笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

M-1グランプリ審査員席で南原清隆と松本人志が交わした会話

12月に入り、2010年も残すところあと1ヶ月を切りました。使い古されたフレーズですが、時が経つのが早いです。
そんなこんなで年の瀬になると、やっぱり「M-1グランプリ」が気になり始める時期です。今年のM-1は両国国技館で準決勝が行われ、その場で決勝進出者が発表されるそうです。これは本番の敗者復活発表を超えるようなドキドキ感がありそう。

M-1で思い出すと、その昔にナンチャンが決勝の審査員を務めたことがあります。ダウンタウンの松ちゃんの隣にナンチャンが座り、右から島田紳助、松本人志、南原清隆と並ぶ光景は、なんとなく誇らしい気持ちになりました。でも正直に言うと、M-1はみんなが注目する大会である為、審査員も審査されてしまう部分もあります。なので、「なんとか無難に終わってくれ!」と祈るような気持ちで当時、見ていたものでした。
M-1決勝の審査員の経験が3回あるナンチャン。その内の2006年に審査員を務めたときの様子をラジオで語っているので、今回はこちらを紹介させて下さい。審査員席で隣同士のナンチャンと松ちゃんが「どんな会話したんだろう?」と放送を見て、とても知りたかったのですが、その欲求も満たしてくれるものでした。

僕の「日本人の笑い」再発見 狂言でござる ボケとツッコミには600年の歴史があった

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2007年は海外旅行がしたいと語るウッチャン

2007年1月放送のTBSラジオ「ウンナンタイム」。

最初の挨拶。ウッチャン、2007年に自分の中で流行りそうなものとして「海外旅行」と回答。ドラマ「西遊記」で中国に、「内村さまぁ〜ず」でオーストラリアに行くこともあって、そんな風に考えていると言うウッチャン。それを聞き、飛行機大嫌いだったウッチャンの変貌っぷりに驚きを隠せないナンチャン。

南原「どうした?あの飛行機嫌いのウッチャンが、今まで海外のロケとかでスタッフがどんだけ苦労したか」
(スタジオ笑)
南原「お前を説得するのに、俺も相談されて、『もうそれは本人のアレですからね〜』つって、どんだけ苦労したか」
内村「え〜、行こうと思ってるんですよ」
南原「ホントですか?僕も海外行きますよ」
内村「あ〜、そうですか」
南原「2月にブエノスアイレスに」
内村「ブエノスアイレス?ブエノスアイレスってのはどこですか?」
南原「アルゼンチン、ふふっ」
内村「アルゼンチンですか、アルゼンチンはかなりの距離じゃないですか?」
南原「30時間」
内村「あ〜れ〜、まぁ〜、それは何をしに?」
南原「社交ダンス」
内村「社交ダンスですか、ほぁ〜、いいところがなんかあるんだよね、雑誌とかでさ〜、いいリゾートホテルのなんかね」
南原「どうした?ウッチャン」
内村「何が?」
南原「そんなことに感心なかったじゃん、お前の話題はDVDでいいんだよ」
(スタジオ笑)

ウッチャンの変わりようは結婚したからなんでしょうね、きっと。

M-1グランプリの審査員席でナンチャンに語りかける松ちゃん

南原「何?海外旅行って、お前らしくないんだよ〜!えっ、その鮮やかなグリーンの」
(作家のあんちゃん笑)
南原「目にまばゆい、鮮やかな・・・」
内村「エメラルドグリーンの」
南原「エメラルドグリーンのシャツ着て」
内村「ふっふっふっふっ」
南原「どうした〜」
内村「ちょっと、う〜ん、行こうかなと思ってるんですよ」
南原「松ちゃんも心配してたよ、『ウッチャン、本当に大丈夫なのかな?家庭』って
内村「ふふっ」
南原「『俺とウッチャンのタイプは家庭に向かない、って言ってたんだけどな〜』って
内村「あっはっはっはっ」
(あんちゃん笑)
内村「いや〜、もうね、仲良くやってますよ」
南原「そうなんだ〜」

