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笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

若手芸人のために「神保町ジュニア寄席」を立ち上げた千原ジュニア

今のお笑い界は「上が詰まっている」。

私がこの言葉に最初に出会ったのは、だいぶ前の「ナインティナインのオールナイトニッポン」だったと思います。自分たちより上の世代、とりわけBIG3の揺るぎなさを指して、岡村さんはこのように表現しました。
タモリさんや明石家さんまさんと絡むとこの話を持ち出して、引退を強く求めたりしていましたね。ただし、それは岡村さんなりのBIG3とコミュニケーション取るためのコント的なやりとりだったわけですが。

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BIG3のタフさ

2005年9月27日放送の「踊る!さんま御殿」。

司会は明石家さんま。ゲストに「ぐるぐるナインティナイン」チーム。
トークテーマは「もう勘弁してくれと思ったこと」。

さんま「岡村、もう勘弁してくれと思ったこと」
岡村「僕ず~っと、ここ最近ずっと思ってるんですけど」
さんま「おお」
岡村「さんまさん含め、大体この40後半から50代のベテランさんいますよね、お笑いの」
さんま「50(代)のベテラン、俺たちね」
岡村「そうなんですよ、もうね、本当に勘弁して欲しいと」
さんま「何が勘弁してほしいんや?」
岡村「このタフさって言うんですか、もうね、第一線で活躍しすぎてる感」
さんま「なんでや?ええやないか」
岡村「いや、いいんですよ、いいんですけど・・・もうね、上が詰まってて」

そう言って、さんまさんにテレビ界からの引退を求めると、

さんま「お前ら、十分やないかい!」
岡村「十分じゃないんです」
さんま「ちゃう、(他の出演者を見渡しながら)ナイナイは十分やよね!?」
出川「十分!十分!」
さんま「お前らやがな~」

お笑い界を詰まらせているのはナイナイの世代だ、と主張するさんまさん。

さんま「あ~、そんなことしゃべってるんだ~」
岡村「これはね~、そんなことばっかり」
さんま「ただまあ、おかげでね、50までテレビに出てるとは夢にも思ってませんでしたから」
千秋「いつまで出るんですか?」
岡村「セミリタイアみたいなことは全く考えないですか?」
さんま「俺ね、夢があるんですよ、70過ぎても『から騒ぎ』だけはやりたいんですよ」
岡村「70歳?ふふふっ」

笑いに対するどん欲さに感心するしかない岡村さん。

この放送から8年が経過しました。
今年の「FNS27時間テレビ」で見せた明石家さんまさんの活躍からも分かるように、「上が詰まっている」状況にほとんど変化はありません。ですが、この表現はちょっと正確ではなくなりました。
と言うのは、今のお笑い界は「上が詰まっている」のではなく、「上から下まで詰まっている」ようなんです。

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芸暦10年未満の若手芸人が舞台に立てない

2013年3月31日放送のBSフジ「カンニング竹山の恋愛中毒」。

面接を受けにオフィス竹山にやってきたスパローズ。
スパローズは、森田悟(もりたさとる)と大和一孝(やまとかずたか)が結成した浅井企画所属のお笑いコンビ。最近、テレビの露出も増えてきて、風が吹き始めているベテラン漫才師です。そんな彼らが、お笑いライブ周辺の変化について話します。

大和「今、恐ろしい時代がお笑い界には来てますよ」
竹山「おっ、ちょっとそれを」
森田「竹山さんの知らない世界で、中野のライブとかで、(芸暦)10年未満のヤツらのほうが少ないんですよ」
竹山「え?」
森田「16組芸人が出てて、12組(芸暦)10年越えなんですよ、4組ぐらいしから10年未満がいないんです」
竹山「え~・・・」
大和「それを、ちっちゃなライブハウスでやるんですけど、もう(芸暦)9年のヤツが本当に楽屋に入れなくて」
森田「そうです、そういう風になってきてるんですよ」

では、芸暦10年未満の人たちはどうしているのか?

竹山「逆に何?(芸暦)10年未満はいないの?その人口はないの?」
大和「いるんですけど、出る場所もない、みたいな、もうあふれ返ってるんですよ、全部の事務所が(芸人養成)学校作ってるじゃないですか」
竹山「うん」
大和「で、(ピラミッドの頂点を指しながら)さんまさんからが、もう一切抜けないじゃないですか、お笑いのこのピラミッドがあって」
竹山「ふふふっ、まあね」
大和「で、テレビの人たちが『さんまさん、変わってくださいよ~』って言ってるじゃないですか、この状況が今、僕らのとこまで詰まってきてるんですよ
竹山「ほぉ」
森田「僕らが若手に、『早く抜けてください』って言われてるんですよ」
大和「もうギチギチのピラミッドがあるから」
(スタジオ笑)
竹山「もういっぱい詰まっちゃってるんだ、このピラミッド」

竹山さんは、この状況を「若手芸人の高齢化」と呼んでいます。

2010年に笑い飯の優勝で幕を閉じた「M-1グランプリ」。この大会の参加資格は、結成10年目まで。そこには、「10年やって準決勝に残れないようだったら才能ないから辞めなさい」というメッセージが込められていました。
今ある大きな賞レース「THE MANZAI」や「キングオブコント」には、その制限がありません。しかしです。そのおかげで、Hi-Hiやバイきんぐが世に出てこれたわけです。
竹山さんの言葉を借りるなら「若手芸人の高齢化」というお笑い界の現状に、「参加資格は結成10年目まで」はあまりにも厳しすぎる条件になってしまったのかもしれません。若手芸人がネタをやって今の実力を計る場さえ持てない。場数を踏まずに大きな賞レースで結果を求めるのは酷です。

