笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

ネタ作りとは大きな自分たちのスタイルを作ること

お笑い芸人がネタ作りについて語ることがあります。私はそれを聞くのが大好きです。

さらば青春の光「ぼったくりバーのネタは新ネタライブの1時間前に出来た」

2012年12月26日放送の「山里亮太の不毛な議論」。

この放送の5日前、草月ホールで行われた「他力本願ライブ2」。ラジオのリスナーが書いたネタを芸人が実際にやるというライブだったのですが、演者として参加した、さらば青春の光と一緒に振り返ります。
ちなみに、お笑いコンビ「さらば青春の光」は、2008年に森田哲矢(もりたてつや)と東口宜隆(ひがしぐちよしたか)で結成され、2012年のキングオブコントでは準優勝した若手実力派です。
「他力本願ライブ2」で、人の書いたネタをやる気持ちを尋ねられて、

東口「まあ無いことですからね、そんなことが」
森田「そうですね〜」
東口「僕ら、普段台本にも起こさないんで」
森田「そうなんですよ、台本にされると、急に覚えにくくなるというか」
山里「そうなんだ〜、え?じゃあ、もう口立てでやるタイプ?」
森田「そうですね」
山里「うわ〜!超憧れるやつ、それ」
森田「いや、でもね、台本にするほうが面倒くさいんで」
山里「なるほど、これさ、あるじゃん、ネタ作るときの役割って、どう作るの?」
東口「まあ基本、森田が考えて、『こんなんあんのやけど〜』って設定言ってきて、じゃあこうしようか、ああしようかって」
森田「こんなボケ言うからこんな感じで・・・みたいな、ここでこういうボケあるか〜とか」
山里「へぇ〜」

キングオブコントで披露したコント「ぼったくりバー」について聞く山里さん。

山里「じゃあアレも?ぼったくりバーのやつも?」
森田「ぼったくりバーも・・・そうかな?」
山里「キングオブコントでやった」
東口「そうですね」
森田「ぼったくりバーは、あの〜、もうホンマに、新ネタライブでホンマにネタが無くて無くて無くて・・・その日の1時間前ぐらいに出来た
山里「ええ!あんなに面白いのに!」
森田「ふふふっ、そうです」
東口「『なんか単位を多く言ってたら面白いやろ』って言い出して、そこから出来た感じでしたね」
山里「うわっ、そういうの憧れるわ〜」

この話で、ある漫才師のコメントを思い出しました。その漫才師は、アンタッチャブル。

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アンタッチャブル「オンバトで541KBを出したネタは本番1時間前に必死こいて作った」

2008年12月31日放送の「爆笑オンエアバトル ヒーローたちの伝説ネタSP」。

オーバー500、すなわち、500KB(キロバトル)以上を獲得したネタを紹介していく特別番組。100人の一般審査員がネタを見て、面白いと思えばボールを入れるシステム。全員が入れると、満点の545KBになります。ですから、オーバー500を達成することは簡単ではありません。
番組では、オーバー500を7回出しているアンタッチャブルも紹介されていました。そこで、2人のコメントが。

柴田「(北海道)北見の541KBを作ったときは、本当にこんなこと言っちゃうと怒られるかもしれないですけど」
山崎「うん」
柴田「当日まで出来てなかったですよね、ネタ、で、ネタ作りをとりあえずしよう、つって」
山崎「そう」
柴田「現場着いたら・・・」
山崎「現場行ったら眠くなっちゃって」
柴田「寝ちゃった、はははっ、本番前に寝ちゃった、眠くなっちゃったんだよね、それで1時間ぐらい前に起きて、本番の
山崎「そう、やべ〜!やべ〜!つって」
柴田「で、必死こいて外で作ったよね
山崎「だからそれがね、あったから〜、やっぱ今の自分らがある・・・」
柴田「そんなことないでしょ」
山崎「ふふふっ」
柴田「それは作っとくべきでしょ、前もって」

ネタを1時間前に作ったと言うアンタッチャブル。しかもオーバー500のネタを。才能と言えばそうなのかもしれませんが、私は「こんなこと可能なの?」と不思議で仕方ありませんでした。
ナイツがネタ作りについて語っていた番組を見るまでは。

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ナイツ「ネタ作りとは大きな自分たちのスタイルを作ること」