ナンチャンと松ちゃんの会話の内容はやっぱりウッチャンのこと。この当時に心配していた松ちゃんも今は娘を持つ父親。なかなか感慨深いです。

ナンチャンが語るM-1グランプリの審査員の難しさ

ここでリスナーからの質問に。去年、つまり2006年にM-1の審査員をしていたナンチャンに「M-1の裏話なんかがあれば教えて下さい」という内容。

南原「あ〜、だからさっき言った、ね、内村を心配してたってことだよ」
内村「あ、松ちゃんが?はっはっはっはっ」
南原「そうそう」
内村「チュートリアルがね、優勝しましたよね〜」
南原「はいはい、いやっ、なんかね、なんだろう?やっぱ、難しいね、漫才ってね」
内村「うん」
南原「みんな上手いんだけど、上手いんだけどこう爆笑に、なかなか繋がんないな〜って審査員の人たちはみんな言ってたね」
内村「へぇ〜、まあでも、あの日は群を抜いてましたよね、チュートリアルが」
南原「抜いてた」
内村「はい」
南原「だから審査はね、最後はし易かったよ」
内村「あ〜、決勝のね、うん」
南原「あれ、審査の点数書くじゃないですか、最初に点数書いて、点数が高いとさ〜、困るんだよね」
内村「ふふっ」
南原「これから出てくる人達もあるから〜」
内村「あ〜」
南原「あれが難しいんだよね〜」
内村「う〜ん、でも大体、みんな似た感じでね」
南原「そうだね」

ここで理論語りたがりナンチャンの登場。

売れる芸人の法則を見切ったナンチャン

南原「分かった、俺、これからね、あの出てくる・・・、俺なりの法則があんのよ」
内村「うん」
南原「売れる、売れないの」
内村「あら、法則があるんですか?」
南原「ある・・・、(嬉しそうに)これ言っちゃったらな〜」
(あんちゃん笑)
内村「いや、言っちゃってくださいよ」
南原「これ言っちゃったら、ちょっと・・・、いや〜、これ言っちゃったら」
内村「お願いしますよ、先生、お願いします」
南原「若手の芸人、変わっちゃうもん」
(あんちゃん笑)
内村「いや、ふふっ、お願いしますよ」
南原「俺なりの審査の基準があるのよ」
内村「じゃあ、お願いします、なんすかね?」
南原「え〜」
内村「もったいぶらずに、先生!お願いしますよ〜」

ナンチャンが理論を語りだす前、こうしてもったいぶってウッチャンの興味を探ることがあります。もしウッチャンが興味を示さないと、すねてしまうナンチャンを何度か見てきました。^^;

ボケとツッコミどっちを見るか

ウッチャンも興味を示してたところで、ナンチャン大いに語る。

南原「まあ、漫才ってのはボケとツッコミがありますよね、あなたならどっち見ますか?」
内村「僕ですか?いや、やっぱ両方でしょう、コンビですから」
南原「まあまあ、両方は見ますけどね、はい」
内村「はい」
南原「売れる、売れないで見ると、どっち見ますか?」
内村「売れる、売れないですか?へっへっへっへっ、投げかけられましたけども〜」
南原「はい」
内村「やっぱり、2人とも面白いのが・・・、いいんじゃないのかな〜」
南原「あ〜、お前一生、(M-1グランプリの)審査員来ないね」
(あんちゃん爆笑)
内村「来ない?ダメっすか」
南原「違う」
内村「なんすかね〜」

いざナンチャンが語り始めると、なんかウッチャンあんまり興味なさそう。^^;

