルにおけるピラミッドがあるんですけども、もうクイズ番組の頂点!ここ(三角形の上部)を僕はプロと呼んでます、クイズ番組のプロっているんですよ
吉田「例えば……」
中田「思い浮かぶと思いますけども」
吉田「やくみつるさん」
中田「そうです!やくみつるさんですね」
小杉「宮崎美子さん!」
中田「宮崎さん、いいですね」

さらに、伊集院光さん、ロザン宇治原さん、辰巳琢郎さんの名前が挙がります。クイズ番組と言われて誰もが思い浮かぶ人たち。

では、このクイズ番組のプロが果たす役割とは?

中田「で、一番難しい問題ってのがあるわけですね」
吉田「うん」
中田「それをポーンッと出されたときに、全員が不正解ってことあるんです」
吉田「なるほど」
中田「これ、全員が不正解した場合、その問題どうなるか?……カットになるんですよ
(客席から「へぇ~」と感心する声)
吉田「お蔵入り(放送されない)」
中田「なんでか?って言ったら、視聴者が『えっ、全員分かんない問題?そんなの俺も分かんねえよ、何流してんの!?』ってなるんですよ」
吉田「ほぉほぉ」

話にすっかり夢中な吉田さん。その姿に呆れる小杉さん。

クイズ番組のプロは憧れの存在

中田「ところが、この人たち(プロ)が、1人でも正解した場合は
吉田「(前のめりで)うんうんうん」
中田「『あっ!なるほど、インテリの方なら分かるのね、お~、私も勉強してアノ人みたいになりたい!』という憧れの存在
(スタジオ笑)
吉田「頑張れば、分かるんだ!と」
中田「頑張ればできるんだ、私も勉強しよう、さらに!それをお子さんと観てる方は、『やくみつるさんみたいになりなさいよ』と、ああいうスゴイ人に、『勉強しなさいよ』と言いやすい」
吉田「なるほど!子供にも」
中田「子供にも、『アンタ漫画読んでばっかりじゃないの、勉強しなさい!』、言えるわけです」
吉田「ふんふんふん」
中田「日本の教育と番組を支えてる人たち!(ホワイトボードに書いたプロの文字をバシッと指差す)」
(スタジオ笑)
小杉「考えすぎちゃうか!それ、ホンマか!?」

熱のこもった講義に客席が沸きます。続いて、プロ以外の存在について。

中田「プロがいれば、もちろんアマもいるんですよ(三角形の下部にアマと書き込む)、アマチュア、できない人たちですよね、つまりは、おバカな人ですよ、できないことで『えっ?みんな分かる、視聴者も分かるのにこの問題できないの!?アハハ』と、視聴者の方々に優越感を得ていただく」
(スタジオ笑)
吉田「(腑に落ちた表情で)なるほど!」

旬な芸能人がクイズ番組によく呼ばれるが(今ならキンタロー。さん)、そういう方は難しい問題は分からないので、クイズのアマとしてご活躍いただく、と補足を入れる中田さん。^^;

残ったのは、三角形の真ん中。プロとアマに挟まれた部分。


中田「プロとアマがいます、それは分かった、じゃあそれでクイズ番組できるのか?できないんです!」
吉田「おおっ」
中田「なぜかと言うと、大概のクイズ番組はレース形式になってますね、バトル形式になってますね」
吉田「なってる」
中田「(ホワイトボードの三角形を指しながら)どうなります?ここだけ(プロとアマ)で戦った場合」
小杉「差がすごいつくよ」
中田「すぐつきます、もう見てて分かります、どっちが勝つでしょうか?視聴者全員が『こっち(プロ)だ!』って言います」
(スタジオ笑)
吉田「(純粋な目で)言います」
中田「そんな番組は面白くないんですよ!じゃあ、プロには勝てないが、アマを抑えることができ、アマには追いかけるモチベーションを上げさせ、プロには逃げ出すというモチベーションを上げさせる、そんな……セミプロがいる!(三角形の中部にセミプロと書き込む)」
(スタジオ笑)
吉田「あははははっ」
小杉「(手を叩いて笑いながら)何言うてるん、コイツ」
中田「じゃあ、セミプロって誰なの!?はっきり言いましょう、僕と、眞鍋かをりさんです!」
(スタジオ笑)