2012年12月15日放送の「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」。

先輩ゲストにナイツ、オール巨人さんを迎えて、漫才のことを熱く語ります。練習時間はどれぐらいか?をナイツに質問する加藤浩次さん。

加藤「ナイツはどれぐらい練習してたの?」
塙「僕ら、今の形になってから練習を全然しなくなったんですよ
加藤「その前はどういう漫才?普通の、オーソドックスな?」
塙「オーソドックスな漫才です」
土屋「僕ら、本当いろいろ、手を替え品を替えやってましたね」
加藤「で、今のこのパターンが出来たっていうのは、これ、いつからなの?」
塙「これ、2007年からなんですよ」
加藤「うん」
塙「7年やってて、M-1の決勝にも1回も行けないで、な〜んでだろ?と思ったときにやっぱり、なんかちょっと違うことやらないといけないのかな?と思ってて、で、1回全部自分たちが出たライブのビデオを見直したんですよ」
加藤「はい」
塙「したときに、僕が、例えば雨降ってるときに、『今日はお足元のクサい中、ようこそお越しくださいました』つって」
土屋「『悪いだろ』」
塙「ってところがすごいウケるんですよ」
加藤「うんうん」
塙「その後、ネタ入ると全然ウケないんですよね、あれ?こういうボソッと言うのが、人よりもちょっと得意なのかな?みたいな、コイツ(土屋)もあんまり叩いてツッコむよりも、訂正するツッコミのほうが合ってんじゃないかな?みたいのを、なんとなく思ったんですよ」
加藤「あ〜、土屋くんのキャラ的にもね」
塙「お足元のクサい中シリーズみたいのを、全部それにしたらいいんじゃないか、と」
オール巨人「それを並べるというわけね」
塙「はい、それを1回5分ぐらいにしてやったら、すっごい自分たちの中で気持ちよくて、これはイケんじゃないか?と思って、今の形が出来たんです」
加藤「あっ、そういう流れなんだね〜」

紆余曲折ありながら、自分たちのスタイルを見つけたナイツ。そこで塙さんが気付いたこと。

塙「ネタ作りっていうのが、なんか今まで、コンビニのなんか店員の設定になってボケを考えるとか、そういうことじゃなくて、この〜、大きな自分たちのスタイルを作ることが『ネタ作り』なんだなっていうのが、後になって分かりました
加藤「うんうん、スタイルだよね、ナイツのスタイル」
塙「はい、スタイルを作ったから、すごく後は・・・例えばSMAPとか、嵐とか、何でも(ネタに)入れられるので、すごく楽になりましたね」

アンタッチャブルは塙さんの言う自分たちのスタイルを持っているから、その中に何を入れていくか?を考えるのが主な作業となるから、1時間前でもネタが完成した。そして、ウケた。私はそんな風に解釈して納得しました。

「スタイル」というキーワードを聞いて、パッと私の頭に浮かんだのは、ハマカーンです。

下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え

下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え

漫才のスタイルを変えたことで、ようやく手に入れたトップの座。「THE MANZAI 2012」の王者。ハマカーンが「オードリーのオールナイトニッポン」に出演したときに、スタイルを変更した理由を語っていました。

ハマカーン「スタイルを変えたらネタ作りの時間が急激に短くなった」

2012年12月22日放送の「オードリーのANN」。

「THE MANZAI 2012」王者としてスタジオにやってきたハマカーン。ハマカーンは、ボケの浜谷とツッコミの神田が結成した漫才コンビで、オードリーと同じ事務所です。なので、このときのトークは身内感があって非常に濃いものになりました。

若林「スタイル変更なんて、新聞読んでても載ってたけどさ」
浜谷「うん」
若林「だからさ、俺らとかHi-Hiって、正直その、ウケてない状況からスタイル変更を余儀なくされてって感じだけど、やっぱ・・・だってオンバトだって2位とかなってね、何年か、準優勝したよね?」
浜谷「まあそうだね」
若林「あとなんか、NHKなんかも取ってるよね?」
浜谷「え〜、漫才新人大賞か、あの〜浅草の」
神田「漫才協会の」
春日「そうだ、そうだ」
若林「あっ、そうだよね、取ってるし、それで決勝まで行ったスタイルから変えなきゃいけないって、俺想像つかないもんね、やっぱり」
浜谷「だってダメだったもんな〜、1年前な」
神田「うん、いやまあ、言ったら去年のTHE MANZAIも、そのBブロックで初戦敗退で、渡辺リーダーの同情の1票しか入んなくて」
若林「うん」
神田「でも1票入ったりとか、国民ワラテンではHi-Hiさんの次の点だったとか・・・そういうの思ってたら、会う人会う人に『いや〜、惨敗だったね〜』とか」

