笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

漫画「ワンピース」作者・尾田栄一郎と週刊少年ジャンプ編集部の話

2012年12月15日に公開された映画「ONE PIECE FILM Z(ワンピース フィルム ゼット)」。
週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画「ワンピース」の劇場版です。第12作目となる今作は、長編映画としては3年ぶり。原作者の尾田栄一郎さんが総合プロデューサーを務め、脚本は放送作家の鈴木おさむさんが担当しました。

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この映画の公開前日が放送日だった、TOKYO FM「よんぱち 48hours」。映画のPRをすべく、製作に関わった人たちをゲストに呼んで、パーソナリティの鈴木おさむさんと共に魅力などを語り合っていました。で、その話の中に出てきた作者の尾田栄一郎さんの人物像や、週刊少年ジャンプ編集部の話が興味深かったので、今回はこちらを紹介させて下さい。

TOKYO FM「よんぱち 48hours」で映画「ONE PIECE FILM Z」特集

2012年12月14日放送のTOKYO FM「よんぱち 48hours」。

聞き手は番組パーソナリティの鈴木おさむ。ゲストに東映アニメーションの柴田宏明、少年ジャンプ編集部の服部ジャン=バティスト哲。
まずはゲストの紹介から。

鈴木「こっからは明日公開、3年ぶりの長編映画『ONE PIECE FILM Z』について、いろいろ語っていきたいと思います、そして、この方たちにガイドしていただきたいと思いまして、声かけて来てもらいました、え〜、東映アニメーションプロデューサーですね、柴田君と呼んでます、柴田宏明君」
柴田「よろしくお願いします」
鈴木「そして、少年ジャンプ編集部から、服部ジャン=バティスト哲(アキラ)さんが来てます、ふふふっ、アキラって言うんだね」
服部ジャン=バティスト哲(以下、バティ)「アキラです、よろしくお願いします」
鈴木「え〜、僕はね、バティってよく呼ぶんですよね、みんなにバティって呼ばれてるよね?」
バティ「はい、バティです」

バティさんは母親がフランス人なのだそうです。集英社に入社してジャンプ配属になって丸6年。「ワンピース」の担当になったのは3年目から。一方の柴田さんは、東映に入社してから16年、「ワンピース」の担当になってからは5年半が経過。
映画の製作陣が集英社に集まったのが、2010年。鈴木おさむさんと作者の尾田栄一郎さんが一緒に仕事をするのは、これが初めて。

鈴木「何がビックリしたって、柴田君もバティも、尾田さんのことをすごい分かってるじゃないですか」
バティ「分かったつもりですけどね」
鈴木「いや、でもね、俺ね、何がすごいか?って言うと、例えばタレントさんのマネージャーで、『いや〜、アイツはこれ嫌がりますよ』とか、仲の良いプロデューサーとかにね、言って、やることを狭めちゃうんだけど」
柴田「はい」
鈴木「柴田君もそうだし、バティもそうだし、『とりあえず1回投げてみましょうか?』とか、『怒られるかもしれないけど1回言ってみよっか?』ってよく言ってたじゃない」
柴田「そこはもう、当時でもう3年半ぐらい付き合ってましたので、尾田さんがどうおっしゃるか、とにかくこっちからの意見を欲しがる方ではありますよね」
バティ「うん、そうですね」
柴田「こっちからの投げかけを常に待ってて、それに対してどう打ち返すかっていうところで、尾田さんも思考のスタートを切りたい、みたいなところがあると思うんですね」
鈴木「はい」
柴田「あるときはいろいろとこう、『まず投げてみるか?』と言ってね、バティさんと自然とそうしますから」