見事な講義にブラマヨの2人は拍手。私も素晴らしい漫談を見たという満足感でいっぱい。

中田さんの話は、「出演者」から見たクイズ番組の作り方でした。

この放送の2ヶ月前、「番組制作者」がクイズ番組の作り方について語る番組がありました。視点は違えど、中田さんと共通している点があると私は思いますので、こちらも合わせて紹介させて下さい。

PERFECT HUMAN

PERFECT HUMAN

クイズ作家・日高大介がクイズ番組の作り方を解説

2013年3月11日放送「日高大介のラジカントロプス2.0」(ラジオ日本)

パーソナリティは日高大介(クイズ作家)。
聞き手は植竹公和(歌う放送作家)。

ゲストは、クイズ作家の日高大介さん。「高校生クイズ」全国大会出場や「パネルクイズアタック25」優勝など、クイズ番組の出場者として活躍したのち、放送作家に。放送作家でもクイズ番組を専門とする「クイズ作家」として、「Qさま!!」など数多くの番組を手掛けています。

そんな日高さん、どの番組にも共通するクイズ問題作成のルールがあると言います。いくつか紹介した中に、「3者が満足するモノを作る」というルールがありました。

植竹「続きまして、3者が満足するモノを作る、これはどういうことですか?」
日高「これはテレビ番組でのクイズで、まあ僕の勝手なマイルールなんですけど、この3者っていうのは、まず答えてくださる解答者の方、そして番組を作ってるスタッフの方々、え~制作者ですね、そして、テレビをご覧の視聴者の方々、を3者と呼んでるんですけども」
植竹「うん」
日高「普通は視聴者に向けてクイズを作るってのがまあ、大前提なんですけども、あの~、スタジオが盛り上がらないことには」
植竹「そっか~」
日高「面白いクイズ番組は絶対生まれないんですよ」
植竹「なるほど」
日高「で、面白いクイズ番組を作るためには、解答者が熱中できる問題と、制作者側が自信を持って、『コレは出そう!』って自信があふれてる問題、でないとやっぱり白熱しないんですね、スタジオが」
植竹「はっは~」
日高「で、スタジオが熱を帯びて、すごいクイズバトルが生まれて、それがテレビで収まった結果、やっと視聴者にお届けできるっていう、この3つの目線を、常にクイズ考える立場は」
植竹「なるほど、単なるうんちくじゃなくて、そのクイズが出た瞬間にフフフッと思ったり、あの~、なんか変な言い方だけど……ウケる、このクイズ、ウケるな~っていうニュアンス、そういう要素がないと、スタジオが盛り上がんないってことだね」
日高「そうですね、ただ闇雲に、クイズ番組ってクイズ作ってるだけじゃなくて、キャスティング」
植竹「なるほど」
日高「いわゆるどの方々が解答者か?っていうことを、まず見てからじゃないと、問題なかなか作れないですよね」
植竹「ほほぉ~」
日高「そこに合わせて良い球を投げるっていう」