別の人には「THE MANZAIでスベってたね」とまで言われる始末。そうなると、もうスタイルを変更するしかない、と。
M-1グランプリの頃から「次は行く」と言われながら、あと一歩の状態が続いたハマカーン。そんな中、同じ事務所のオードリーやHi-Hiが突き抜けていく。

浜谷「俺らから言わせれば、Hi-Hiさんとかオードリーのほうが、才能あるよね」
神田「すごい」
若林「いや、それは全然違う」
浜谷「だって、ずっとこうやって来ててさ、平行線で来て、(スタイルを)変えてボーン!と行ってんじゃん、2組とも」
若林「あ〜、うん」
浜谷「俺ら変えて(沈む感じで)フ〜ン・・・、それで変えて、だからね」
若林「いやでもやっぱり、地肩が強いから、あの比較的完全にマッチしてない型でも結果出せるんだと思うよ、2人は」
神田「あ〜、なるほど」
浜谷「深夜の懸垂が効いてんだな(ニヤリ)」
(スタジオ笑)
若林「急遽コメディになったな」
(スタジオ笑)

今のスタイルになってからの神田さんは、漫才と普段でしゃべり方が変わらない、と指摘する若林さん。

若林「だけどさ、漫才ってさ、俺らとかの世代だからかな?始まったときにさ、ボケとツッコミで分けて」
浜谷「分けてたね〜」
若林「で、ツッコミが、『いや、それおかしいだろ!』とか、『違うだろ!』みたいに言うってところから始めて、そんな人格・・・2コの人格なわけないじゃん」
浜谷「うん、人間がね」
若林「それで結果出せる人は出せるし、出せなかったら自分たちのね、考えるんだけど」
浜谷「うん」
若林「それでガーッとやってきて、なんか神ちゃん(神田)のしゃべり方じゃない、あのちょっとこう・・・なんつうの?トーンがこう」
浜谷「ねえ」
神田「うん、今の漫才のときはイッコも無理してないもん
若林「そうだよね〜」
神田「もう諦めてるから、ツッコミを」
若林「ふふふっ、やっぱ神ちゃんプライベートでさ、『いや、それおかしいだろ!』とかさ」
浜谷「言わない」
若林「言わないもんね」
神田「気付かないんだよね」
(スタジオ爆笑)
浜谷「気付かないのよ〜」

芸人始めた頃の神田さんは、くりぃむしちゅーの上田さんみたいなツッコミを目指していたそうです。^^;

若林「いっぱい聞かれてると思うけど、自分たちが行けると思うもんなの?」
神田「思ってなかった」
若林「あの〜、票が入るとき」
浜谷「もう、(THE MANZAI 2012の)ファイナルラウンド?」
若林「ファイナルラウンド」
浜谷「思わないね〜」
神田「4票ぐらい来たら・・・このあと均等にばらけても行くだろうし」
若林「なるほど、なるほど」
神田「っていうことだとは」
若林「そうだよね〜、あれでも、よく神ちゃんのキャラをさ、ああいう風に決め・・・キャラっていうかほとんど神ちゃんのね、普通の姿だけど」
浜谷「そうそうそう、素の姿」
若林「どういう風に決めんの?ああいうのは」
神田「いや、だからネタ作り自体はもう、浜谷が『神田さん、最近何ハマってますか?』って」
若林「へぇ〜、インタビューして、まず」
神田「『最近はですね、馬油(バーユ)が肌に良い・・・』」
(スタジオ笑)
浜谷「馬油って何だよ!」
神田「俺なりに説明するんだけど、馬油がすごいって」
浜谷「『必要か、それ?』つって」
若林「うんうん、っていうところから作ってく」
浜谷「だから、いやこれはね〜、本当にね、ネタ作りの時間が急激に短くなったんですよ
春日「ほぉ〜」
若林「やっぱりね〜、いや〜、俺らもそうだったな〜」
春日「なるほどね〜」
浜谷「それまでは結構、時間掛かるネタやってましたね」

客にウケるスタイルを作った上で、さらに、そのスタイルという箱に自分たちの素の部分を入れやすいことが、突き抜けるために必要なのかもしれませんね。それが出来るようになれば、ネタ作りの時間が短くなる。そして、お客さんにネタが届きやすくなる・・・と、私はハマカーンの話から妄想を働かせて、たどり着いたわけです。
こういう裏話を聞いちゃうとネタを客観的に見れない、笑えるモノも笑えなくなっちゃうよ、と言う人もいるでしょう。それは本当にその通りだと思います。でも、私はそういった部分も含んだ上で、ネタを味わいたい。それが私のお笑いの見方、スタイルなんです。