いろんな人に意見を求める尾田さん。その目的は読者に楽しんでもらうため。

尾田栄一郎は読者に「ワンピース」を楽しんでもらうことだけを考えている

鈴木「だから最初に尾田さんにお会いしたときに、みんなにとりあえずの意見を聞くじゃないですか、あれは結構、尾田さん流なんですか?」
バティ「まあ、そうですね」
鈴木「うん」
バティ「漫画を毎週描いていてですね、独りよがりな漫画って描けないので、読み手がいて初めて漫画は成立するものなんで、まずは読み手の意見っていうものを考えるわけですよね」
鈴木「うん」
バティ「その中に編集者がいるわけですけど、なんかまあ、それと同じような考え方で、何か作るときには自分以外の人の意見をまずは聞いて、それはどうなのか?っていうところから、何が正解なのかを逆算していってるんだと思うんですけども」
鈴木「へぇ〜」

映画でもその姿勢は変わりません。

柴田「例えば、映画のポスターに書いてあるキャッチコピーとかを考えるときに」
鈴木「うん」
柴田「いろんなスタッフ、宣伝部のスタッフはもちろんですけど、アニメ作ってるアニメーターの方々ですとか、とにかく山のように意見を聞いて、その中から最後はひとつ、選んでいくってことをやりたがりますね、みんながどう感じているか?っていうのを非常にやっぱ、僕が接している中では重要視されている感じはありますね

鈴木おさむさんも、尾田さんの仕事に対する向き合い方に感銘を受けたと言います。

鈴木「今回、尾田さんと初めてお仕事させていただいて、まあイメージどおりの人だったんですよ、ビジュアルも雰囲気も」
バティ「ふふっ」
鈴木「そして、なんて言うんですかね、仕事に対する向き合い方ってのは、僕は本当にかなり、ちょっとこう影響を受けた部分はあるわけですけど、1年半ご一緒させていただいて、尾田さんって・・・どんな人なんですかね?」
バティ「いや〜もうだから、『ワンピース』のことしか考えていないですし、『ワンピース』のことしか考えていないっていうのは要は、え〜、読者が『ワンピース』で楽しんでもらうってことしか考えてないですね
鈴木「うん」
バティ「描いてオーケーじゃなくて、描いて楽しんでもらうっていう」

ここで、ちょっとこぼれ話。

鈴木「今回もだから、その映画でね、ある程度本ができて、どんどんそこからまた変わっていったりする中で、尾田さんがその・・・今回、ゼットていう敵が出てくるけど」
柴田「はい」
鈴木「ゼットという者を描くにあたり、どんどんアイデアを膨らませていったじゃないですか」
柴田「はい」
鈴木「俺ビックリしましたよ、ある日、ゼットの物語を全部」
柴田「そうですね」
バティ「ゼットの一生ですね」
鈴木「ゼットの一生を描いて、アレなんて言うの?コンテ?」
バティ「アレは・・・」
鈴木「文字とイラストと」
バティ「絵付きのプロットですかね」
鈴木「そうだよね、要は、その僕が物語で作ったゼットっていうキャラがあるんだけど、でもそのゼットというキャラがどんなキャラなのか?生まれてから今に至るまでのを、絵と文字で全部書いてきたんですよね」
柴田「アレに関しては今回、ルフィたちのコスチュームとか、お願いしてあげていただいてるモノもたくさんあったんですけど、アレを描いていらっしゃるとは全く・・・こちらからお願いしたわけでもなく、事前情報も聞かず、ある日突然ドカンッと僕のところに届いたんで、見た瞬間にね、バティさんに怒られるなって」
(スタジオ笑)
鈴木「漫画が止まりますからね」
柴田「やってる間は」
バティ「そうなんですよ、でも面白かったですからね、アレを漫画にしてくれって僕思いましたから」
(スタジオ笑)

読者のために一切手を抜かない。それが多くの支持を得ている理由なのかもしれませんね。

フィギュアーツZERO ゼット

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この後も映画「ONE PIECE FILM Z(ワンピース フィルム ゼット)」の魅力について語っていくのですが、週刊少年ジャンプの話にもちょっとなったんです。

