笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

オリエンタルラジオ藤森慎吾にとっての居場所は中田敦彦

深夜に放送された「品川祐×土田晃之ツレ連れてきました。」を見ました。

2人ともひな壇芸人のみならず様々な番組でオールラウンドに活躍中ですが、MCも全然イケるし、安定感が違いますね。この番組じゃなくても、なんかしらの形で2人のトーク番組がレギュラー化されることを願わずにはいられません。

今回はこの番組で、オリエンタルラジオ藤森慎吾が「大学時代のサークルのツレ」を連れて来たときのトークをご紹介させて下さい。とても印象に残ったので。

オリエンタルラジオ藤森慎吾は大学デビュー

2010年6月11日放送「品川祐×土田晃之ツレ連れてきました」(フジテレビ)

司会は品川祐、土田晃之。
ゲストはオリエンタルラジオ藤森慎吾。

ちょっとしたドッキリがあってからトークが進行していき、今では想像できないオリラジ藤森さんの過去が、ツレによって暴かれていきます。

土田「さっきの井口君(品川のツレ)とかは分かる世界の話だからね、盛り上がったけど」
品川「そうですね」
土田「サークルとか経験がない……」
品川「ないですよ~」
土田「大学の、キャンパスライフとか知らない」
藤森「ちなみに僕らがやってたのは、テニスサークル」
ツレ「そうです」
品川「うわぁ、遠い」
藤森「あんまりまあご存じないかなとは思うんですけど」
品川「遠いし、そんなに聞きたくない」
(スタジオ笑)
藤森「聞けよ、聞け、聞け」

ツレとは一番仲が良くて、しっかり者。サークルの後輩からも慕われて、自分も慕っていた。そう藤森さんがツレとの関係について説明したあとに、トークテーマの発表へ。

品川「最初のテーマはこちらです、『藤森は大学デビュー』」
藤森「ほぉ……」
土田「藤森君、どうしたんですか?」
品川「どうしたんですか?」
藤森「これ何ですかね?」
(不意を突かれた表情で周りを見渡す藤森)
品川「誰と打ち合わせしたんですか?」
藤森「打ち合わせというか、なんか、大学時代の思い出を……」
品川「いや、それがですね、この番組のスタッフが藤森君の話を聞いたところ」
藤森「はい……」
品川「どうもこの、薄っぺらい、つまらないエピソードが多かったと」
(スタジオ笑)
藤森「マジか!? えっ! どういう……結構2時間ぐらいたっぷりしゃべって、『あ、それ面白いですね』、『これ面白いですね、じゃあそういう合宿の話をして下さい』とか」
品川「聞くところによると、ジュン君(藤森のツレ)のエピソードのほうが面白いということで、それベースで話を進めていきたいと」
(固まる藤森)
土田「だから、藤森さんの本当の姿をね、学生時代の」
藤森「(状況がまだ理解できていないような表情で)はあ」

打ち合わせとは全く違う内容で戸惑いを隠せないまま、番組は進行していきます。

大学入学時は典型的なダサメンだった

品川「藤森君はどんな感じ?」
ツレ「いや、今でこそ、やれチャラいとか言われてますけど」
品川「まあ、コンパキャラとかね」
ツレ「そうですね」
品川「ちょっとなんだったら、本人的にはイケてる雰囲気出してますけど」
藤森「ははははっ」
ツレ「入学当時、彼に初めて会ったときには、典型的なダサメンだなと」
(スタジオ笑)
土田「もう、ダサメンで」
ツレ「なんかちょっとカラーコンタクトとか」
土田「えっ! カラコン入れてたの?」
(ツレをもう言うなという感じで叩く藤森)
品川「え、何色のカラコンを?」
ツレ「いや、黄色っぽかった」
藤森「あはははっ!」
品川「うわ~!」

ツレの告白を受けて、藤森さんの弁解タイム開始。

藤森「いやいや、なんて言うんですかね~、その、僕長野出身だったんで」
土田「あ~、長野ね」
藤森「ホント東京にすごい憧れがあって、当時、『men's egg(メンズエッグ)』っていう雑誌があったんですけど……」
土田「はい、チャラいね」
藤森「それを僕、長野で毎月購読してたんですよ、すごいギャル男に憧れてたんですよ、それでまあ、東京に来て、そういうファッション……」
土田「その長野ではできなかったけど、東京に出る、このいい機会だから、カラコン入れちゃえ、みたいな」
藤森「カラコン入れて……」
土田「髪の毛とかはどうだったの?」
ツレ「髪の毛も中途半端な茶髪」
(スタジオ笑)
藤森「(苦笑しながら)言い方悪いわ」

