笑いの飛距離

元・お笑い芸人のちょっとヒヒ話

岡村隆史「お笑い芸人が100パーセント幸せではならない」

ちょっと前の「ザ・イロモネア」を見ました。スピードワゴン井戸田さんが大活躍していました。

安達祐実との離婚ネタで笑いを取っていくスピードワゴン井戸田

2009年2月14日放送「ザ・イロモネア」(TBS)

司会はウッチャンナンチャン(内村光良・南原清隆)。
挑戦者はスピードワゴン井戸田潤。

この日、ピンモネアに挑戦していたスピードワゴン井戸田さん。安達祐実さんとの離婚を活かしたネタでガンガン笑いを取って、各ステージをクリアしていくのです。すがすがしいほどの振り切れっぷり。

ウッチャンは「身削ってるね~」と感心し、ナンチャンは「バックボーンが見える」と賞賛。バナナマン設楽さんは「お客さんが同情するから」と笑いの構造を解説。自分の不幸をネタにしたときの力強さを改めて思い知らされました。

この井戸田さんの爆発ぶりで思い出したのが、ナインティナイン岡村さんの芸人論でした。

安達祐実写真集「続・私生活」

安達祐実写真集「続・私生活」

不幸や悲しみを背負っているからこそ笑いを提供できる

2004年12月30日放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)

パーソナリティはナインティナイン(岡村隆史・矢部浩之)。
ゲストは出川哲朗。

岡村さんが時々言っている、お笑い芸人はこうあるべき論。

岡村「ただ、これはもう僕のデータですよ、岡村調べですけども」
矢部「岡村調べ?」
岡村「岡村調べですけども、お笑い芸人っていうのは幸せ……100パーセント幸せやっていう人は、あの~、他の人に対して幸せを贈ることはできないっていうのが、僕の持論なんです」
矢部「持論、岡村論や」
岡村「はい、なんかしら不幸を背負ってたり、悲しみを背負ってることによって、その悲しみや苦しみを知っているからこそ、そういう人に対して笑いを提供できるし
矢部「ふはははっ」
岡村「例えば、学校でイジめられていると」
矢部「うん」
岡村「ね、そういう人が、学校では笑われへんけど、家帰って来てテレビ付けたときに、笑ってくれるとか」
矢部「お笑い番組とか」
岡村「あっ、そんな、そんな素敵な番組作り」
矢部「あはははっ」
岡村「僕は考えているんですよ」

ここで出川さんに意見を求める矢部さん。

矢部「出川さん」
出川「いや、そりゃ分かるよ」
矢部「分かる?」
出川「うん、そりゃ分かるけどね、やっぱね、あの~、俺は基本的に守るモノができたほうが、『火事場のソコ力』が出ると思う
岡村「『火事場のソコ力』?」
出川「うん」
岡村「『火事場のクソ力』でしょ?」
出川「クソ力でもなんでもいいんだけど」
岡村「ぶはははっ!」
出川「それが、それ出ると思う」
矢部「うん」
岡村「守るモノがあったほうが?」
出川「そう、本当はないほうが強いんだけどね」
岡村「なんやねん!それ!」
(スタジオ爆笑)
出川「ただ、ただそう言えないんだよね~」
矢部「オチた」
出川「本当はないほうがアレなんだけど」

このやりとりを何度も私は聞いているんですが、聞くたびに納得してしまっています。

今回の「ザ・イロモネア」での井戸田さんの活躍を見て、その気持ちがより強化されました。離婚とかそういった出来事を笑いに変換できるのが、お笑い芸人の強みでもあり、背負わされる役割でもあるのでしょう。