まず、作ってきたクイズの問題がスタッフ会議で採用されなければ仕事にならない。なので、その番組の演出をやっている人にも刺さる問題を作った上で、

日高「その問題が果たして、簡単すぎず難しすぎずの、きっちりレベルを保ててるかどうか?」
植竹「そうか!それが問題だよね、最終的には解けないといけないわけだよね!」
日高「そうです」
植竹「誰かが」
日高「はい」
植竹「誰も解けないっていうのは、あんまり良い問題じゃないってことだ
日高「良い問題じゃないです」
植竹「なるほど」
日高「あの~、例えば6人解答者がいたら、まずは1人2人がピンッと来る問題、3人4人はヒントが出てようやく分かる問題、残り2人は珍解答が出るような問題……が理想だったり、まあ番組によりますけど」
植竹「なるほど~、いろんな答えのバラつきが出るようにわざと、そういう問題を選んで」
日高「はい、これはもう全員正解だろうな?っていうものは、会議の段階で外されますし」
植竹「そっか~」
日高「だから毎回クイズ番組の収録は、もう祈るような気持ちじゃないですけど……」

オリラジ中田さんが「プロ、セミプロ、アマ」の分類の話をしたとき、私は日高さんの「6人の解答者」の例え話を思い出しました。

子供たちにずっとクイズ番組を見続けて欲しい

ここで、ある疑問をぶつける植竹さん。

植竹「たださ、クイズ作家さんもベテランになって、スタッフもね、ディレクターも慣れてくるでしょ?」
日高「そうなんですよ」
植竹「そうすると!例えば、クイズ(の問題)を提案しても、『そんなの常識じゃん!』つって、なんか、どんどんすごいレベルまで……」
日高「上がっていく」
植竹「上がってって、見てる人とね、微妙にズレる可能性だってあるよね」
日高「あります」
植竹「そこが難しいね」
日高「はい、だから今度は3つ目のハードルである視聴者、っていうところに入ってくるんですけど」
植竹「あ~」
日高「テレビをご覧になった視聴者の方々の反響を見て、やはりいろんな意見が来るんです、テレビ局に」
植竹「そうだね」
日高「『難しすぎ』、『簡単すぎ、バカにしてるのか』っていうようなお叱りの声もいただきますし」
植竹「うん」
日高「そういうところで、じゃあ実際どうだったのか?っていうのを、その収録の問題をもう1回確認して、『ちょっと難易度を1回落とそうか?』だったり、『いや、この番組は頭の良いところ、格好いいところ見せるんだ!』ってポリシーがあれば、そういう声に、え~、めげずに独自の信念を貫き通すこともありますし……それはいろいろですね」

様々なクイズ番組の視聴者がいる中、とりわけ小中学生の子供たちに興味を持ってもらうことを意識している、と語る日高さん。

植竹「いわゆる高偏差値タレントさんが、答えたりしますよね、なんかそういうジャンル作って」
日高「ええ」
植竹「でも、小学生が分かるような問題じゃないとダメなわけ?」
日高「さじ加減ですけども」
植竹「難しいね、それ」
日高「あの~、小学生がまず憧れを持ってもらえるような難しい問題も入れます
植竹「ほ~」
日高「『わっ、こんなの答えられる』、例えば、『ロザンの宇治原さん格好いいな』とか、『ヒラメキでひねり出す伊集院さんスゴいな』とか」
植竹「ふふふふっ」
日高「で、そんな中で、こう見てる中に、『あっ、コレ分かった!』、次の日学校でも自慢できるような問題を、1問まぶしたりっていうことは、まあ勝手に僕の中でですけど」
植竹「うんうん」
日高「こういうの、ひょっとしたら子供たち興味持ってくれるかもな?っていう目線で、やっぱずっとクイズ番組見続けて欲しいですから、大きくなっても、ふふっ、はい」
植竹「そんな、壮大な計画を持って、ふふふっ」
日高「持ってます、あの~、僕のビジョンの中ですけど、自分がそうでしたからね、そもそもクイズ番組が好きで」
植竹「あっ、そっか!そっか!元々ね」

クイズ番組ってだけで安易とか言われがちですが、熱いこだわりを持ったクイズ番組は確実にある。

逆に、そういう番組が多くの人から支持を得たからこそ、クイズブームが起こったのでしょう。そして、ブームが去った後も、熱量を持ってるクイズ番組は生き残っていくんだと思います。