週刊少年ジャンプ編集部は我先に電話を取る

鈴木「ジャンプの漫画の人って、担当は1個しかやんないの?」
バティ「最大2個ですね」
鈴木「あっ、そぉ〜」
バティ「3つやったりするときもあったらしいんですけど、基本的には2個まで、じゃないとちょっと回んないだろうってことで」
鈴木「俺ビックリしたの、集英社で何回か打ち合わせしてたじゃないですか、したら本当にさ、集英社の下のほうでさ、ず〜っと漫画を描いてる・・・なんか少女みたいな人がいて」
バティ「あ〜、多分締め切りだったんですよ、ネームコンペの締め切りで、ネームを描かなきゃいけないからってことで、ギリギリまで会社に来てやってたってことだと思いますけどね」
鈴木「なんかね、本当『バクマン。』の世界だった」
柴田「1階のロビーの、奥の打ち合わせスペースでね、新人さんと担当の方がいつも打ち合わせしてるのを見て、僕も漫画大好きなんで、ここから新たな作家さんが生まれるんだなって思って、ワクワクしたりして」
バティ「まさにそうですよね」

漫画の持ち込みはあるのか?尋ねます。

鈴木「本当に持ち込みってあるんですか?」
バティ「いやもう、毎日のように掛かってきますよ、電話は」
鈴木「それは、電話掛かってきて、例えば『俺の漫画見てください』ってなったらどうするんですか?『一応、送ってください』って」
バティ「いや、アポを、アポを取るわけです、約束をして『この日に来てください』っていう風にして、その場で見て、え〜、意見を言って」
鈴木「うん」
バティ「ダメなら漫画家あきらめなさいって言うし、才能あるぞって思ったら、まあいろいろ・・・次はこうしたとこ気を付けなきゃいけないよね、ってのをやりながら、少しずつ成長させていくっていう感じですかね」
鈴木「へぇ〜!」
柴田「それは最初に応対した人が・・・」
バティ「電話を取った人が担当になります、だから、尾田さんみたいな天才を取れるかどうかは、もう本当に・・・」
鈴木「尾田さんはどうやって?」
バティ「尾田さんは漫画賞に投稿ですね」
鈴木「あ〜、だからもう、そこで担当がつくわけですね」
バティ「手塚賞に投稿して、手塚賞を取って、そのときに手塚賞を担当していた、まあ班単位でやってるんでジャンプの場合は、その班の人が尾田さんの担当についたってことでしょうね」

作品を持ち込んできた中からも売れっ子漫画家がたくさん誕生した、とバディさんは言います。

鈴木「手塚賞とかじゃなくて、電話を取って、それでブワーっと売れた人とかっているんですか?」
バティ「いますよ、いくらでもいますよ」
鈴木「すごいね〜、未だにそんな・・・」
バティ「そうです、だからジャンプ編集部の人間も、我先に電話を取るわけですよ、良い作家を抱えたいから
鈴木「へぇ〜・・・ジャンプってすごいね、やっぱりほら、他の漫画だと結構、他の作家さんを引っ張ってきて、とかやるじゃないですか」
バティ「ジャンプはそれやらないですね」
鈴木「そこはもうずっとポリシーなんですか?」
バティ「ポリシーというか、そういう歴史ですね、ジャンプって他の少年誌、サンデー、マガジン、チャンピオンに比べて10年創刊が遅いんですよ、なので、創刊したときにもう作家がいなかったわけですね」
鈴木「うん」
バティ「よそから作家を引っ張ってこれなかったので、もうじゃあ自前で新しい作家を育てていくしかないっていう風に追い込まれて、そこから新人の漫画家でやってくるっていう歴史が積み重なって、未だにそれでやってるという」
鈴木「じゃあ今日も、今も、電話が掛かってきてるかもしれない」
バティ「掛かってきてるでしょうね」

こういうところから、いずれジャンプを支える漫画家が誕生するんですね。バティさんは「ジャパニーズドリーム」と仰っていましたが、本当に夢のある話だと思いました。