笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

「煮詰まる」と「行き詰まる」、悩んでいるのはどっち?

だいぶ前に放送された「スクール革命」でのこと。
私が今でもハッキリと覚えていて、とても勉強になった場面があります。今回はこちらを紹介させて下さい。

「スクール革命」で正しい日本語講座

2010年1月24日放送の「スクール革命」。知って得する正しい日本語講座。

この日のゲスト先生は、木佐彩子(元フジテレビアナウンサー)、松本志のぶ(元日本テレビアナウンサー)。
「雪辱を晴らす」ではなく「雪辱を果たす」。「うる覚え」ではなく「うろ覚え」。「絆が深まる」ではなく「絆が強まる」。このように、間違って使いやすい日本語をクイズ形式で勉強していきます。
そして、「知らないと恥をかく!間違えやすい日本語2択クイズ」のコーナーで、次のような問題が出題されました。

Q、悩んでいるのはどっち? A 煮詰まる B 行き詰まる

正解だと思う札を生徒達が出します。

内村「お、これは、春日は『B』だと」
春日「そうですね、行き詰まるってほうが、もう先がない感じが・・・」
内村「あ〜、山田(Hey! Say! JUMPの山田涼介)は、これは『A』のほうだと」
山田「なんか、考えが煮詰まるとか・・・言いますよね」
内村「では、正解をお願いします!」

CMを挟んで、木佐先生が正解発表。

「煮詰まる」と「行き詰まる」は正反対の意味

木佐「正解は、『B』の行き詰まる、この2つの言葉は、実は正反対の意味を持つ言葉なんです
(生徒達から驚きの声)
木佐「はい、煮詰まるということは、議論や考えが出尽くして結論が出せる状態にあって、良い結果に到達したという前向きな意味があるんです」
山崎「あ〜」
木佐「一方の、行き詰まるは、物事が上手く進まなくてどうにもならない状態ということで、ま、すごくマイナスの意味とプラスの意味が」
内村「全然違うんですね、結論に達したが煮詰まる」
山崎「なんかね、どっちもそういう同じような意味だと思ってましたよね」
内村「ねえ、マイナスイメージあるけどね」
山崎「へぇ〜」

「煮詰まる」を「どうにもならない状態」という否定的な意味で、私はなんの疑いもなく使っていました。この解説はかなり衝撃を受けましたね。

で、この「煮詰まる」という表現に関してちょっと調べてみたら、文化庁の月刊広報誌「文化庁月報」、その中の「言葉のQ&A」で取り上げていました。これを読むと、なかなか興味深いことが分かったのです。

日本人の知らない日本語

日本人の知らない日本語

「煮詰まる」を否定的な意味で使っても間違いじゃない?

文化庁月報 平成24年1月号(No.520)。

問1 「煮詰まる」は,本来どのような意味で使うのでしょうか。
答 「煮詰まる」とは,本来,議論などが結論を出す段階になることを意味する言葉です。

とあって、「煮詰まる」はやっぱり肯定的な意味です。
では、辞書はどう書いているのでしょうか。

「広辞苑 第5版」(平成10年 岩波書店)


に-つま・る【煮詰る】
[1]煮えて水分がなくなる。
[2]転じて,議論や考えなどが出つくして結論を出す段階になる。「交渉が−・る」

「広辞苑 第5版」も、「煮詰まる」は肯定的な意味で使用するとあります。
しかしです。
次の「広辞苑 第6版」では、以下のように改訂されていました。

「広辞苑 第6版」(平成20年 岩波書店)


に-つま・る【煮詰る】
[1]煮えて水分がなくなる。
[2]議論や考えなどが出つくして結論を出す段階になる。「ようやく交渉が−・ってきた」
[3]転じて,議論や考えなどがこれ以上発展せず,行きづまる。「頭が−・ってアイデアが浮かばない」

なんと!「行き詰まる」、すなわち「どうにもならない状態」という否定的な意味が追加されているではありませんか。どうしてこうなった?
「文化庁月報 平成24年1月号(No.520)」を読み進めていくと、「煮詰まる」という言葉を、40代を境にして、それより若い世代は否定的な意味で、それよりも年配の世代では肯定的な意味で表現する傾向が強いんだそうです。これぞジェネレーションギャップ。
結論が出せる状態、どうにもならない状態、どちらも「煮詰まる」で表現できてしまうのはどうなんでしょうか?でも日本語は常に変化していくものですし・・・うーん、私なりにいろいろ考えていたら煮詰まりました。