漫才のツッコミがザラッとしてるかが大事

南原「ボケとツッコミあるでしょ?」
内村「はい」
南原「僕はね、ツッコミを見てるんです」
内村「あ〜、やってるときに」
南原「特に」
内村「うん」
南原「ツッコミで、『あっ!これは売れるな』っていうのが、で、『あっ、これはちょっと来るな』っていうのがツッコミで分かります」
内村「ほほぉ〜、例えば?」
南原「南海キャンディーズの山ちゃん」
内村「あ、山ちゃんね」
南原「あと・・・、柴田」
内村「アンタッチャブルのね」
南原「アンタッチャブルの柴田」
内村「あ、確かに上手いですね」
南原「上手いっていうかね、普通のツッコミじゃないのよ、ちょっとこうアレンジしたツッコミとか・・・、くりぃむしちゅーの上田もそうだったけど」
内村「あ〜」
南原「売れ出したときのツッコミってね、なんか、もうひと工夫してあんのよ、ただのツッコミじゃなくて、ちょっと乗っけているとか、言葉の使い方が上手い」
内村「あ〜」
南原「チュートリアルにもちょっとあったのよ、『あっ』、『あれっ』ってのが、言葉のアラ?」
内村「ほぉ〜」
南原「ちょっとこう、ザラっとしてる感があるという」
内村「うんうん」
南原「そこ!あっ、言っちゃった、言っちゃったよ〜」
(あんちゃん笑)

言い切ったナンチャン。気持ち良さそう。

もしもウッチャンナンチャンが漫才をしたら

内村「うちらみたいなスイッチ型はどうなんですかね?ネタによってスイッチするじゃないですか、うちらって」
南原「うんうん、あのね、そこまで漫才突き詰めてない」
内村「あっはっはっはっはっ、うちら漫才がな〜、やってないからね〜」
南原「漫才って結局ほら、あの〜、コントと違うのは、コントは演じるけど、漫才はやっぱ素を・・・、まあ素も演じるんだけど、素でいくじゃない?」
内村「う〜ん、そうだね」
南原「そう、だからその素のところに、どんだけツッコミがこう、ザラっとしていくか」
内村「うん」
南原「ここなんだよね」

「ザラっとしたツッコミ」というフレーズが気に入ったナンチャン。

内村「おいら達が漫才やる場合は、どっちが、ツッコミなのかね・・・」
南原「いや、基本は俺がボケで、お前がツッコミだと思うよ」
内村「あ〜」
南原「もうこれは人間的な見た目とか、人が見てる安心感でそうなる、ふふっ」
(あんちゃん笑)
内村「ということは、この、私のツッコミの腕にかかってるわけだこりゃ」
南原「そう!」
内村「漫才は、うわ〜、なるほど」
南原「そう!内村がどんな・・・」
内村「ふっふっふっふっ」
南原「ちょっと言葉巧みにとか〜、ちょっとこう、ザラッといかせるかによって」

見た目や安心感から判断して、ウッチャンがツッコミだと素直に認めちゃうナンチャン。

なんだかんだ言ってもツッコミは間

内村「わりに俺、1本調子なんだよな〜、ふっふっふっ、叫ぶ、みたいな感じのね」
南原「いや、ツッコミはもう、一番大事なのは間(ま)だからね」
内村「うん」
南原「もうどんな言葉より、間がポンッと入ったときがこれ、一番いいんだけど」
内村「そうだ、タカアンドトシもそうだもんね、『欧米かっ!』」
南原「でしょ、それはツッコミのほうに来てるでしょ」
内村「なるほど」
南原「そこなんだよ、若手見るときの」
内村「ふふっ、若手見るとき」
南原「言っちゃったよ、もう〜」
内村「言っちゃった」

漫才について語り合う2人。
ウッチャンも途中から興味を持ち直したようで、盛り上がった会話となりました。今年の「M-1グランプリ」もいろんなドラマが生まれることでしょう。使い古されたフレーズですが、お笑い芸人の数だけドラマがある、それが「M-1グランプリ」。