そこで、この状況をなんとかすべく立ち上がった男がいます。千原ジュニアです。

「ヨシモト∞(無限大)ホール」には若手芸人が930組いる

2013年5月19日放送の「にけつッ!!」。

千原ジュニアとケンドーコバヤシの2人でトークする深夜番組で、渋谷にある「ヨシモト∞(無限大)ホール」で収録しています。
ボツにしたコントの話の流れから、

ジュニア「今度コントライブやるんですよ」
ケンコバ「え?」
ジュニア「コントライブっていうか、あの~」
ケンコバ「千原兄弟のですか?」
ジュニア「いやいや、俺ね、あの~、聞いてたら」
ケンコバ「はい」
ジュニア「ここ∞ホールって、若手が30組ぐらい、(ピラミッドの)上のほうの30組ぐらいの子らが」
ケンコバ「うん」
ジュニア「そこでこう、いろいろ人気投票とか、ネタのウケ具合とかで、いろいろ入れ替えがあってみたいな、30組ぐらいでやってるんですって」
ケンコバ「あ~、若手の劇場ってのはね、常にね」
ジュニア「ほいで、その30組の下に、ピラミッドの、900組いるっていう・・・」
(客席から驚きの声)
ケンコバ「え!?900組も、その、正規じゃないヤツが」
ジュニア「そうそうそう、ちゃんと(ネタ)できてるのは(ピラミッド上部の)この30組やねんて、その下に900組いるっていうねん、若手がね
ケンコバ「まあ、この30組も食えるような状態じゃないでしょうね、言うたら」

よしもとに限って見てもこの状況。

ジュニア「で!なんか分からんけど、この930組は、この∞ホールでしかネタやったらアカンみたいな」
ケンコバ「え~」
ジュニア「なんかルールがあんねんて、いや、かわいそうすぎるやん!900組」
ケンコバ「はい」
ジュニア「俺らの頃って、まあ遅い早いはあるけど、ホンマに面白い人は絶対どうにかこうにか世に出れたやん」
ケンコバ「世に出れましたね」
ジュニア「900組もいたら、誰にも目に付かへんねんやから、ホンマに面白い芸人さんも、出てこられへんやん」
ケンコバ「あの~、『アイツええやん』て言うてくれる人の目に触れるチャンスが極端に減ってますよね」
ジュニア「この30組しかないねんやから」
ケンコバ「うん」

これでは若手芸人がかわいそうだ、と訴えるジュニアさん。

ジュニア「ほな、まあちょっとでも、出るとこあったほうがええかな~思って、『じゃあ俺、ライブやるわ』と」
ケンコバ「(ジュニアのほうを向いて)アニキ・・・」
(客席笑)
ジュニア「ほんで、15組ぐらい出て、あの~、『じゃあ、やり(な)』っていうのはアレやから、俺もネタ作ってやる、と」
ケンコバ「なんかやるわ、と」
ジュニア「そうなったら、あと14組、みんな出たい人出てやってええやん、神保町によしもとの劇場あるから」
ケンコバ「うん」
ジュニア「ちっちゃいとこで、『神保町花月でやるわ』つって、ほんで今度やるんですよ」
ケンコバ「へぇ~、いいですね」
ジュニア「うん、(客席)100人ぐらいのとこですから、まあそこで出て、言うても多少なんかこう、例えばこの番組をやってるスタッフが見に来てくれるかも分からへんし」
ケンコバ「うんうん」
ジュニア「いろんな他の番組の人が見に来てくれるかも分からん、ほんでその人なんかに『3組目に出てたアノ子、全然知らなかったけど面白いな』とか、ほなウチの前説でちょっと使おうかとか、今度ロケ番組があって、その子使おうかとか」
ケンコバ「うん」
ジュニア「なるかも分からへんから、っていうので(コントライブ)やろうか、ってなって」

こうして、5月25日に「神保町ジュニア寄席」開催。そのときの様子も「にけつッ!!」で話してくれました。

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「神保町ジュニア寄席」でネタをやって、まあまあスベった千原ジュニア

2013年7月7日放送の「にけつッ!!」。

「神保町ジュニア寄席」当日。昼に「ネプリーグ」の収録があったそうで、

ジュニア「その日ね、たまたま土曜日で、(ケンコバを指差し)昼間『ネプリーグ』一緒やった」
ケンコバ「一緒でしたね、はい」
ジュニア「ね、その『ネプリーグ』終わりに俺行った、『ジュニア寄席』」
ケンコバ「はい」
ジュニア「ほんなら、その話をみんな聞いてて、ネプチューンさんとか、コバとか、小藪とか」
ケンコバ「いましたね」

若手芸人のためにライブを立ち上げ、しかも司会だけでいいのにネタもやる。その姿に感動した「ネプリーグ」出演者らに激励の言葉をかけてもらって、スタジオを飛び出したジュニアさん。いざ本番。

ジュニア「ほんで行って、最後、トリの前にネタやって」
ケンコバ「はい」
ジュニア「・・・まあまあスベるという」
(客席笑)
ケンコバ「え!?」
(笑いが止まらないジュニア)
ケンコバ「(手を振りながら)俺ら見送りましたよ、フジテレビから」
ジュニア「あははははっ」

スベったのも含めて、とてつもなく格好いいです。

最近、東野幸治さんのインタビュー目当てで「EX大衆」を買いました。

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ここで、「上が詰まっている」状況について尋ねているのですが、東野さんの考えは非常に現実的で、私はちょっと驚きました。でも、そのあとに「白い悪魔は不敵な笑みを見せた」とあり、もしかしたら本心は別にあるのでは・・・と妄想しちゃったり。
このインタビューを読んだことが、改めて「上が詰まっている」状況を考えるきっかけでした。