するとここで高校の卒業アルバムが登場。ものすごいパーマをあてた藤森さんのドアップの写真が映し出されます。

土田「えっ! これ、高3?」
藤森「(動揺を隠せず)これは多分……卒業アルバム……かな? はい、長野にいた頃の」
土田「これは、美容院になんて言って切ってもらったのか」
品川「すごいね~」
藤森「いや、これもでも一応、パーマをかけていただいてたんですよ」
品川「小泉首相?」
(スタジオ笑)
藤森「小泉……元首相じゃないです」
土田「でもあれよ、本物じゃないよ、ザ・ニュースペーパーがやるほうの小泉首相」
(スタジオ笑)

続いて、サークル時代の写真が次々紹介されていき、一通り見たあと、土田さんがボソッとつぶやきます。

土田「大学のサークルってこういう感じなんだ、俺絶対みんなと仲良くできないもん……」

「高校まで彼女はいなかったのか?」と品川さんに聞かれて、「中学3年生のときに彼女がいた」と答えるも、ツレにウソだと即座にバラされる。なぜウソをついたかを問い詰められると「なめられたくなかった」と弁明。徐々にコーナーポストへ追い込まれていく藤森さん。

そして話題は、大学のサークル時代へ。

サークルの飲み会でよく泣いていた

品川「そして当時の藤森君、サークルの打ち上げでよく泣いてたって」
ツレ「そうですね」
藤森「あ~、はいはい」
品川「泣いてたんですか?」
藤森「ホントにだから、結構チャラく見えるんですけど、実際上下関係に結構アツくて、先輩が最後引退する前にいい話をね、してくれて、それ聞いて感動して」
品川「それに感動して泣くと、いいとこあるじゃないですか」
ツレ「まあそれは一般的な話なんですけど」
品川「はい」
ツレ「彼の場合、飲み会で存在感を発揮できなくて、そういう意味で泣いちゃう
(スタジオ笑)
品川「藤森君?」
藤森「(ツレに向かって)お前帰れ、もう!」
品川「藤森君、だいぶ違いますよ、話が」
藤森「いやいや、そんなことないです! 俺、先輩の話聞いて感動して泣いてましたって」
品川「それはどうなんですか? ジュン君」
ツレ「大体、飲み会の途中で帰っちゃうんですよね、諦めて」
品川「えっ、飲み会で目立つことができずに、悔し泣きして、途中で帰る」
ツレ「そうですね、ふふっ」
品川「どうなんですか? 藤森君」
藤森「……その通りです」

大学のサークル時代に披露していたネタVTRが流されたり(なぜか関西弁をしゃべってる藤森さん)、キムタクドラマを見た影響で、キムタクの格好、バイク、髪型、全てそのまんま真似て女の子の気を引こうとしてたり、サークルに入ってすぐに5、6人の子に告白して振られたり、と数々のエピソードが披露されていき、コーナーポストでパンチの連打を浴び続ける藤森さん。

藤森「まあ、ホントにモテなかったんですね、結局行ったら僕ひとり浮いちゃってたんで」
品川「そりゃそうだろう」
藤森「で、片っ端から告白したけども、なかなかこう、誰も相手にしてもらえなかったっていう……あの~、でもサークル時代のいい話とかもあるでしょ?(ツレを見る藤森)もっとこう」
品川「藤森君……」
藤森「はい」
品川「そういうのは別に聞きたくない」
(スタジオ笑)
藤森「俺そういうのばっか言ったから、使われなかったのかな~?」

もうダウン寸前の藤森さんに、さらにでっかいパンチが襲ってきます。

ダンサーになると宣言して大学のサークルを辞めた

品川「続いてのテーマ参ります」
藤森「まだあります? なんですか」
品川「『藤森はダンサーになるつもりだった』」
(笑いながらうな垂れる藤森)
土田「え~! ダンサー?」
藤森「すごいな~、これ、どこまで……」
ツレ「サークルを辞めるときなんですけども、ある時期から来なくなってしまって、それでこう、本人から直接ではなかったんですけど、まあ風の噂で『あいつはダンサーになる』ってほざいてたと」
(正座状態でうつむきながら聞く藤森)
品川「ほぉ、ダンサーになろうとしてたの?」
藤森「まあ、一応辞めるとき、そういう風には言いました、『ダンスやるから』って言って……」
品川「えっ? ダンスは実際にやったの?」
藤森「ダンスはやってないです」
(スタジオ笑)
品川「なにそれ?」
土田「だから辞める理由として、ダンサーが格好良かったと」
藤森「あはははっ」
品川「その響きだけで?」

グロッキー状態の藤森さんが、最後の力を振り絞って弁解します。

大学のサークルに俺の居場所は無い

藤森「ホントに辞める理由として、『あいつダンサーになったんだな』っていうのがすごい後々、格好良いんじゃねえかっていうのと……あとホントにもうサークルで……」
土田「うん」
藤森「2年いたんですけど、まあさっきみたいなこともあったりとか、飲み会で何やっても誰も相手してくれないし、ウケないし、俺、イヤになっちゃったんですよ、俺、サークル、イヤになっちゃったんですよ! なんか……家でこう(頭を下に向けて)考え込むぐらいまで落ち込んじゃって」
土田「うんうん、そうだよね、夢と希望を持って長野から出てきて、東京で俺は変わるぞ! と思って出てきたけどあまり変われなかった
藤森「変われなくて、で、居場所ねえな~と思って、で、辞めて……理由なんかなんでもよかったんですよ
土田「うん」
藤森「でも、『ダンサーになる』つったら、まだ箔がつくかなって」
(スタジオ笑)
藤森「『あ~、アイツ、ダンサーになるらしいよ』って」

しかしここで何かを諦めたように、藤森さんが大学のサークルを辞めた本当の理由を打ち明けます。

中田敦彦と一緒にいたら面白くなれる

藤森「(ここまでの話は)ウソです、それはホントはダンサーになろうっていうんじゃなしに、もう正直に言うと、そんときにちょうどバイト先で、今の相方、あっちゃん(中田敦彦)に」
品川「おおっ」
藤森「あっちゃん(慶応大学出身)は大学違ったんで、めちゃくちゃ面白いヤツいるな~と」
土田「うん」
藤森「で、これひょっとしたら……この人の近くにいたら……」
品川「面白くなれるかもしれない?」
藤森「面白くなれるし、なんか……ホント言ったらお笑い的なこともできて」
土田「人気が出たりとかね、キャーキャー言われたり」
品川「じゃあ、そう『お笑い』って言えばいいじゃん」
藤森「いや、それは言えなかったです、恥ずかしくて、だって」
土田「(お笑いやることが)恥ずかしくて? お前ブッとばすぞ!」
(スタジオ笑)
藤森「そういう意味じゃなくて!」

ここから藤森さんの魂の叫びへ。

藤森「皆さんはね、やっぱ昔から面白いとか、学校のなかでもね、アイツはもう将来お笑い芸人になるだろうと言われて、なってきた人だと思うんすけど、俺、全く逆だったんで、だって別に笑い取ったこともないし……(我に返って)俺大丈夫かな? 今後の仕事に支障きたさないかね?」
土田「お前今日、カミングアウトするな~!」
藤森「そいつがね、面白くないから相方、あっちゃんと一緒にいたら面白くなれるかもと思って、そんなこと言えます? 同級生に! 俺面白くなりたいからアイツと一緒になるって言えます? そんなの言えないよ! 俺は! 言えない!
(スタジオ笑)
品川「すげ~、編集でどうなってるかわかんないけど、お前もう、15分ぐらい正座してる」
(スタジオ笑)
藤森「いや~、もう解けないっすよね、この正座は」
品川「そうなんだ、お前そんなコンプレックス抱えてたんだ」
土田「辞めるときの理由で『ダンサー』ってウソつく、理由が相手にされなくて居場所がないって言ったのよ、『居場所がない』なんて言葉、深夜にやってるFNSドキュメントでしか見ないもん」
(スタジオ笑)
藤森「あはははっ」
土田「ね、居場所がない若者たちとかって、夜中にやってんじゃん」

相方に対してそんな思いを抱いていたとは。藤森さんの泣けるような告白でした。こういうコンビの関係性を見させられると、自然と応援したくなっちゃいます。

オリエンタルラジオは、「ヨシモト∞」という配信番組やってた頃によく見ていました。忙しさのせいなのか、舞台でも時々狂ったようにキレて暴れるあっちゃんを、いつも笑顔で受け止めていた慎吾さん。舞台の上でお客さんの手前ってこともあるでしょうが、この告白を聞き、また別の理由を見つけたような気がします。

いきなり自分たちではどうすることもできない流れに巻き込まれても、浮かれたりおごることなく頑張っている、それが「ヨシモト∞」でオリエンタルラジオを見ての印象です。

ちょうどこの時期、彼らは「M-1グランプリ」に再びエントリーします。それに向けて「ヨシモト∞」でのトーク後、お客さんの前でネタを毎週披露していたのです。泥臭いことを当たり前のようにやる。そんなオリラジがメインストリームから去っていく姿が想像できません。これからも追いかけて行きたい芸人です。

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